はじめに

干し芋は、さつまいもを蒸して、切って、干すだけで作れる素朴なおやつです。

農林水産省も、工程がシンプルなことから、干し芋はいまでも家庭で作られていると紹介しています。

一方で、干し芋は乾かした後も水分が残る食品で、作る時期や干す場所によってはカビが生えることがあります。

本記事では、家庭で作る干し芋の作り方を、蒸す・切る・干すの工程ごとに、わかりやすくご説明したいと思います。

手順に加えて、蒸すと甘くなる理由、カビを防ぐための衛生と保存の注意、オーブンや食品乾燥機を使う場合の注意もまとめました。

時間や日数の目安は、農林水産省、日本いも類研究会、産地である茨城県などの資料をもとにしています。

干し芋の作り方の全体像|蒸す・切る・干すの3工程

干し芋(蒸切干)は、蒸したさつまいもの皮をむいて切り、天日などで乾燥させて作る食品です。

農林水産省は、茨城県の干し芋について、砂糖や添加物を使わずに作られると説明しています(にっぽん伝統食図鑑)。

家庭での干し芋の作り方も、工程は「蒸す」「皮をむいて切る」「干す」の3つです。

まずは全体の流れと時間の目安、作るのに向く時期をご紹介します。

手順と時間の目安

干し芋の作り方の流れと、資料に示されている目安は次のとおりです。

工程 やること 目安 出典
1. 蒸す 皮付きのまま丸ごと蒸し、手の感触や串で確かめる 全体で1〜1.5時間程度/(多段式のセイロで)60〜80分加熱し、15分ほど蒸す 茨城県農業総合センター園芸研究所/日本いも類研究会
2. 皮をむく 熱いうちに、厚めにむく — 農林水産省
3. 切る 縦に切る 厚さ1cm/0.5〜1cm 農林水産省/日本いも類研究会
4. 干す(平干し) 重ならないように並べ、天日に干す 1週間/7〜10日 農林水産省/日本いも類研究会
4. 干す(丸干し) 小さい芋を切らずに干す 14日程度 茨城県農業総合センター園芸研究所

時間や日数は、芋の大きさや量、天気、干し方によって変わります。

蒸し上がりは串や手の感触で確かめ、干し上がりは日数を目安に好みの硬さで判断します(詳しくは各工程の章でご説明します)。

作る時期は、気温の高くない11月下旬〜3月ごろ

干し芋は、寒い時期に作るのが基本です。

産地の衛生管理の手引書は、干し芋は気温の高くない11月下旬から3月ごろに主に作られるとしています(ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会)。

日本いも類研究会も、時期が早いと暖かくてカビが生えるので「注意が必要のようです」としています。

同会は、干し芋は蒸したさつまいもを冬の木枯らしで乾かすだけなので、一般家庭でも難しいものではないと説明しています。

干しやすい気温や湿度を数値で示した公的な資料は、当サイトでは確認できていません。

そのため本記事では、気温の数値は挙げていません。

暖かい日が続く時期や、雨や雪が続きそうな時期は避け、晴れて空気の乾いた日が続くころを選ぶとよいでしょう。

用意するもの

家庭で干し芋を作るときに用意するものは、次のとおりです。

  • さつまいも(選び方は次の章でご説明します)
  • 蒸し器またはせいろ
  • 包丁(農林水産省のレシピでは、ピアノ線や釣り糸〔絹糸でも可〕で切る方法も紹介されています)
  • ざるや干し網(芋が重ならずに並べられ、下からも風が通るもの)
  • 竹べらなど(熱い芋の皮をむくため)
  • 清潔な手袋(皮をむいた芋に触れるときと、芋を並べるときのため)
  • 鳥や虫、ほこりを防ぐ網やネット(屋外で干す場合)

さつまいもの選び方と下準備|品種と「寝かせた芋」を使う理由

干し芋の甘さや食感は、作り方だけでなく、材料にするさつまいもの状態にも左右されます。

産地では、品種を選び、貯蔵して甘みがのった芋を使っています。

ここでは、家庭で作るときの芋の選び方と、蒸す前の下準備をご説明します。

品種は好みで選べる。産地ではべにはるかなどを使う

干し芋は、特定の品種でなければ作れないわけではありません。

神奈川県農業技術センターも、家庭用として作るなら品種にこだわらず、手近にあるさつまいもを使えばよいとしています。

茨城県の資料では、干し芋に加工される品種として、「べにはるか」をはじめ、「ふくむらさき」「ほしあかね」などが挙げられています(茨城県農業総合センター園芸研究所、2023年)。

「ほしあかね」は、農研機構が干し芋(蒸切干)の加工用に育成した品種で、同じく加工用の品種に「ほしキラリ」「ほしこがね」もあります。

このうち「ほしキラリ」と「ほしこがね」は、後でご説明する「シロタ」がほとんど発生しないとされています(農研機構)。

「ほしあかね」も、茨城県の試験でシロタの発生は「微」でした(茨城県農業総合センター農業研究所)。

ねっとり、ホクホクといった食感の分け方は資料によって違い、同じ品種でも貯蔵の期間や加熱の仕方で変わります。

家庭では、手に入る芋の中から、好みの食感の品種を選んでみてはいかがでしょうか。

掘りたてより、貯蔵して甘みがのった芋が向く

茨城県は、干し芋に加工する前に、芋を貯蔵して糖化(でんぷんの一部が糖に変わること)を進めることが大切だとしています。

軒下やビニルハウスでの簡易な貯蔵では、40日以上を目安としています(品種によって異なります)。

さらに、加工の前に糖度計でBrix糖度(糖の濃さの目安)を測り、「べにはるか」で14度以上、「タマユタカ」で12.5度以上になったことを確かめてから加工するとよいとしています(茨城県農業総合センター園芸研究所、2023年)。

家庭菜園で掘ったばかりの芋も、すぐに干し芋にせず、しばらく置いてから使うのが、産地の考え方に沿った使い方です。

ただし、産地の簡易な貯蔵は軒下やビニルハウスで行うもので、家庭での保存とは温度の条件が違います。

家庭で保存した芋が、どのくらいの期間で産地と同じように甘みがのるかを示した資料は、当サイトでは確認できていません。

家庭で保存するときは、切っていない生のさつまいもを、13〜15℃を目標に(日本いも類研究会、JAなめがた甘藷部会連絡会)、少なくとも10℃を下回らない場所に置きます(JAなめがた甘藷部会連絡会は「10℃以下の低温にならないように」としています)。

生のさつまいもにとって、冷蔵庫は温度が低すぎるため、保存場所には向きません(できあがった干し芋の保存は、後の章でご説明します)。

茨城県の試験でも、「べにはるか」と「ほしこがね」では、原料の芋が10℃を下回る低温にさらされると、干し芋が黒く変色する可能性があるとしています(茨城県農業総合センター園芸研究所・農業研究所、平成25年度)。

生のさつまいもの保存方法は、さつまいもの保存方法を解説した記事でご説明しています。

よく洗い、アク抜きは必須ではない

皮付きのまま蒸すので、芋は表面の土をよく洗い落としてから使います。

産地の衛生管理の手引書は、畑に由来する微生物を減らし、小石などが混ざるのを防ぐため、十分に洗うとしています。

当サイトで確認した公的な資料のレシピには、蒸す前に芋を水に浸けてアクを抜く工程はありません。

農林水産省のレシピは、蒸した後に皮を厚めにむき、上下も厚めに切って、アクのある部分を取り除くとしています。

手順1:皮付きのまま丸ごと蒸す|時間の目安と甘くなる理由

最初の工程は、さつまいもを皮付きのまま、丸ごと蒸すことです。

蒸しているあいだに、芋の中ではでんぷんの一部が糖に変わり、干し芋の甘さのもとができます。

ここでは、蒸す時間の目安と甘くなる理由、蒸す代わりにほかの方法で加熱するときの注意をご説明します。

1時間前後を目安に、串や手の感触で確かめる

蒸し器に湯を沸かし、洗った芋を皮付きのまま並べて蒸します。

蒸す時間の目安は、資料によって次のように示されています。

  • 茨城県農業総合センター園芸研究所: 全体で1〜1.5時間程度(産地向けの資料)
  • 日本いも類研究会: 本格的には多段式のセイロを使い、「60~80分加熱し、15分ほど蒸す」としています
  • 神奈川県農業技術センター(家庭向けのレシピ): 30分くらい

資料ごとに、想定している芋の量や蒸し器、蒸し方のねらいが違います。

茨城県の時間は、後でご説明する酵素が働く温度帯を長く保つよう、ゆっくり温度を上げて蒸すことを前提にしています。

蒸し上がりは、芋を持ったときの軟らかさや、串がスッと通るかどうかで確かめます(茨城県農業総合センター園芸研究所)。

神奈川県農業技術センターは、約30分蒸すと「ペトッとした感じ」に蒸し上がるとしています。

茨城県や日本いも類研究会の時間は、当サイトの蒸し方の記事でご紹介したふかし芋のレシピ(蒸し器で丸ごと20〜40分前後)より長めです。

芋が大きい場合や、蒸し器の火が弱い場合は、さらに時間がかかることがあります。

長く蒸すときは、途中で湯の量を確かめ、空焚きにならないよう湯を足してください。

蒸し器の使い方や、ふかし芋の蒸し時間の目安は、さつまいもの蒸し方・ふかし方を解説した記事でご紹介しています。

蒸すと甘くなるのは、酵素がでんぷんを麦芽糖に変えるから

さつまいもが加熱で甘くなるのは、芋に含まれるβ-アミラーゼという酵素が、でんぷんを麦芽糖(マルトース)に分解するためです(日本いも類研究会)。

この酵素は生のでんぷんを分解できず、加熱で糊化(こか:でんぷんが熱と水で柔らかく変化すること)したでんぷんに働きます(日本いも類研究会)。

でんぷんが糊化し始める温度は、概ね65〜75℃とされています(日本いも類研究会)。

一方で、β-アミラーゼは熱に弱く、50℃より高くなるにつれて働きが落ち、75〜80℃に達するとほとんど働かなくなると説明されています(いも類振興情報136号、中村、2018年)。

そのため、一般的な品種では、芋の中が70〜75℃前後の温度帯を長く通るほど、麦芽糖が作られやすいとされています(同)。

この温度帯は、品種や条件によって違います。

茨城県は、干し芋の蒸す工程について、「βアミラーゼの働きが高くなる60~75℃付近の温度帯」をできるだけ長く保つように、ゆっくり温度を上げるとよいとしています(茨城県農業総合センター園芸研究所、2023年)。

資料によって温度の示し方は少し違いますが、どちらも、急いで高い温度にせず、酵素が働ける温度帯を長く通すという考え方です。

さつまいもが甘くなる温度と、器具ごとの加熱のしかたは、家で焼き芋を作る方法と甘くなる温度を解説した記事でご説明しています。

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、可食部100gあたりの麦芽糖は、「さつまいも 蒸し切干」(干し芋)が24.4g、「さつまいも 塊根 皮なし 蒸し」が9.2gです。

干し芋は水分が22.2gで、蒸した芋(65.6g)より水分が少ないため、同じ100gで比べると糖の割合が高くなります。

ただし、これは別々に分析された食品の値で、同じ芋を干したときに糖がどう変わるかを示したものではありません。

茹でる・電子レンジ・炊飯器で加熱するときの注意

干し芋のレシピには、蒸す代わりに、茹でたり、電子レンジや炊飯器で加熱したりする方法もあります。

当サイトで確認した公的な資料(農林水産省、日本いも類研究会、茨城県)は、いずれも蒸す方法を紹介しています。

蒸す以外の方法で加熱するときは、次の点に注意してください。

  • 茹でる: 皮付きのまま丸ごと、竹串がスッと通るまで加熱します。茹でた芋と蒸した芋で、干し芋の甘さを比べた資料は、当サイトでは確認できていません。
  • 電子レンジ: 芋の中の温度が速く上がるため、甘くなりにくいと考えられます。いも類振興情報136号は、芋の温度の上がり方が早すぎると麦芽糖(マルトース)が十分にできず、甘さが不足するとしています(中村、2018年)。焼いた芋と比べた研究は、電子レンジで焼き芋・ふかし芋を作る方法を解説した記事でご紹介しています。加熱しすぎると発煙・発火することもあります(国民生活センター)。
  • 炊飯器: 玄米モードなどで芋を加熱する方法は、機種によっては取扱説明書に記載のない使い方になります。炊飯器で加熱する場合は、「蒸し」や「調理」のメニューがある機種で、取扱説明書の手順に従ってください。

炊飯器のメニューの選び方と注意は、炊飯器でさつまいもを加熱する方法を解説した記事でご説明しています。

手順2:熱いうちに皮をむき、縦に1cm前後に切る

蒸し上がったら、熱いうちに皮をむき、縦に切ります。

この工程から干し始めるまでは、芋に手が触れる時間が長くなります。

やけどと衛生の両方に気をつけながら進めましょう。

皮は熱いうちに厚めにむく

皮は、芋が熱いうちにむきます(農林水産省、日本いも類研究会)。

農林水産省のレシピは、アクのある部分を取り除くため、皮を厚めにむき、上下も厚めに切るとしています。

熱い芋を扱うので、やけどに気をつけましょう。

日本いも類研究会は、熱いうちに竹べらなどで皮をむくとしています。

皮をむいた後の芋には、清潔な手袋をして触れるとよいでしょう。

産地の衛生管理の手引書は、皮をむいた後の芋が汚れると微生物が増えるおそれがあるとして、衛生的な手洗いと手袋で汚さないようにし、干す工程まで翌日に持ち越さないよう求めています。

家庭でも、皮をむいたら、その日のうちに切って干し始めましょう。

厚さは1cm前後、繊維に沿って縦に

皮をむいた芋は、縦に切ります。

厚さは、農林水産省のレシピが1cm、日本いも類研究会が0.5〜1cmとしています。

産地の資料では、ピアノ線を張った専用の器具で、縦に7.5〜9mmに切るとしています(『特産種苗』第6号、茨城県県央農林事務所)。

切るタイミングは、資料によって違います。

農林水産省は、芋が柔らかいうちに、繊維に沿ってピアノ線や釣り糸(絹糸でも可)で切るときれいに切れるとしています。

日本いも類研究会は、冷めてから縦に切るとしています。

茨城県の試験では、「べにはるか」や「ほしこがね」で、皮をむいた後に芋の中の温度を約30℃まで冷ましてから切ると、仕上がりの色が明るいものの割合が高くなったとしています(詳しくは「よくある質問」のQ5でご紹介します)。

小さな芋は、切らずに丸ごと干す「丸干し」にする方法もあります。

産地の資料では、150g以下の小さな芋を丸干しにするとしています(『特産種苗』第6号)。

神奈川県農業技術センターも、小さい芋や細い芋は、切らずに丸のまま、または縦半分に切るだけで丸干しにできるとしています。

茨城県の目安では、天日で干す日数は平干しが7日程度、丸干しが14日程度で、丸干しのほうが長くかかります(茨城県農業総合センター園芸研究所)。

手順3:干す|天日干し・室内・オーブン・食品乾燥機の方法と日数

切った芋は、重ならないように並べて干します。

産地では、雨よけのビニルハウスで天日乾燥する方法と、乾燥機で乾燥させる方法がとられています(茨城県農業総合センター園芸研究所)。

干し芋の作り方では、家庭でも、天気や環境によっては、オーブンや食品乾燥機を使う方法があります。

方法ごとの目安と注意は、次のとおりです。

方法 目安 主な注意
天日干し(平干し) 1週間前後(農林水産省1週間/日本いも類研究会7〜10日) 雨や雪に当てない。鳥・虫・ほこりを防ぐ
天日干し(丸干し) 14日程度(茨城県) 同上。平干しより長くかかる
室内で干す 天気や部屋の条件で変わる 暖かい部屋は避け、風通しのよい場所で
オーブン 例: 110℃に予熱し、50分〜1時間焼いて裏返し、さらに50分〜1時間(料理サイトのレシピ) シートの使用条件を確かめる。仕上がりは冷蔵して早めに
食品乾燥機 機種のレシピや取扱説明書に従う 機種や品種によって設定が大きく違う(例は本文)
電子レンジで乾燥 おすすめしない 発煙・発火のおそれ

天日干しは1週間前後。重ねずに並べ、途中で裏返す

ざるや干し網に芋が重ならないように並べ、日当たりと風通しのよい場所で干します。

農林水産省のレシピは1週間、日本いも類研究会は7〜10日としています。

芋がざるからはがれるようになったら裏返し、両面を干します(農林水産省)。

日本いも類研究会は、すだれやよしずに食用油を薄く塗ってから芋を並べる方法を紹介しています。

産地の資料は、干す場所を、日照と通風がよく、土ぼこりが立たず、野鳥が入らない場所としています(『特産種苗』第6号)。

産地では、雨よけのパイプハウスの周りを防鳥網で囲って干すと説明されています(同)。

家庭で屋外に干す場合も、鳥や虫、ほこりを防ぐため、干し網やネットを使うとよいでしょう。

神奈川県農業技術センターは、家庭ではベランダで干すのがよいとしたうえで、乾燥には1週間から10日くらいかかり、冬場でもその間に雨や雪が降らない保証はないと注意しています。

雨や雪が予想される日は、屋内の風通しのよい場所に移します。

夜の扱いについて、日本の公的な資料で示したものは、当サイトでは確認できていません。

米国の家庭向けの食品保存の情報機関(National Center for Home Food Preservation、ジョージア大学)は、屋外で乾燥させる果物について、夜は覆うか屋根の下に取り込むよう案内しています。

夜の冷えた空気が結露して食品に水分が戻ることがあり、乾燥が遅れるためとしています。

当サイトでも、夜や天気が崩れそうなときは、屋内の風通しのよい場所に移すことをおすすめします。

室内で干すときは、風通しと暖かさに注意

ベランダや庭で干せない場合は、室内の風通しのよい場所で干す方法もあります。

室内で干すときは、暖房の効いた暖かい部屋は避け、風通しのよい涼しい場所を選びます。

日本いも類研究会が、時期が早いと暖かくてカビが生えると注意しているように、暖かい場所ではカビの心配が大きくなると考えられるためです。

室内で干したときの乾き方を示した公的な資料は、当サイトでは確認できていません。

室内で十分に乾かせない場合は、オーブンや食品乾燥機を使う方法もあります。

オーブンで乾燥させる

天日で干す代わりに、オーブンで乾燥させる方法もあります。

オーブンで干し芋を作る家電メーカーの公式レシピは、当サイトでは見つけられませんでした。

料理サイトのレシピには、蒸して1cm幅に切った芋を、クッキングシートを敷いた天板に並べ、110℃に予熱したオーブンで50分〜1時間焼き、裏返してさらに110℃で50分〜1時間焼く例があります(デリッシュキッチン)。

レシピによって温度や時間は違うため、選んだレシピの温度・時間・予熱の有無を、ひと組で守ってください。

天板にオーブンシート(クッキングシート)を敷く場合は、シートの使用条件にも注意が必要です。

旭化成ホームプロダクツの「クックパー クッキングシート」の製品ページは、熱に強いことの説明とあわせて「250℃ 20分〜300℃ 5分」と記載していますが、低い温度で長い時間使う場合の説明は見当たりませんでした。

お使いのシートの表示とオーブンの取扱説明書を確かめ、わからない場合はメーカーに確認してから使ってください。

オーブンレンジで乾燥させるときは、「レンジ」ではなく「オーブン」の機能を使います。

レンジ(電波)の機能で長く加熱すると発煙や発火のおそれがあることは、このあと電子レンジの項でご説明します。

干し芋ではありませんが、シャープは、ヘルシオで作るドライフード(チップス)は長期保存ができないため、冷蔵して早めに食べきるよう案内しています。

オーブンで乾かした干し芋も、仕上がりの硬さを確かめ、後の章のとおり冷蔵して早めに食べきりましょう。

オーブンでさつまいもを焼くときの温度と時間は、オーブンで焼き芋を作る方法を解説した記事でご紹介しています。

食品乾燥機(フードドライヤー)は取扱説明書の設定で

食品乾燥機(フードドライヤー)を使う方法もあります。

メーカーが示す干し芋の乾燥の条件は、機種によって大きく違います。

  • 家庭用のフードドライヤー(PRINCESS)のレシピ: 1cmのスライスにしてから蒸し、皮をむいた芋を、50℃で4〜6時間乾燥させる例です。
  • 食品乾燥機 DSH-mini(静岡製機)の取扱説明書: 干し芋は、一般品種で38℃・4時間と天日乾燥の併用(品種ごとに異なる)、干し芋用の品種で38℃・22時間(品種によっては天日乾燥の併用が必要)。これらは目安であり、品種ごとに適した設定が必要としています。

産地で使われている乾燥機による乾燥は、7〜48時間程度とされています(茨城県農業総合センター園芸研究所)。

お使いの機種の取扱説明書やメーカーのレシピに従ってください。

DSH-mini の取扱説明書は、部屋の湿度が高いと乾燥に時間がかかるとしています。

電子レンジで「乾燥」させる方法はおすすめしない

「干さない」「電子レンジ」で調べると、蒸した芋を電子レンジで繰り返し加熱して水分を飛ばすレシピが見つかります。

しかし、水分の少なくなった芋を電子レンジで長く加熱すると、発煙や発火のおそれがあります。

国民生活センターのテストでは、約100gのさつまいもをラップをせずに500Wで加熱し続けたところ、約8分で煙が出て、約11分で発火しました(2026年3月)。

同センターは、水分の少ない根菜類を長く加熱すると、水分が蒸発して炭化が進み、発生した可燃性のガスに引火して燃えるものと推測しています。

これらの時間は、テストの条件で煙や火が出るまでにかかった時間で、これより短ければ安全という目安ではありません。

東京都も、水分の少ないさつまいもを温めている際の出火の事故報告が多く寄せられているとして、注意を呼びかけています(東京都生活文化局、2026年3月)。

電子レンジの取扱説明書でも、「水分の少ない干もの」などは、加熱しすぎると焦げたり燃えたりするおそれがあると注意している機種があります(日立 オーブンレンジ MRO-AF7 取扱説明書)。

こうした理由から、当サイトでは、電子レンジで干し芋を乾燥させる方法はおすすめしていません。

天日で干すのが難しい場合は、オーブンや食品乾燥機を、取扱説明書に従って使ってください。

電子レンジでさつまいもを加熱するときの発火の注意は、電子レンジで焼き芋・ふかし芋を作る方法を解説した記事でもご説明しています。

干し上がりの目安と、やわらかめに仕上げるとき

茨城県は、干し芋の仕上がりの水分は22%を目安にするとよいとしています。

水分が多いほど軟らかくなる傾向がある一方で、衛生面の問題が出てくるため、食感と衛生の両方を考えた目安としています(茨城県農業総合センター園芸研究所、2023年)。

家庭で水分を測るのは難しく、干し上がりを見分ける方法を示した公的な資料も、当サイトでは確認できていません。

資料の日数(平干しで1週間前後)を目安に、好みの硬さになったところで仕上げます。

短い日数で仕上げた、やわらかめ(半生)の干し芋は、水分が多いぶん、衛生面で注意が必要です。

やわらかめに仕上げたものは、後の章でご説明するとおり冷蔵して、早めに食べきりましょう。

干し芋をカビさせないために|干す間の衛生と、できた後の保存

手作りの干し芋で、特に気をつけたいのがカビです。

干し芋は乾燥させた食品ですが、仕上がった後も水分が残り、カビが生えることがあります。

ここでは、干している間と、できた後の保存で気をつけたいことをご説明します。

干し芋は、乾いてもカビが生えることがある

干し芋は、乾かしても水分がなくなるわけではありません。

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、「さつまいも 蒸し切干」の水分は可食部100gあたり22.2gです。

産地の衛生管理の手引書は、干し芋は糖度が高く水分活性(食品の中の水のうち、微生物が利用できる水の目安となる値)が低いため、微生物の増殖が抑えられているとしています。

そのうえで、カビが発生する可能性があり、脱酸素剤などで賞味期限を管理しているとしています(ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会)。

東京都健康安全研究センターが、1987年から2002年までの16年間に扱った食品のカビなどの苦情562事例をまとめた報告には、乾燥芋の事例が9件含まれていました(諸角ほか、東京健安研セ年報55号、2004年)。

乾燥芋の事例で検出されたカビは、ワレミア、ユーロチウム、クラドスポリウムでした。

同じ報告は、前の2つを、やや乾燥した条件を好むカビ(好乾菌)として挙げ、菓子類など水分活性のやや低い食品で見られるとしています。

同じ報告は、カビは細菌より低い水分活性で生育でき、菌種によっては0.7程度まで生育するとしています。

当サイトで並べてみると、産地の手引書が品評会の検査結果として示す干し芋の水分活性(0.73〜0.81)は、この範囲に重なります。

加熱した芋を、何日も外に置いて大丈夫?

当サイトの焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事では、焼いた芋を常温に置くのは2時間まで(気温が32℃を超えるときは1時間まで)を目安にしています。

干し芋は、加熱した芋を何日も外に置いて作るため、矛盾するように見えるかもしれません。

焼き芋の目安は、加熱した芋を乾かさずにそのまま置いておく場合のものです。

干し芋は、寒い時期に水分を抜くことで、微生物が増えにくい状態にする加工です。

産地の手引書は、原料に付く土の微生物は、洗う・蒸す・皮をむく工程でほとんど減らせるとし、乾燥によって生き残った微生物は増殖することもできなくなるとしています。

そのうえで、蒸してから乾燥が終わるまでのあいだに微生物を付けないことが大切だとして、手洗いや作業場の整理・整頓・清掃を求めています。

ただし、干し始めたばかりの芋はまだ水分が多く、家庭では産地と同じ条件をそろえられないこともあります。

米国の家庭向けの食品保存の情報機関(National Center for Home Food Preservation)は、野菜を屋外で天日乾燥することはすすめておらず、屋内でオーブンや食品乾燥機を使うよう案内しています。

日本では、産地でも家庭でも天日で干す方法がとられていますが、気温の高い日が続くときや、雨で乾きにくいときに、何日も外に置いたままにするのは避けましょう。

そうしたときは、オーブンや食品乾燥機を使う方法もあります。

干している途中で、においやぬめりが出たり、カビが生えたりしたものは食べないでください。

ただし、こうした異常が見当たらないことは、安全の証明にはなりません。

食中毒の原因になる細菌は、増えても食品の味やにおい、見た目をほとんど変えないことがあります。

干し始めた日や干した日数、干している間の天気といった履歴もあわせて判断してください。

作業と干す場所を清潔に保つ

カビや微生物による汚れを防ぐため、作業と干す場所を清潔に保ちます。

産地の衛生管理の手引書などをもとに、家庭でも取り入れやすい点をまとめました。

  • 手を洗う: 皮をむく前と、芋を並べる前に、手をよく洗います。産地の手引書は、洗浄剤で洗って流水で洗い流す手順を2回くり返す「2度洗い」で、菌やウイルスを洗い流すよう呼びかけています。
  • 手袋を使う: 皮をむいた後の芋には、清潔な手袋をして触れます。
  • 器具を清潔に: 包丁、まな板、ざる、干し網は、使うたびに洗い、乾かしてから使います。
  • その日のうちに干す: 皮をむいた芋は、翌日に持ち越さずに干し始めます。
  • 重ねない: 芋どうしが重ならないように並べます。
  • 虫・鳥・ほこりを防ぐ: 屋外では網やネットをかけ、土ぼこりの立たない場所で干します。
  • 雨や雪に当てない: 天気が崩れそうなときは屋内に移します。
  • 暖かい時期は避ける: 日本いも類研究会は、時期が早いと暖かくてカビが生えるので、注意が必要なようだとしています。

カビが生えたら、取り除かずに食べない

干している途中や、できた後の干し芋にカビが生えたら、その部分を取り除かずに、食べないでください。

農林水産省は、餅を例に、カビの部分を取り除いても見えるカビがなくなっただけで、見えないカビが内部や表面にまだ残っている可能性が十分あるとしています。

また、かび毒は熱に強いものが多く、ゆでる、焼くなどの通常の調理では分解しないと説明しています。

そのうえで、カビが生えた食品は、もったいなくても食べないよう呼びかけています(農林水産省「食品のかび毒に関する情報」)。

食品安全委員会も、見えているカビを取り除いても、カビやかび毒が残っているかもしれないとしています。

白い粉とカビは、見た目だけで決めない

干し芋の表面には、白い粉がふくことがあります。

日本いも類研究会は、干し上がったものをきれいなワラと交互に積んでおくと、表面に白い粉(麦芽糖)が浮いてくると紹介しています。

茨城県の「茨城をたべよう」は、白い粉の正体を糖分と説明しています。

そのうえで、白い部分が盛り上がって綿のようになっている場合や、青色・緑色・ピンク・赤茶色の斑点がある場合は、カビの可能性があるので食べないよう呼びかけています。

ただし、白い粉とカビを見た目だけで見分けるのは難しいことがあります。

迷ったときは、食べないでください。

また、見た目に異常が見当たらない場合でも、それだけで安全とはいえません。

札幌市保健所は、腐敗をおこす菌とは違い、食中毒菌がついていても、食べ物の味やにおい、見た目は変わらないのが普通だとしています。

手作りの干し芋は、いつ作ったか、何日干したか、干している間の天気はどうだったか、どのように保存したかといった履歴で判断しましょう。

手作りの干し芋の保存方法|市販品の日持ちを当てはめない

手作りの干し芋は、袋詰めされた市販品とは条件が違います。

前の章でご紹介したように、産地の手引書は、脱酸素剤などで干し芋の賞味期限を管理しているとしています(ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会)。

手作りの干し芋は、こうした包装をしていないため、市販品の賞味期限や保存期間をそのまま当てはめないようにしましょう。

手作りの干し芋の保存期間を示した公的な資料は、当サイトでは確認できていません。

食品安全委員会は、カビを防ぐ保存のポイントとして、清潔・低温・乾燥・密閉(空気に触れさせない)を挙げ、冷蔵庫の中でも安心できないとしています。

これらを踏まえて、手作りの干し芋は次のように保存しましょう。

  • 冷ましてから包む: オーブンや食品乾燥機で乾かした場合は、冷ましてから包みます。米国の家庭向けの食品保存の情報機関などがまとめた教材は、乾燥させた果物を温かいまま密封すると、水分が出てカビが生えることがあるとして、30〜60分冷ましてから包むよう案内しています。
  • 冷蔵する: 1枚ずつラップで包み、保存袋に入れて冷蔵庫で保存し、早めに食べきります。
  • 冷凍する: すぐに食べない分は、小分けにして冷凍します。
  • 異常があれば食べない: カビが生えたもの、においやぬめりがあるものは、食べないでください。異常が見当たらなくても、それだけで安全とはいえません。食中毒の原因になる細菌は、見た目やにおいをほとんど変えないことがあるため、作った日や干した日数、保存の仕方もあわせて判断します。

よくある質問

最後に、干し芋の作り方について、よくある質問にお答えします。

いずれも、本文でご説明した内容を短くまとめたものです。

Q1. 干し芋は何日干せばいいですか?

天日で平干しにする場合、農林水産省のレシピは1週間、日本いも類研究会は7〜10日としています。

丸干しは14日程度と、平干しより長くかかります(茨城県農業総合センター園芸研究所)。

天気が悪い日が続くと、さらに日数がかかることがあります。

Q2. 干さずに作る方法はありますか?

天日で干すのが難しい場合は、オーブンや食品乾燥機で乾燥させる方法があります。

どちらも、お使いの機種のレシピや取扱説明書の設定に従ってください。

電子レンジで繰り返し加熱して乾燥させる方法は、発煙や発火のおそれがあるため、当サイトではおすすめしていません。

Q3. 干し芋が甘くならないのはなぜですか?

材料の芋の状態と、蒸し方の両方が関係すると考えられます。

茨城県は、芋を貯蔵して糖化を進め、糖度を確かめてから加工するとよいとしています。

蒸す工程では、急いで高い温度にせず、酵素が働く温度帯を長く通すようにゆっくり温度を上げるとよいとしています。

Q4. 硬くて白い部分(シロタ)ができたのはなぜですか?

干し芋の一部が硬く、白く不透明になる障害は「シロタ」と呼ばれます。

「中白」とも呼ばれます(農研機構)。

農研機構は、芋が太る時期(9〜10月)に畑の土が乾くと、芋の中の水分やでんぷんの蓄積にむらができ、蒸す工程ででんぷんの糊化が不十分になることが原因だとしています(農研機構、2006年)。

どの部分がシロタになるかは、生のさつまいもの外観だけでは見分けられないとされています(同)。

農研機構の2008年の成果情報は、当時、蒸切干の加工用の品種の9割以上を占めていた「タマユタカ」について、シロタが発生しやすい欠点があるとしています。

前の章でご紹介した「ほしキラリ」と「ほしこがね」は、シロタがほとんど発生しないとされています(農研機構)。

Q5. 干し芋が黒っぽく仕上がったのはなぜですか?

原因のひとつとして、原料の芋の保存温度が考えられます。

茨城県の試験では、「べにはるか」と「ほしこがね」で、原料の芋が10℃を下回る低温にさらされると、干し芋が黒く変色する可能性があるとしています(茨城県農業総合センター園芸研究所・農業研究所、平成25年度)。

また、同県の別の試験では、蒸して皮をむいた後、扇風機で1時間ほど風を当てて芋の中の温度を約30℃まで冷ましてから切ると、仕上がりの色が明るいものの割合が高くなりました(べにはるか・ほしこがね)。

ただし、約10℃まで冷やした場合は、明るい色の割合が高くなるとは限らなかったとしています(茨城県農業総合センター園芸研究所、平成30年度)。

原料の芋の貯蔵期間が短い場合などは、扇風機で冷ます効果が現れにくい可能性があるとしています(同)。

一方で、黒っぽい部分がカビなのかどうかを、見た目だけで見分けるのは難しいことがあります。

カビかどうか判断できないときは、食べないでください。

また、見た目に異常が見当たらなくても、それだけで安全とはいえません。

食中毒の原因になる細菌は、見た目やにおいをほとんど変えないことがあるため、作った日や干した日数、保存の仕方もあわせて判断してください。

Q6. 干し芋のエネルギーはどのくらいですか?

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、「さつまいも 蒸し切干」のエネルギーは可食部100gあたり277kcalです。

水分が少ないぶん、同じ100gで比べると、蒸したさつまいも(「さつまいも 塊根 皮なし 蒸し」131kcal)より高い値になります。

まとめ

家庭での干し芋の作り方は、蒸す・切る・干すの3つの工程です。

最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 干し芋は、気温の高くない11月下旬〜3月ごろに作るのが基本です。時期が早く暖かいと、カビが生えやすいとされています。
  • 芋は皮付きのまま丸ごと、1時間前後を目安に蒸し、串や手の感触で確かめます。産地では、酵素が働く温度帯を長く通すよう、ゆっくり温度を上げて蒸すとよいとされています。
  • 蒸したら熱いうちに皮を厚めにむき、縦に1cm前後(資料により0.5〜1cm)に切って、その日のうちに干し始めます。
  • 天日で平干しにする場合は1週間前後、丸干しは14日程度が目安です。雨や雪、鳥や虫、ほこりを避けて干します。
  • オーブンや食品乾燥機を使う場合は、機種のレシピや取扱説明書に従います。電子レンジで乾燥させる方法は、発煙や発火のおそれがあるため、おすすめしません。
  • カビが生えた干し芋は、その部分を取り除かずに食べないでください。白い粉とカビは見た目だけで見分けにくいため、迷ったら食べないようにしましょう。見た目に異常がなくても安全の証明にはならず、細菌は見た目やにおいをほとんど変えないことがあるため、作った日や干した日数、保存の仕方もあわせて判断します。
  • 手作りの干し芋は、市販品の賞味期限を当てはめず、冷蔵して早めに食べきり、すぐに食べない分は冷凍します。

参考資料

本記事の作成にあたって参照した資料です。