はじめに

さつまいもを切ったら断面が茶色くなった、蒸した芋がいつの間にか緑色になっていた、切ってみたら中が白くスカスカだった。

調理や保存の途中で、さつまいもの色が変わって驚いた経験がある方もいらっしゃると思います。

さつまいもの変色には、切り口で起こる成分の反応から、加熱したときの反応、冷やしすぎによる傷み、病気やカビまで、いくつもの原因があります。

同じ「黒」や「緑」でも、原因が違えば、安全面での意味合いも変わります。

本記事では、さつまいもが変色する原因について、黒・茶色・緑・白の色ごとに、わかりやすくご説明したいと思います。

生のとき、保存中、加熱した後で原因がどう変わるかを、公的機関の資料や研究をもとに整理しました。

先にお伝えしておきたいのは、色だけで「食べても大丈夫」とは判断できない、ということです。

変色の原因は家庭では見分けにくく、迷ったときは食べないことを基本にしてください。

焼いた後の焼き芋の扱いや、食中毒で気をつけたいことは、焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事でまとめています。

さつまいもの変色は「いつ・どこが・何色に」で原因が変わる

さつまいもの変色は、主に、切り口の褐変、白い乳液の黒変、加熱後の成分の反応、冷やしすぎや病気・カビによる傷みで起こります。

どれにあたるかの手がかりになるのは、「いつ」「どこが」「何色に」変わったかです。

ここでは、原因の全体を早見表で整理したうえで、食べるかどうかを考えるときの前提をご説明します。

変色の原因の早見表

色が変わったタイミングと場所ごとに、考えられる主な原因をまとめました。それぞれの詳しい説明は、表の右の列にある章でご紹介します。

いつ・どこで色考えられる主な原因詳しくは
切ってしばらくした断面茶色〜黒っぽいポリフェノールの褐変生の変色の章
切り口や皮に付いた液白 → 黒ヤラピンを含む乳液生の変色の章
切った時点の内部・皮の下茶色〜黒っぽい部分低温障害、内部褐変症、病気生の変色の章
皮の表面くぼんだ円形の黒い斑点黒斑病などの病気生の変色の章
煮る・蒸す・焼くなど加熱した後灰色〜黒っぽいクロロゲン酸と鉄イオン、低温障害加熱後の章
重曹などを使った料理緑〜青緑クロロゲン酸とアルカリ性の材料緑の章
蒸し芋などを冷蔵庫に置いた後緑〜青アンモニアとの反応緑の章
密封や長い水浸けの後に加熱皮のすぐ下が青緑酸素の少ない状態での変質緑の章
紫芋を使った料理緑〜青アントシアニンの色の変化緑の章
表面白い綿のようなもの、青緑のものカビ白の章・緑の章
切り口の一部白くスカスカ「す」・空洞症白の章
焼き芋・蒸し芋の中心白っぽく硬い加熱不足、低温障害白の章

この表は、原因の見当をつけるための目安です。次の項目でご説明するとおり、見た目だけで原因を確定することはできません。

色だけでは「食べられるか」は決められない

変色の原因を色だけで決められないのには、いくつか理由があります。

ひとつは、複数の原因が重なることがあるためです。冷やしすぎて弱ったさつまいもは傷みやすくなり、そこに別の変化が重なることがあります。

もうひとつは、外から見ても分からない変色や、初期には見分けにくい変色があることです。

茨城県農業総合センター農業研究所は、外観から判別のつかない「内部褐変症」が問題になっているとしています。

病気による病斑も、初期にはほかの変色と見た目が似ていることがあります。

加熱した後の緑色も、料理の材料による色の変化のこともあれば、保存中に品質が落ちた結果のこともあります。

同じ緑色でも、原因によって意味合いが違います(緑の章でご説明します)。

本記事の早見表は、原因を知るための手がかりとしてお使いください。迷ったときは、食べないようにしましょう。

食べないほうがよい状態

色に関係なく、次のような状態のさつまいもは、食べないようにしてください。

  • カビが生えている(白・青緑・黒など、色を問わない)
  • 酸っぱいにおい、アルコールや酵母のようなにおいなど、いつもと違うにおいがする
  • ぬめりがある、汁がにじむ、押すとぶよぶよと柔らかい
  • 苦み・えぐみなど、いつもと違う味がする(確かめるための味見はしない)
  • 皮の表面に、くぼんだ円形の黒い斑点がある

ただし、こうしたサインがないことは、安全の証明にはなりません。

札幌市保健所は、腐敗を起こす菌とは違い、食中毒の原因となる菌がついていても、食べ物の味やにおい、見た目は変わらないのが普通だとしています。

とくに加熱した芋は、焼いたり蒸したりしてからの時間と、どこに置いていたかという保存の履歴で判断してください。

生のさつまいもが黒・茶色になる原因

さつまいもを切ったら黒くなる、中が茶色い、といった生のときの変色は、切ってしばらくしてから出てくるものと、切った時点ですでにあるものに分けられます。

前者は切り口で起こる成分の反応が主な原因で、後者には冷やしすぎや病気が関わることがあります。

ここでは、それぞれの原因を順にご説明します。

切ってしばらくすると茶色に|ポリフェノールの褐変

さつまいもを切って置いておくと、断面がだんだん茶色っぽくなることがあります。

これは「褐変(かっぺん)」と呼ばれる現象です。

「切ったら黒くなる」と言われる変化には、この褐変のほか、次の項目以降でご紹介するヤラピンや鉄分によるものがあります。

コープこうべ商品検査センターは、その仕組みを次のように説明しています。

さつまいもには、ポリフェノールの一種のクロロゲン酸が含まれています。

切ると、このクロロゲン酸が、酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼなど)の働きで空気中の酸素と結びつき、褐色の物質ができるため、断面が褐変するということです。

同センターは、クロロゲン酸は皮の近くに多いとしています。

農林水産省の「消費者の部屋通信」(2024年12月号)も、切ったまま置くと、酸化酵素がポリフェノール類に作用して褐変物質ができるとしています。

同誌によると、皮の下にはリング状の筋があり、この部分に変色する成分が集まっているそうです。

白い液が黒く変わる|ヤラピン

さつまいもを切ると、切り口から白い液がにじむことがあります。

日本いも類研究会は、この粘りのある白い乳液を、ヤラピンまたはヤラッパ樹脂と呼んでいます。

同研究会によると、この液はそのまま置いておくと、黒いタール状の物質に変わります。

津久井亜紀夫氏(東京農業大学)は、ヤラピンを樹脂配糖体と呼ばれる成分の仲間として紹介しています(いも類振興情報111号、2012年)。

黒くなる理由については、乳液にポリフェノールが一緒に含まれていて、空気に触れるとポリフェノールオキシダーゼの働きで酸化重合し、黒ずむと説明しています。

皮の表面に付いている黒いものも、収穫のときの切り口から出た液や、芋どうしがぶつかってできた傷から染み出た液が黒く変わったものと考えられています(コープこうべ商品検査センター)。

コープこうべ商品検査センターは、切り口から出る白い液や皮の表面の黒いものをヤラピンによるものとしたうえで、ヤラピンについて「食べても健康に害はありません」と説明しています。

ただし、皮や切り口の黒いものがすべてヤラピンだとは、見た目だけでは決められません。

初期の病気の病斑は、ほかの変色と見分けにくいことがあります。

なお、日本いも類研究会はヤラピンを糖脂質の仲間としており、この黒い付着物は、焼き芋の切り口ににじむ「蜜」(加熱でできた糖)とは別のものです。

甘さとの関係を示した資料は、当サイトでは確認できていません。

詳しくは、ヤラピンを解説した記事でご説明しています。

鉄分で黒褐色〜黒色に変わることもある

切り口の変色には、鉄分が関わるものもあります。

農林水産省の「消費者の部屋通信」(2024年12月号)は、さつまいもの断面の変色の原因として、褐変やヤラピンのほかに、鉄分が原因で黒褐色〜黒色に変わることもあるとしています。

同誌は、その鉄分が包丁や鍋など調理器具のものか、さつまいもに含まれるものかまでは書いていません。

そのため、本記事でも鉄の出どころは特定しません。

加熱した後の黒変にも、鉄イオンが関わると考えられています(次の章でご説明します)。

切った時点で中が黒い・茶色い|低温障害・内部褐変症・病気

包丁を入れた時点で、断面の内側や皮のすぐ下に、茶色や黒っぽい部分があることもあります。

この場合は、切り口の反応ではなく、芋の内部で起きていた変化が考えられます。

ひとつは、低温障害(さつまいもを冷やしすぎたときに起こる傷み)です。

カリフォルニア大学デービス校の収穫後研究センターは、さつまいもは12.5℃以下で低温障害を受けやすく、症状として、カビによる腐敗、内部の果肉の褐変、しなびなどを挙げています。

国内では、農研機構が、一般に9℃以下で貯蔵すると低温障害が起こり、腐敗しやすくなるとしています。

同機構は、11℃程度でも数か月の長い貯蔵では腐敗が増えることが知られているともしています。

低温障害が起こる温度は資料によって幅があり、置かれた時間の長さにも関係するため、ひとつの数値で区切ることはできません。

もうひとつは、「内部褐変症」という生理障害です。茨城県農業総合センター農業研究所は、外観から判別のつかない内部褐変症について、芋が太る8〜9月の干ばつが発生を増やす要因のひとつだとしています(ハウスでベニアズマを使った試験)。

同研究所は、品種が変わると発生の傾向も変わる可能性があるとしています。

病気によることもあります。黒斑病(こくはんびょう)は、カビの一種による病気です。

茨城県農業総合センター病害虫防除部は、芋の病斑は初期には緑を帯びた黒褐色で、進むと黒色が強くなり、表面がくぼんだ円形になって中央にカビを生じるとしています。

黒斑病にかかった芋などでは、イポメアマロンという苦み成分が作られることがあります。

病斑の外側にどこまで成分が及ぶのかを示した資料は、当サイトでは確認できていません。

そのため当サイトでは、病気が疑われる芋は、加熱しても、その部分を切り取っても、安全のための対策にはならないと考えています。

家庭で安全かどうかを確かめる方法がない以上、加熱や切除を手段として当てにできない、という意味です。

切った時点で中が黒い・茶色いときは、原因を家庭で見分けるのは難しいと考えてください。

苦みや異臭がある場合や、判断がつかない場合は、食べないようにしましょう。黒い斑点の原因と見え方は、さつまいもの黒い斑点を解説した記事で詳しくご説明しています。

加熱した後に黒っぽくなる原因|焼き芋・蒸し芋・煮物

焼き芋の中が黒っぽい、茹でたり煮たりしたら色が黒ずんだ、という変色もあります。

加熱した後の黒っぽい変色には、さつまいもの成分と鉄イオンの反応や、加熱前の冷やしすぎが関わることが報告されています。

ここでは、それぞれの仕組みと、食べないほうがよい場合、煮るときの工夫をご説明します。

クロロゲン酸と鉄イオンによる「調理後黒変」

加熱した後のさつまいもが黒っぽくなる現象は、「調理後黒変」と呼ばれます。

鹿児島県農産物加工研究指導センターと農林水産省食品総合研究所の研究グループは、調理後黒変の激しい品種(ベニオトメ、ベニハヤト)のペーストに、クロロゲン酸を分解する酵素を加えると、黒変を抑えられたと報告しています。

分解されたあとの成分は鉄イオンと反応しにくく、「鉄イオンと反応した黒変物質」ができにくくなったためと考えられています(下園ほか、日本食品科学工学会誌、2000年)。

アメリカ農務省農業研究局のサイトに掲載されている、さつまいものピューレについての解説(Truong・Avula、2010年)も、加熱したさつまいもが空気に触れると、灰色・黒・緑っぽく変色することがあるとしています。

原因は、フェノール類(ポリフェノールの仲間)と金属、とくに鉄が結びつくことだとしています。

黒くなりやすさは、品種によって違います。

農研機構の品種の育成の報告では、調理後黒変が品種の評価項目のひとつになっています。

例えばクイックスイートは、調理後黒変が紅あずま(ベニアズマ)より少なく、高系14号並みと判定されています(片山ほか、作物研究所研究報告、2003年)。

同じように調理しても、品種によって色の出方が違うことがあるということです。

冷やしすぎた芋は、加熱後の色が濃くなることがある

加熱する前の保存の仕方も、加熱後の色に影響することがあります。

カリフォルニア大学デービス校の収穫後研究センターは、低温障害を受けた芋を加熱すると、冷やしていない芋より色が濃くなることや、「ハードコア」と呼ばれる状態(加熱しても硬い部分が残るものとして知られます)になることがあるとしています。

冷蔵庫の野菜室は約3〜8℃で(アイリスオーヤマ。機種や設定によって違います)、低温障害が起こるとされる温度を下回っています。

冷蔵庫に長く入れていた芋が、焼いたり蒸したりした後に黒っぽくなったときは、低温障害が関わっている可能性も考えられます。

生のさつまいもの保存の仕方は、後の章でご説明します。

苦みや異臭があれば食べない

加熱した後の黒い部分に、苦みや異臭がある場合は、食べないでください。

さつまいもは、病原菌の感染や害虫の食害、傷を受けると、イポメアマロンなどの成分を作ります。

農畜産業振興機構の報告書は、イポメアマロンには独特のにおいと苦みがあるとしています。

ただし、苦みがないことは安全の証明にはなりません。

前の章でご説明したとおり、当サイトでは、病気が疑われる芋は、加熱しても切り取っても安全のための対策にはならないと考えています。

苦くなくても、傷みや病気が疑われる芋は食べないようにしましょう。

苦い焼き芋の扱いは、焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事でもご説明しています。

煮るときに黒くしにくくする工夫

煮物などで色をきれいに仕上げたいときの工夫も、紹介されています。

おおさかパルコープは、さつまいもを煮ると黒っぽくなるという質問に対し、アク抜きの方法を紹介しています。

切った大きさにもよるとしたうえで、水に5〜15分ほど浸けておくか、水に入れてかき混ぜることを2〜3回繰り返し、水が濁らなくなるまで行う方法です。

茹でるときに、酢やレモン汁などを入れるのも有効だとしています。

食品の加工の分野では、金属イオンと結びつきやすい酸性ピロリン酸ナトリウムなどが、加熱後の変色を防ぐのに有効とされています(Truong・Avula、2010年)。

鉄と結びつく成分を使うと変色しにくくなる、という考え方です。

家庭では、上の生協の方法や、後の「変色を防ぐ扱い方」の章の方法を参考にしてください。

緑・青緑になる原因|4つの仕組みと食べるかどうかの考え方

さつまいもが緑や青緑に変わる原因には、少なくとも4つの仕組みが知られています。

料理の材料による色の変化もあれば、保存中に品質が落ちた結果として起こるものもあります。

「緑色なら食べても大丈夫」と説明する記事も見かけますが、仕組みによって意味合いが違うため、ここで分けてご説明します。

重曹など、アルカリ性の材料で緑になる

天ぷらや蒸しパンなど、重曹を使った料理で、さつまいもの皮の近くや生地に接したところが緑色になることがあります。

この仕組みは、研究で調べられています。

東京農業大学の研究グループは、さつまいもやごぼうなどを加工したときに見られる緑色の変化を調べました。

その結果、クロロゲン酸(またはその仲間のカフェ酸エステル)2分子と、アミノ基をもつ化合物(第一級アミノ化合物)1分子が、アルカリ性の液の中で空気に触れて結びつき、緑色の色素ができると報告しています。

色素の構造は、この研究で推定されたものです(Yabuta ほか、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry、2001年)。

重曹(炭酸水素ナトリウム)はアルカリ性のため、こうした反応が起こりやすくなると考えられます。

ただし、天ぷらの緑色が、いつも重曹によるものとは限りません。

茨城県のサイトの衛生研究所のページには、さつまいもの天ぷらが緑色になる原因を調べた研究の評価調書が掲載されています。

それによると、緑色はpHの変化によるものではなく、自家製のわらつと納豆に含まれていた枯草菌が作る、アンモニアを主成分とする揮発性の成分が、クロロゲン酸類と反応したものだったとしています。

重曹を使った料理で作ってすぐに緑色になった場合は、材料による色の変化と考えられます。

ただし、緑色になったさつまいもを食べてよいかどうかを示した公的な資料は、当サイトでは確認できていません。

異臭や異味がある場合、作ってから時間がたったものを常温に置いていた場合は、食べないようにしましょう。

冷蔵庫に置いた蒸し芋が緑・青に|アンモニアとの反応

蒸したさつまいもを冷蔵庫に入れておいたら、緑色や青色になっていた、という事例があります。

横浜市の衛生研究所が紹介している苦情の事例では、蒸したさつまいもを一晩冷蔵庫に置いたところ、皮の内側と中心部が緑色に変わりました。

緑色になっていない蒸し芋を、アンモニアを含ませた脱脂綿と一緒に密閉容器に入れたところ、同じように緑色になり、アンモニアが濃いほど緑色も濃くなりました。

原因は、クロロゲン酸とアンモニアが反応してできた緑色の物質とされています。

愛知県衛生研究所も、冷蔵庫で青くなった蒸し芋の事例を、アンモニアの蒸気で再現しています。

どちらの資料も、アンモニアは冷蔵庫の中の腐敗細菌などが作ったものと考えています。

横浜市は、この緑色について「人体への影響は不明です」としています。

どちらの事例も蒸し芋ですが、当サイトでは、冷蔵庫に置いていた加熱済みの芋が緑色や青色になったときは、食べないことをおすすめします。

横浜市は、冷蔵庫の中を洗浄・殺菌して清潔に保つことで、こうした変色を防げるとしています。

密封や長い水浸けの後に加熱して青緑|異味・異臭を伴う

千葉県農業試験場の研究グループは、酸素の少ない状態に置かれたさつまいもを加熱すると、皮のすぐ下が青緑色に変わることを報告しています(宮崎ほか、日本包装学会誌、1993年)。

ガスを通しにくいフィルムの袋で密封して15℃に置いた芋では5日後に起こり、畑の冠水を想定して20℃の水に入れた芋では、2日で3分の1、4日以上ですべての芋に起こりました。

収穫前の数日間、水がたまっていた畑から掘った芋でも起きています。

同じ研究は、青緑色になったさつまいもには「いずれも異味・異臭が認められ」、変質の程度がはなはだしいことがうかがわれたとしています。

論文はまた、先行研究(瓜谷ら)が、原因物質をポリフェノールのなかのカフェ酸エステル類と推定し、アルカリ性が必要な条件としていることを紹介したうえで、青緑変の反応の詳細や物質の構造は「いまだ明らかではない」としています。

この場合の青緑色は、保存中に品質が落ちた結果として起こる変色です。

密封した袋に長く入れていた芋や、水に長く浸けていた芋が、加熱後に青緑色になったときは、食べないでください。

紫芋が緑・青になるのは、アントシアニンの色の変化

紫芋(むらさきいも)を使った料理やお菓子が、緑色や青色に変わることもあります。

紫芋の紫色は、アントシアニンという色素によるものです(日本いも類研究会)。

アントシアニンは、pH(酸性・アルカリ性の度合い)によって色が変わる性質があります。

東京都健康安全研究センターの研究者が報告した苦情の事例では、大判焼きの紫芋あんが緑色に変わっていました。

調べると、皮の部分はpH8.7、あんの部分は6.7でした。

あんを水で抽出した液は、pH6.7で紫色、7.6で青色、9.5で緑色を示しました。

報告は、皮に使われた重曹によってpHが上がり、あんの色素の色が変わったものと結論づけています(粕谷ほか、東京健安研セ年報、2003年)。

紫芋の緑色は、クロロゲン酸による緑色とは別の仕組みです。

ただし、この場合も、異臭や異味がある場合や、作ってから時間がたったものを常温に置いていた場合は、食べないようにしましょう。

緑色のカビとは別のもの

表面に緑色のものが付いている場合は、カビのこともあります。

農研機構は、さつまいもの「青かび病」について、皮がむけたところなどに青から緑色の菌が生え、白いかびが時間とともに青〜緑色に変わるとしています。

進むと、芋の組織は黒から褐色に変わります。

ここまでご紹介した緑色の変化は、芋の中の成分の反応で起こるものです。

表面に綿のような、粉のようなものが付いて緑色に見える場合は、カビを疑って食べないようにしましょう。

カビについては、次の章でもご説明します。

白くなる・中が白い原因

さつまいもの中が白い、白いものが付いている、という「白」には、切り口から出る白い液、切り口の一部が白くスカスカになったもの、表面の白いカビ、焼き芋の中心が白っぽく硬いもの、などがあります。

見た目は似ていても、原因はまったく違います。

ここでは、それぞれの原因と、食べるかどうかの考え方をご説明します。

切ると出る白い液|ヤラピン

さつまいもを切ったときに出る白い液は、前の章でご紹介したヤラピンを含む乳液です。

日本いも類研究会は、ヤラピンは皮の近くに分布しているとしています。

この液が切り口で乾いたり、空気に触れて黒く変わったりすると、白い点や黒い点のように見えることがあります。

詳しくは、ヤラピンを解説した記事でご説明しています。

切り口の一部が白くスカスカ|「す」・空洞症

切ったさつまいもの断面に、白っぽく、スポンジのようにスカスカした部分があることがあります。

横浜市の衛生研究所が紹介している苦情の事例では、切り口の数か所に、2×3〜5×7mmほどの不定形の白い部分がありました。

顕微鏡で見ると、白い部分はすき間の多い状態で、組織が壊れ、でんぷんの粒が抜けた細胞壁が見られました。

でんぷんがあると紫色になるヨウ素デンプン反応でも、白い部分は紫色になりませんでした。

同研究所は、さつまいもの組織が壊れ、「す」の入った状態と推定しています。

畑で育つ間に起こる似た症状に、「空洞症」があります。

千葉県印旛農業事務所の普及活動の報告(令和7年度)は、内部がスポンジ状になり空洞(す)が入る症状について、空洞症の芋はでんぷんの蓄積が少なく、高温乾燥が大きな原因と考えられるとしています。

海外では、管理のよくない状態で長く貯蔵したさつまいもで、外から見て分からないまま中に小さなすき間が多くできることがある、とする資料もあります(ノースカロライナ州立大学)。

「す」や空洞の部分を食べてよいかどうかを示した資料は、当サイトでは確認できていません。

苦みや異臭、ぬめりや柔らかさがある場合は、食べないようにしましょう。

白い綿のようなもの|カビは取り除いても食べない

さつまいもの表面に、白い綿のようなものや、ふわふわしたものが付いている場合は、カビを疑ってください。

農研機構は、貯蔵中のさつまいもに起こる「軟腐病(なんぷびょう)」について、発病した芋はスポンジのように柔らかくなり、表面に白い菌糸が生えることがあるとしています。

菌糸の先に黒い胞子を含む器官ができると、黒く見えるようになります。

軽いアルコールのにおいや、酵母のようなにおいがすることも特徴です。

軟腐病の菌は、貯蔵に適した13〜14℃でも活動し、芋を腐らせるとしています。

当サイトでは、カビが生えたさつまいもは、その部分を取り除いても食べないことをおすすめします。

農林水産省は、かびが作る毒(かび毒)について、比較的熱に強く、一般的な調理では十分に減らないものがあるとしています。

また、かび毒が含まれているかどうかは見た目ではわからないこと、一度汚染されると食品から取り除くのは困難であることも説明しています。

焼き芋・蒸し芋の中が白く硬い|加熱不足と、冷やしすぎによる硬い部分

焼き芋や蒸し芋の中心が、白っぽく、硬いまま残っていることがあります。

まず考えられるのは、加熱が足りないことです。

川越いも友の会が編集した『焼き芋小百科』(日本いも類研究会のサイトに掲載)は、芋の中の温度が90℃を超えないと生煮えになるとしています。

日本いも類研究会のサイトに掲載されている「家庭での簡単焼き芋法」は、竹串がスッと刺されば焼き上がりとしています。

芋のいちばん太いところに刺してみて、硬さが残る場合は、加熱の時間を少しずつ足して様子を見ましょう。

焼き上がりの確かめ方は、焼き芋の作り方と焼き上がりの確かめ方を解説した記事でご説明しています。

十分に加熱しても硬さが残る原因のひとつとして、低温障害が知られています。

カリフォルニア大学デービス校の収穫後研究センターは、低温障害を受けた芋を加熱すると、「ハードコア」と呼ばれる状態(加熱しても硬い部分が残るものとして知られます)になることがあるとしています。

冷蔵庫に長く入れていた芋で、加熱を足しても硬い部分が残るときは、低温障害の影響が考えられます。

もともと果肉が白っぽい品種もある

なかには、もともと果肉が白っぽい品種もあります。

例えば、でんぷんの原料用に育てられているシロユタカは、肉色が「白色」とされています(鹿児島県農業開発総合センター大隅支場、農畜産業振興機構『でん粉情報』2007年11月号)。

こうした品種の白さは、変色ではありません。

一方、「白いさつまいも」として知られるきみまろこは、皮が白い品種です。

詳しくは、きみまろこの特徴を解説した記事でご紹介しています。

変色を防ぐ扱い方

変色の多くは、切ってからの扱い方や、保存の仕方で起こりにくくできます。

ここでは、切ったときの扱い、皮のむき方、生のさつまいもの保存、加熱した後の扱いの4つに分けて、資料で紹介されている方法をまとめます。

切ったら水にさらすか、すぐ加熱する

切り口の褐変を防ぐ方法として、コープこうべ商品検査センターは、水にさらして空気に触れないようにする方法と、切った後すばやく加熱して酵素の働きを止める方法を紹介しています。

農林水産省の「消費者の部屋通信」も、切った直後に水に浸けると変色の防止に有効だとしています。

ただし、同誌は、長く浸けすぎると水に溶けるビタミンCが溶け出すので注意が必要だとしています。

また、切った芋の試験ではありませんが、畑の冠水を想定して、収穫した芋を20℃の水に入れた試験では、2日で一部の芋に、加熱後に異味・異臭を伴う青緑色の変色が起きています(宮崎ほか、1993年)。

水にさらすのは、切ってから調理するまでの短い間にとどめましょう。

皮を厚めにむく

色よく仕上げたい料理では、皮を厚めにむくのもひとつの方法です。

農林水産省の「消費者の部屋通信」は、皮の下にあるリング状の筋に変色する成分が集まっているため、皮を厚めにむいてこの部分を取り除くと、色よく仕上がるとしています。

皮の黒い付着物が気になるときも、その部分を厚めにむいて調理するとよいでしょう。

ただし、表面がくぼんだ円形の黒い斑点があるものや、苦み・異臭があるものは、むいても安全のための対策にはならないため、食べないでください。

生のさつまいもは13〜15℃で、冷蔵庫と密閉を避ける

切っていない生のさつまいもは、低温障害を避けるため、13〜15℃前後を目標に、少なくとも10℃を下回らない場所で保存します(日本いも類研究会、JAなめがた甘藷部会連絡会)。

貯蔵に適した温度は資料によって少し違い、農研機構は13〜14℃としています。

冷蔵庫の野菜室は約3〜8℃で(アイリスオーヤマ。機種や設定によって違います)、低温障害が起こるとされる温度を下回っています。

ただし、10℃を超えていれば低温障害が起こらない、というわけではなく、低温障害は置かれた時間の長さにも関係します。

段ボールや発泡スチロールの箱に入れて保存するときは、密閉しないことも大切です。

日本いも類研究会は、密閉すると湿気がこもって腐敗の原因になるとしています。

保存の方法は、さつまいもの保存方法を解説した記事で詳しくご説明しています。

加熱したものは早めに食べ、冷蔵庫は清潔に

焼いたり蒸したりしたさつまいもは、常温に置くのは2時間まで(気温が32℃を超えるときは1時間まで)を目安に、食べない分は小分けにして早めに冷蔵庫に入れましょう(米国農務省食品安全検査局)。

冷蔵庫に入れた蒸し芋が緑色や青色になる変色は、冷蔵庫の中を清潔に保つことで防げるとされています(横浜市衛生研究所)。

焼いた後の扱いは、焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事でまとめています。

よくある質問

さつまいもの変色について、よくある疑問にお答えします。

食べられるかどうか、変色した部分の扱い、水にさらしたときの変化などを取り上げました。

詳しい説明は、各章もあわせてご覧ください。

Q1. 変色したさつまいもは食べられますか?

原因によって変わるため、色だけでは判断できません。

切り口の褐変やヤラピンの黒変は、成分の反応による変化と説明されていますが、低温障害や病気、カビによる変色と、見た目だけで確実に見分けることは家庭ではできません。

カビ、異臭、ぬめり、苦みなど、「食べないほうがよい状態」にあてはまるものや、判断がつかないものは食べないようにしましょう。

Q2. 変色した部分を切り取れば食べられますか?

当サイトでは、病気やカビが疑われる場合は、切り取っても安全のための対策にはならないと考えています。

皮の黒い付着物や切り口の褐変と思われる部分を、厚めにむいたり切り落としたりして調理される方もいますが、家庭で原因を確定することはできません。

表面がくぼんだ円形の黒い斑点がある場合や、苦み・異臭がある場合、判断がつかない場合は、食べないでください。

Q3. 水にさらしたのに、黒くなってしまいました

水にさらすのは、切り口を空気に触れさせないためです(コープこうべ商品検査センター)。

水から出した後に時間がたつと、切り口はふたたび空気に触れます。

また、皮の下のリング状の筋には変色する成分が集まっているとされ、切り口に残った白い乳液(ヤラピン)が黒く変わることもあります。

水にさらした後の黒ずみの原因をひとつに特定した資料は、当サイトでは確認できていません。

皮を厚めにむき、水から上げたら早めに加熱しましょう。

Q4. 水に浸けたら、水が赤紫色になりました

横浜市の衛生研究所が紹介している苦情の事例では、さつまいもを丸ごと水に浸すと、赤紫色の色素が溶け出し、アントシアン系色素が検出されました。

同研究所は、さつまいもの皮の色素が溶け出したものと考えられるとし、「体に害はありません」としています。

愛知県衛生研究所も、紫たまねぎのさらし水の着色の類似事例として、さつまいものさらし水の着色を再現しています。

Q5. 「白いさつまいも」は傷んでいるのですか?

「白いさつまいも」と呼ばれるものには、きみまろこのように皮が白い品種があります。(※きみまろこに関しましては『白いさつまいも新品種「きみまろこ」とは?』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

また、シロユタカのように、もともと果肉の色が白色とされる品種もあります。

こうした品種の白さは、変色や傷みではありません。

一方、表面に白い綿のようなものが付いている場合は、カビを疑ってください。

Q6. 干し芋の表面の白い粉はカビですか?

日本いも類研究会は、干し芋の作り方を紹介するなかで、干しあがったものをワラと交互に積み上げておくと、白い粉(麦芽糖)が浮いてくるとしています。

同じ説明のなかで、時期が早いと暖かくてカビが生えるので注意が必要だとも書いています。

白い粉とカビを見分ける方法を示した公的な資料は、当サイトでは確認できていません。

綿のようにふわふわしている、色がついている、においがおかしいといった場合は、食べないようにしましょう。

まとめ

さつまいもが変色する原因を、生のとき、加熱した後、保存中に分けて、色ごとにご説明しました。

同じ色でも原因はいくつもあり、色だけで食べられるかどうかは決められません。

要点を整理します。

  • 切ってしばらくして茶色くなるのは、ポリフェノールの褐変です。切り口の白い液は、空気に触れて黒く変わります(ヤラピン)。鉄分が原因で黒くなることもあります
  • 切った時点で中が黒い・茶色いときは、低温障害、内部褐変症、黒斑病などの病気が考えられます。当サイトでは、病気が疑われる芋は、加熱しても切り取っても安全のための対策にはならないと考えています
  • 加熱した後の黒っぽい変色には、クロロゲン酸と鉄イオンの反応や、冷やしすぎが関わることがあります
  • 緑色には少なくとも4つの仕組みがあります。重曹などのアルカリ性の材料、冷蔵庫の中のアンモニア、密封や長い水浸けによる変質、紫芋のアントシアニンです。冷蔵庫に置いていた蒸し芋などの加熱済みの芋や、密封・水浸けの後の芋が緑や青になったときは食べないでください
  • 中が白くスカスカなのは「す」や空洞症、白い綿のようなものはカビ、焼き芋の中が白く硬いのは加熱不足や低温障害が考えられます
  • 切っていない生のさつまいもは13〜15℃前後で、冷蔵庫と密閉を避けて保存します。切ったら水にさらすか、すぐ加熱しましょう
  • カビ・異臭・ぬめり・苦みがあるもの、判断がつかないものは食べないでください。サインがなくても安全とは限らないため、加熱した芋は保存の履歴で判断しましょう

黒い斑点の原因はさつまいもの黒い斑点を解説した記事、焼いた後の扱いと食中毒の注意点は焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事でご紹介しています。

参考資料

本記事の作成にあたって参照した資料です。

サツマイモに含まれている栄養素や甘くなる仕組みをご紹介します。

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