はじめに

スーパーや焼き芋店で買った焼き芋が、家に着く頃にはすっかり冷めていた、という経験のある方は多いのではないでしょうか。

食べきれずに冷蔵庫に入れておいた焼き芋を、次の日に温め直して食べることもあると思います。

焼き芋の温め直しは、電子レンジやトースターなど身近な器具でできます。

ただ、温め方によってはパサついたり、加熱しすぎて煙が出たりすることもあります。

本記事では、冷めた焼き芋や冷蔵した焼き芋の温め直し方を、器具別の時間の目安と注意点とあわせて、わかりやすくご説明したいと思います。

温め直すと甘さや香り、レジスタントスターチがどう変わるのかも、研究資料をもとに取り上げます。

冷凍した焼き芋の温め方は、別の記事で詳しくご説明しているため、ここでは要点だけをご紹介します。

焼いた後の焼き芋を何日くらい保存できるかは、焼き芋の日持ちを保存方法ごとに解説した記事でまとめています。

焼き芋の温め直しの基本|中心まで温めて、加熱しすぎない

焼き芋の温め直しは、中心まで十分に温めつつ、加熱しすぎないうちに止めるのが基本です。

温め方は器具によって違いますが、「短めの時間から始めて、様子を見ながら足す」という考え方は共通しています。

ここでは、器具ごとの違いを早見表で比べたうえで、温まったかどうかの確かめ方と、温める前にしておきたいことをご説明します。

器具別の早見表

主な器具の温め方を、表にまとめました。

時間は、レシピサイトなどで紹介されている例です。

器具 向いている場面 包むもの 時間の例 注意
電子レンジ 早く温めたいとき 紙袋・アルミホイルは外す。ラップは好みで 600Wで2分半ほど(デリッシュキッチン)、500Wで3分程度(おいも美腸研究所)。足りなければ30秒ずつ足す 加熱しすぎると発煙・発火することがある。そばを離れない
オーブントースター 皮を香ばしくしたいとき アルミホイル(ヒーターに触れさせない)。紙で包まない ホイルで包み、低温で5〜6分ほど(デリッシュキッチン、おいも美腸研究所) 焦げやすい。そばを離れない
電子レンジ+トースター 早く温めて、皮も香ばしくしたいとき 電子レンジでラップを使ったら、外してからトースターへ 600Wで2分半ほど温め、トースターの高温で表面を1〜2分(デリッシュキッチン) 上の2つの注意をどちらも守る
オーブン 何本かまとめて温めたいとき アルミホイル 予熱なしの180℃で10分ほど焼き、庫内に10分ほど置く(デリッシュキッチン) オーブンレンジのレンジ機能では、ホイルを使わない
魚焼きグリル トースターがないとき アルミホイル 弱火で10分ほど。片面焼きは途中で裏返す(デリッシュキッチン、おいも美腸研究所) 使い方は機種によって違う。取扱説明書に従う
フライパン・蒸し器 しっとり温めたいとき フライパンはふたをして少量の水を入れる 芋の太さで変わる フライパンは空焚きに注意

表の時間は、芋の重さや太さが書かれていない例です。

芋の大きさや、冷蔵庫から出したばかりかどうかで、必要な時間は変わります。

時間はあくまで出発点と考え、次にご紹介する方法で温まり具合を確かめてください。

温まったかの確かめ方|中心は75℃以上が目安

焼き芋は、外側が熱くても、中心はまだ冷たいことがあります。

厚生労働省は、残った食品を温め直すときも十分に加熱するよう呼びかけ、その目安を75℃以上としています。

料理用の温度計がある場合は、芋のいちばん太いところの中心に差して確かめましょう。

米国農務省は、電子レンジには温まりにくい場所があるため、少し置いてから、食品温度計で何か所かの温度を確かめるよう勧めています。

温度計がない場合は、太いところを半分に割って、中まで熱くなっているかを見るのがひとつの方法です。

ただし、この方法では温度までは分からないため、ぬるいと感じたら加熱を少しずつ足してください。

温める前に、紙袋・ホイル・トレーを外す

買ってきた焼き芋は、紙袋やアルミホイル、トレーに入っていることがあります。

温める前に、これらは外しておきましょう。

製品評価技術基盤機構(NITE)は、電子レンジで紙皿などの紙製品を加熱すると発火するおそれがあり、アルミニウムなどの金属を含む容器は火花(スパーク)が出るおそれがあるとしています。

東京消防庁も、電子レンジで使えない包装ごと加熱して起きた火災があるとして、加熱の前に包装の表示を確かめるよう呼びかけています。

トースターでも、硫酸紙やクッキングシートを使わないよう取扱説明書で求めている機種があります(パナソニック、日立、ビタントニオ)。

アイリスオーヤマのオーブントースター(EOT-012)の取扱説明書は、紙やプラスチック製のトレー・容器を入れないよう求めています。

焼き芋が入っていた紙袋やトレーのまま、トースターに入れるのはやめましょう。

電子レンジでの温め直し|何分・何W?

電子レンジは、冷めた焼き芋を手早く温められる器具です。

一方で、温めすぎると水分が飛んでパサつきやすく、さらに加熱を続けると発煙や発火につながることもあります。

ここでは、手順とラップの使い方、時間の決め方、加熱しすぎないための注意を順にご説明します。

手順と、ラップをする・しないの違い

電子レンジでの温め直しは、次の手順が基本です。

  1. 紙袋やアルミホイル、トレーを外し、耐熱の皿にのせる
  2. ラップをするかどうかを決める(下の説明を参考に)
  3. 早見表の時間を目安に、それより少し短めに設定して温める
  4. 途中か加熱の後に上下を返し、温まり具合を確かめる
  5. 足りなければ、30秒ずつ足す

ラップをするかどうかは、レシピによって勧め方が分かれています。

デリッシュキッチンやおいも美腸研究所は、ラップをせずに温める方法を紹介し、ラップで包むと水っぽい仕上がりになるとしています。

一方で、焼き芋の販売店のブログ(紅茶房)は、ラップで包んで500Wで1〜2分温める方法を紹介しています。

米国農務省は、残った食品を電子レンジで温め直すときは、覆いをして食品を回し、ムラなく温めるよう勧めています。

どちらにするかは、仕上がりの好みで選んでかまいません。

ラップをしない場合は、途中で上下を返して、温まり方のムラを減らしましょう。

ラップをした場合は、蒸気でやけどをしないよう、向こう側からつまんで手前に引くように開けてください(旭化成ホームプロダクツ)。

なお、電子レンジでは、アルミホイルで包んだまま温めないでください。

国民生活センターは、電子レンジ加熱では原則として金属類は使えないとしています。

時間は重さと出力で変わる|短めから30秒ずつ

電子レンジの加熱時間は、芋の重さと電子レンジの出力で大きく変わります。

早見表でご紹介した「600Wで2分半ほど」「500Wで3分程度」という例は、どちらも芋の重さが書かれていません。

小さめの芋や細い芋なら、これより短い時間で温まることがあります。

冷蔵庫から出したばかりの芋は、常温で冷めた芋より冷たい分、時間がかかります。

最初から長めに設定するのではなく、短めの時間で一度止め、温まり具合を見ながら30秒ずつ足していくのが、失敗しにくい方法です。

複数の芋を一度に温めるときは、大きさをそろえるか、小さい芋を先に取り出しましょう。

電子レンジで温め直すときの考え方は、電子レンジで焼き芋を作る方法を解説した記事でも詳しくご説明しています。

加熱しすぎると、火が出ることがある

焼き芋を電子レンジで加熱しすぎると、焦げて煙が出たり、火が出たりすることがあります。

東京消防庁が2017年度(平成29年度)に行った再現実験では、出力700Wで加熱した焼き芋(120g)が、6分26秒で出火しています。

これは実験の条件で火が出るまでにかかった時間で、これより短ければ安全という目安ではありません。

芋の量や状態、機種や出力が違えば、煙や火が出るまでの時間も変わります。

東京消防庁によると、2022年(12月5日時点)に管内で電子レンジから出火した火災の食材では、いも類が最も多く、繰り返し加熱するなどして出火していました。

さつまいもを700Wで3分加熱した後、もう一度15分加熱して火が出た例も報告されています。

東京都も、さつまいもなどの水分の少ない根菜類を加熱しすぎると、煙や火が出ることがあると注意を呼びかけています。

焼いたさつまいも(皮なし)の水分は100gあたり58.1gで、生(65.6g)より少なくなっています(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)。

焼き芋は焼く段階で水分が抜けているため、温め直しでも加熱のしすぎには気をつけたいところです。

加熱中はその場を離れず、様子を見ながら温めてください。

万一、庫内で煙や火が出たときは、扉を開けないでください。

国民生活センターは、動作を停止させて電源プラグを抜き、扉を開けずに煙や火が収まるのを待つよう呼びかけています。

東京消防庁は、扉を開けずに電源を遮断して、119番通報するよう呼びかけています。

トースター・オーブン・魚焼きグリルでの温め直し|皮を香ばしく

トースターやオーブン、魚焼きグリルは、電子レンジより時間はかかりますが、皮を香ばしく仕上げやすい器具です。

どの器具もアルミホイルを使うことが多いため、ホイルの扱い方に気をつける必要があります。

ここでは器具ごとに、温め方と注意点をご説明します。

トースター|ホイルで包み、ヒーターに触れさせない

トースターで温め直すときは、焼き芋をアルミホイルで包んでから温める方法が紹介されています。

デリッシュキッチンやおいも美腸研究所は、ホイルで包み、低温にしたトースターで5〜6分ほど温めるとしています。

表面だけが先に焦げやすいので、短めの時間から様子を見てください。

ホイルが、トースターのヒーターに触れないように気をつけます。

パナソニックの取扱説明書は、ホイルがヒーターに触れると溶けて付着し、故障の原因になるとしています。

焼き芋の温め方として、濡らしたキッチンペーパーで包んでからホイルで覆う方法を紹介している記事もあります。

しかし、トースターの取扱説明書には、硫酸紙やクッキングシートを使わないよう求めている機種があります(パナソニック、日立、ビタントニオ)。

当サイトでは、トースターでキッチンペーパーを使ってよいとするメーカーの資料を確認できなかったため、この方法はおすすめしていません。

トースターを使っている間は、そばを離れないようにしましょう。

トースターの使い方や注意点は、トースターで焼き芋を作る方法を解説した記事で詳しくご説明しています。

電子レンジで温めてから、トースターで仕上げる

中までの温めを電子レンジで済ませ、仕上げにトースターで表面を焼く方法もあります。

デリッシュキッチンは、ラップをせずに600Wの電子レンジで2分半ほど温めた後、トースターの高温で表面を1〜2分焼く方法を紹介しています。

電子レンジでラップを使った場合は、トースターに移す前に、ラップを外してください。

ラップやキッチンペーパーは、つけたままトースターに入れないでください。

トースターでは表面を焼くだけなので、焦げないうちに取り出しましょう。

オーブン|何本かまとめて温めるとき

オーブンは、温め終わるまで時間がかかりますが、何本かまとめて温めるときに便利です。

デリッシュキッチンは、焼き芋をアルミホイルで包み、予熱なしの180℃で10分ほど焼いた後、そのまま庫内に10分ほど置く方法を紹介しています。

取り出したら、中心まで温まったかを確かめ、足りなければ加熱を足してください。

電子レンジ機能のついたオーブンレンジでは、注意が必要です。

国民生活センターは、オーブンレンジでは、同じ機器でも、電子レンジ加熱をするのかオーブン加熱をするのかによって、使える容器が変わるとしています。

アルミホイルのような金属は、電子レンジ加熱では原則として使えません(同)。

ホイルで包んだ芋は、「レンジ」ではなく「オーブン」の機能で温めましょう。

オーブンの使い方は、オーブンで焼き芋を作る方法を解説した記事でご紹介しています。

魚焼きグリル|機種の取扱説明書に従う

魚焼きグリルでも、焼き芋を温め直せます。

デリッシュキッチンやおいも美腸研究所は、アルミホイルで包んで弱火で10分ほど温め、片面焼きのグリルでは途中で裏返す方法を紹介しています。

ただし、魚焼きグリルは機種によって火力や使い方が大きく違います。

ホイルを使ってよいかどうかや置き方は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

グリルの受け皿や庫内に食品かすや油脂が残っていると、過熱されて発火するおそれがあるため、使った後はこまめに掃除しましょう(NITE)。

フライパン・蒸し器での温め直し|しっとり仕上げたいとき

フライパンや蒸し器は、蒸気で温めるため、しっとり仕上げたいときの方法として紹介されています。

電子レンジやトースターがないときにも使える方法です。

ここでは、それぞれの温め方と、気をつけたい点をご紹介します。

フライパン|ふたをして、少量の水で蒸し焼きにする

フライパンで温め直す場合は、少量の水を入れ、ふたをして蒸し焼きにする方法が紹介されています(紅茶房)。

芋が太い場合は、半分に切ると中まで温まりやすくなります。

加熱中は、水がなくならないように気をつけてください。

途中で水がなくなると、空焚きの状態になります。

フッ素樹脂加工のフライパンについて、メーカーは空焚きをしないよう注意しています(ビタクラフト、和平フレイズ)。

ときどきふたを開けて、水が残っているかを確かめましょう。

蒸し器・せいろ|しっとり温めたいとき

蒸し器やせいろを使う場合は、湯を沸かして蒸気が上がってから芋を入れ、中まで温まるまで蒸します。

焼き芋の販売店のブログ(紅茶房)は、強火で5〜8分としています。

芋の太さで時間は変わるので、割って中まで熱いかを確かめてください。

蒸し器の扱い方は、さつまいもの蒸し方・ふかし方を解説した記事でまとめています。

冷蔵・冷凍した焼き芋、買ってきた焼き芋の温め直し

同じ焼き芋でも、どう保存していたか、どこで買ったかによって、温め直すときに気をつけることが変わります。

ここでは、冷蔵した焼き芋、冷凍した焼き芋、買ってきた焼き芋に分けてご説明します。

あわせて、温め直しについて知っておきたい大切な前提もお伝えします。

冷蔵した焼き芋|冷たい分だけ時間を足し、中心まで

冷蔵庫で保存していた焼き芋は、冷めた常温の芋より中まで冷えているため、温め直しに時間がかかります。

電子レンジでもトースターでも、早見表の時間で一度止め、中心まで温まったかを確かめてから時間を足してください。

太い芋は、半分に切ってから温めると、中まで温まりやすくなります。

米国農務省は、調理した食品の残りを冷蔵庫で保存できる日数を3〜4日としています。

一方、世界保健機関(WHO)の資料(日本語版)は、食べ残した物は冷蔵庫でも3日以上保存しないよう呼びかけています。

資料によって幅があるため、できるだけ早めに食べきり、迷ったときは短いほうを目安にしてください。

温め直すのは食べる分だけにし、温めた焼き芋が残っても、もう一度冷蔵庫に戻すのはやめましょう。

同じ WHO の資料は、食べ残した物は1度加熱したら、再度保管しないよう呼びかけています。

冷蔵するときの手順や日持ちの目安は、焼き芋の日持ちを保存方法ごとに解説した記事で詳しくご説明しています。

冷凍した焼き芋|詳しくは解凍の記事へ

冷凍した焼き芋は、凍ったまま電子レンジやオーブンで温める方法や、冷蔵庫で解凍してから温める方法があります。

器具ごとの手順は、冷凍焼き芋の解凍方法を解説した記事でご説明しています。

市販の冷凍焼き芋は、パッケージに書かれた温め方に従ってください。

厚生労働省は、冷凍食品などについて、料理に使う分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さないよう呼びかけています。

冷凍や解凍を繰り返すと、食中毒菌が増殖したりする場合もあるためです。

冷凍した焼き芋も、食べる分だけを取り出して温めましょう。

スーパーや焼き芋店で買った焼き芋

買ってきた焼き芋は、まずパックなどの表示を確かめてください。

消費期限や保存方法が書かれている場合は、その表示に従います。

保温器で温かいまま売られていた焼き芋は、保温器から出して(買って)から2時間までを目安にします。

気温が32℃を超えるときは、1時間までです。

米国農務省は、傷みやすい食品は2時間以内(気温が32℃を超えるときは1時間以内)に冷蔵するよう示しており、保温する機器から出した食品も、出してから2時間以内に冷蔵庫へ入れるよう求めています。

すぐに食べない分は、袋から出して熱と湿気を逃がし、早めに冷蔵庫へ入れましょう。

持ち帰る途中に時間がかかったときは、その時間も数えに入れてください。

冷めた状態で常温の棚に並んでいた焼き芋は、いつ焼かれたものかが分からないことがあります。

表示やお店の案内で、焼いた日時を確かめましょう。

温め直しは、安全にする方法ではない

焼き芋の温め直しで、いちばん知っておきたいことがあります。

それは、温め直しは「傷んだ焼き芋を安全にする方法」ではないということです。

食中毒の原因になる菌の中には、増えるときに熱に強い毒素を作るものがいます。

食品安全委員会によると、セレウス菌が作る嘔吐毒(おうとどく)は、126℃で90分加熱しても失活しないとされています。

一度作られた毒素は、温め直しても消えません。

厚生労働省は、時間が経ちすぎたものは思い切って捨て、少しでも怪しいと思ったら口に入れずに捨てるよう呼びかけています。

常温に長く置いた焼き芋や、日持ちの目安を過ぎた焼き芋は、温め直さずに処分してください。

焼き芋の食中毒については、焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事で詳しくご説明しています。

温め直すと、甘さ・香り・食感・レジスタントスターチはどうなる?

温め直した焼き芋は、焼きたてと同じようにおいしく戻るのでしょうか。

ここでは、甘さ・香り・食感・レジスタントスターチの4つについて、研究資料で確かめられていることと、確かめられていないことを分けてご紹介します。

「温め直すと甘くなる」「冷めるとレジスタントスターチが増える」といった話を見かけたときの参考にしてください。

甘さ|温め直して糖が増えることを示す資料は見つからない

焼き芋が甘くなるのは、焼いている途中で、β-アミラーゼという酵素が糊化(こか:でんぷんが加熱で水を含み、やわらかく変化すること)したでんぷんを分解し、麦芽糖を作るためです。

いも類振興情報136号によると、この酵素は温度が50℃より高くなるにつれて働きが落ち、75〜80℃に達するとほとんど働かなくなるとされています。

『焼き芋小百科』(2005年)は、芋の中の温度が90℃を超えないと生煮えになるとしています。

しっかり焼き上がった焼き芋は、多くの場合、酵素がほとんど働かなくなる温度を超えて加熱されていると考えられます。

温め直しで麦芽糖が新たに増えることを示した資料は、当サイトでは確認できていません。

一方で、甘さの感じ方は、食べるときの温度にも左右される可能性があります。

マウスの味神経を調べた研究では、15〜35℃の範囲で、温度が高いほど甘味への反応が強くなっていました(Talavera ほか、Nature、2005年)。

論文は、甘味の受容に関わる TRPM5 というたんぱく質の温度による変化が、人で温度が高いほど甘く感じやすいとされる現象に関わっている可能性を示しています。

ただし、焼き芋を温め直す前と後で、甘さの感じ方を比べた研究ではありません。

香り|一度冷えると、温め直しても戻りにくいとされる

焼きたての焼き芋には、香ばしい香りがあります。

日本いも類研究会のサイトに掲載されている、永浜伴紀氏(鹿児島大学名誉教授)の「焼きいもの香り」によると、焼き芋は一度冷えると、温め直しても香りが再現しにくいとされています。

香りの成分を分析すると、成分のパターンが単調になり、バランスがくずれていたそうです。

この文章が書かれた2005年の時点では、その理由は未解明の課題とされていました。

焼きたての香りを楽しみたいときは、食べる分だけを焼いて、温かいうちに食べるのがおすすめです。

食感|でんぷんの「老化」が関わると考えられる

冷めた焼き芋が、焼きたてより硬く感じられることがあります。

その理由のひとつとして考えられるのが、でんぷんの「老化(ろうか)」です。

農畜産業振興機構の広報誌は、糊化したでんぷんは時間が経って温度が下がると、再び結晶のように固くまとまり、硬さやパサつきが出てくると説明しています。

冷めたご飯が硬くなるのも、この老化によるものです。

同機構のサイトに掲載された解説は、水が凍らない程度の低い温度が最も老化しやすいと考えられ、水分は50〜60%のときに最も老化しやすいと言われている、としています。

焼いたさつまいも(皮なし)の水分は、100gあたり58.1gです(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)。

ただし同じ解説は、糖質には老化を抑える働きがあるともしています。

焼き芋は、焼く途中でできた麦芽糖などの糖を含むため、冷めたご飯と同じように考えてよいとは限りません。

焼き芋で老化の進み方を調べた資料や、温め直しで食感がどこまで焼きたてに近づくかを調べた資料は、当サイトでは見つけられませんでした。

レジスタントスターチ|焼いた芋の研究では、温め直しの前後ではっきりした差はなかった

レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)は、健康な人の小腸で消化・吸収されないでんぷんと、その分解物のことです。

種類のひとつに、調理後に再結晶した老化でんぷんがあります(宮城教育大学紀要 第53巻)。

そのため、「冷やすと増え、温め直すと減る」と紹介されることがあります。

焼いたさつまいもで、冷蔵後と温め直した後の量を測った研究に、亀井文氏・高橋遥氏の「さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化」(宮城教育大学紀要 第53巻)があります。

この研究では、皮をむいて厚さ2cm・直径約4cmに切りそろえたなると金時をオーブンで焼き、24時間冷蔵した後、電子レンジ(500W・40秒、ラップあり)で温め直して量を比べています。

焼いた芋のレジスタントスターチの量は、冷蔵後に増える傾向がみられたものの、冷蔵後も、温め直した後も、統計的にはっきりした変化はありませんでした。

蒸した芋は温め直した後に減り、茹でた芋は減らなかったと報告されています。

いずれも小さく切った芋の結果で、丸ごとの焼き芋を温め直したときのデータは、当サイトでは見つけられませんでした。

レジスタントスターチが体にどう働くかは、当サイトでは取り上げていません。

持病や食事制限のある方は、医師・管理栄養士にご相談ください。

冷やした焼き芋とレジスタントスターチの関係は、冷やし焼き芋を解説した記事でも詳しくご紹介しています。

よくある質問

焼き芋の温め直しについて、よく検索されている疑問にお答えします。

次の日に食べられるか、何回まで温め直せるか、紙袋のまま温めてよいかなど、迷いやすい点を取り上げました。

本文で詳しくご説明した内容は、要点だけをまとめています。

Q1. 焼き芋は次の日も温め直して食べられますか?

焼いてから2時間以内(気温が32℃を超えるときは1時間以内)に冷蔵庫に入れた焼き芋であれば、次の日に温め直して食べられます。

冷蔵での日持ちは、3〜4日とする資料(米国農務省)と、3日以上置かないとする資料(WHO)があるため、できるだけ早めに食べきりましょう。

常温のままひと晩置いた焼き芋は、温め直さずに処分してください。

Q2. 焼き芋は何回まで温め直せますか?

世界保健機関(WHO)の資料(日本語版)は、食べ残した物は、1度加熱したら再度保管しないよう呼びかけています。

温め直すのは、その場で食べる分だけにしましょう。

温め直しをくり返すと、そのたびに常温に置く時間が重なり、乾燥も進みます。

東京消防庁によると、電子レンジで出火した例には、いも類を繰り返し加熱したものがありました。

食べる分だけを切り分けて温め、残りは冷蔵庫に入れたままにしておきましょう。

Q3. 買ってきた紙袋のまま温めてもいいですか?

紙袋のまま温めるのは避けてください。

電子レンジでは紙製品が発火するおそれがあり(NITE)、トースターでは紙を使わないよう取扱説明書で求めている機種があります。

アルミホイルも、電子レンジで温める前に外しましょう。

Q4. 電子レンジとトースター、どちらがいいですか?

早く温めたいなら電子レンジ、皮を香ばしくしたいならトースターが向いていると考えられます。

両方のよいところを取りたい場合は、電子レンジで中まで温めてから、トースターで表面を焼く方法もあります。

その場合は、トースターに移す前にラップを外してください。

Q5. 温め直したらパサパサになりました。どうすればいいですか?

加熱しすぎて水分が飛ぶと、パサついた食感になりやすくなります。

次に温めるときは、短めの時間から様子を見て、少しずつ足してみてください。

余った焼き芋を、ポタージュなどの料理に使うアレンジレシピも紹介されています(デリッシュキッチン)。

Q6. ねっとりした食感に温め直せますか?

温め直すことで、ねっとり感が増すことを示した資料は、当サイトでは確認できていません。

ねっとりした食感には、加熱中に麦芽糖が多くでき、でんぷんが大きく減ることが関わると説明されています(いも類振興情報136号。主に蒸した芋の研究)。

しっとり仕上げたいときは、少量の水を入れたふたつきのフライパンで蒸し焼きにする方法が紹介されています(紅茶房)。

Q7. 焼き芋を温かいまま保温しておいてもいいですか?

厚生労働省は、温かく食べる料理は65℃以上を目安にするよう示しています。

家庭でこの温度を保ち続けるのは難しいため、保温しておくより、食べる分だけを、そのつど温め直すほうが安心です。

炊飯器の保温機能で焼き芋を置いておく方法も見かけますが、当サイトではおすすめしていません。

炊飯器のメーカーは、取扱説明書に記載した用途以外に使わないよう求めています(パナソニック、タイガー魔法瓶の取扱説明書)。

タイガー魔法瓶の取扱説明書は、白米(無洗米)以外の保温をしないよう求めています。

Q8. 冷やし焼き芋を温め直すと、レジスタントスターチは減りますか?

焼いた芋を調べた研究(亀井氏ら、宮城教育大学紀要 第53巻)では、電子レンジで温め直した後も、統計的にはっきりした変化はありませんでした。

ただし、小さく切った芋での結果で、丸ごとの焼き芋のデータは見つけられませんでした。

まとめ

焼き芋の温め直しは、身近な器具で手軽にできます。

一方で、加熱のしすぎや、包装を外し忘れることによる事故、常温に置いた芋の扱いには気をつける必要があります。

本記事のポイントを整理します。

  • 焼き芋の温め直しは、中心まで十分に温めつつ、加熱しすぎないうちに止めるのが基本です。厚生労働省は、温め直しの目安を75℃以上としています
  • 温める前に、紙袋・アルミホイル・トレーを外しましょう。電子レンジでラップを使ったら、トースターに移す前に外します
  • 電子レンジは短めの時間から始め、30秒ずつ足していきます。加熱しすぎると発火することがあるので、そばを離れないでください
  • トースターではホイルで包み、ヒーターに触れさせないようにします。濡らしたキッチンペーパーなど紙で包む方法は、当サイトではおすすめしていません
  • 冷蔵した焼き芋は、できるだけ早めに食べきりましょう。温め直すのは食べる分だけにし、温めた残りを再び保存しないようにします
  • 温め直しは、傷んだ焼き芋を安全にする方法ではありません。常温に長く置いたものは、温め直さずに処分しましょう
  • 温め直して糖が増えることを示した資料は見つかっていません。香りは一度冷えると戻りにくいとされています

焼いた後の保存は焼き芋の日持ちを保存方法ごとに解説した記事、家で焼き芋を作る方法は家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でまとめています。

あわせてご覧ください。

参考資料

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