さつまいもは、電子レンジを使えば、オーブンよりずっと短い時間で火を通せます。オーブンやトースターを出さずに済むので、忙しい日のおやつや朝ごはんに便利です。
一方で、電子レンジで作ると焼き芋ほど甘くならない、と感じたことがある方もいるかもしれません。これには理由があり、焼いた芋と電子レンジで加熱した芋を比べた研究でも、電子レンジで加熱した芋のほうが糖が少なかったと報告されています。
本記事では、電子レンジで焼き芋風の芋やふかし芋を作る手順と時間の目安について、わかりやすくご説明したいと思います。あわせて、甘くなりにくい理由と少しでも甘くするコツ、加熱しすぎによる発火を防ぐための注意点もまとめました。
オーブンやトースターなど、ほかの器具での焼き芋の作り方は、家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でまとめています。
電子レンジで焼き芋・ふかし芋は作れる?|結論と時間の目安
電子レンジで焼き芋風の芋やふかし芋は作れますが、焼き芋らしい甘さは出にくくなります。甘さを重視するなら、200Wなどの弱い出力に切り替えて時間をかける方法が、メーカーなどのレシピで紹介されています。ただし、加熱しすぎるとさつまいもが発煙・発火することがあります。まずは、作れる仕上がりの種類と、時間の目安から見ていきましょう。
電子レンジで作れるのは「焼き芋風」と「ふかし芋」の2通り
電子レンジで作るさつまいもは、加熱の仕方によって大きく2つに分けられます。
- 焼き芋風:濡らしたキッチンペーパーとラップで包み、600Wで短く加熱したあと、200Wなどの弱い出力で時間をかけて火を通します。甘さを引き出すことを狙った方法です
- ふかし芋:ラップで包み、500〜600Wで数分加熱して火を通します。手早く作れて、料理の下ごしらえにも使いやすい方法です
どちらも、オーブンのように芋を外側から焼くわけではありません。川越いも友の会編『焼き芋小百科』は、電子レンジの加熱を「マイクロ波という電磁波により、イモ内部の水分子を振動させて急速に加熱する」と説明しています。「焼き芋風」は仕上がりを表す呼び名で、本来の焼き芋とは加熱の仕方が違います。
また、ふかし芋は本来、蒸し器などで蒸したものを指します。この記事では、電子レンジで短時間で火を通したものを「ふかし芋」と呼んでご説明します。焼き芋とふかし芋の違いは、焼き芋とふかし芋の違いを解説した記事でご紹介しています。
時間の目安早見表|何Wで何分?メーカーなどのレシピの例
メーカーなどが公開しているレシピの例を、芋の重さや包み方とあわせてまとめました。時間は、それぞれのレシピが示した条件での目安です。
| 仕上がり(出典) | 芋 | 包み方 | 出力と時間 | 火が通っていないとき |
|---|---|---|---|---|
| 焼き芋風(ニチレイフーズ) | 約300g | 濡れたままキッチンペーパーで包み、その上からラップ | 600Wで1分30秒 → 200W(なければ解凍モード※)で8〜10分 | 200Wで30秒ずつ追加 |
| 同上・小さめの芋 | 200g程度 | 同上 | 600Wで1分 → 200Wで8分程度 | 同上 |
| 焼き芋風(JAグループ) | 1本(重さの記載なし) | クッキングシートで包み、耐熱皿にのせてラップ | 600Wで1分30秒 → 解凍モード※で20〜25分 | 柔らかくなるまで加熱 |
| ふかし芋(パナソニック) | 約200g | ラップで直接包み、耐熱性の平皿にのせる | 500Wで4分30秒〜6分、または600Wで4〜5分。加熱後に約5分蒸らす | 様子を見ながら約30秒ずつ追加 |
※解凍モードの仕組みは、機種によって違います。食品の重さをセンサーで検知して加熱時間を自動で決める解凍もあり、レシピが想定する「弱い出力で○分」の加熱と同じになるとは限りません。200Wがないときは、まず手動で弱い出力を選べるかを取扱説明書で確かめてください。JAグループのレシピは、使った機種や解凍時の出力を示していません。20〜25分という時間が、そのまま自宅の機種に当てはまるとは限らない点にご注意ください。
焼き芋風のレシピでも、弱い出力で加熱する時間は8〜10分から20〜25分まで幅があります。機種や芋の太さによって必要な時間は変わるため、表の時間どおりに仕上がるとは限りません。どのレシピも、最後は竹串が中心まで通るかどうかで確かめます。加熱の時間が長い手順ほど、途中で様子を見られるよう、その場を離れないようにしてください。
表の時間は目安。重さを量り、短めから様子を見る
表のうち、芋の重さが書かれているレシピ(ニチレイフーズ・パナソニック)を使うときは、加熱の前にキッチンスケールで芋の重さを量り、近い重さの例を選ぶと目安にしやすくなります。ニチレイフーズのレシピも、小さい芋は加熱時間を短くするよう案内しています。重さや解凍時の出力が書かれていないレシピ(JAグループ)の時間は、そのまま自宅の芋や機種に当てはめず、短めから様子を見てください。1本あたりの重さの目安は、さつまいものサイズと重さを解説した記事でご紹介しています。
国民生活センターは、分量やサイズが違うなど加熱の判断が難しい場合は、加熱時間を控えめに設定し、様子を見ながら加熱するよう呼びかけています。足りない分をあとから少しずつ足すほうが、加熱しすぎを防げます。
電子レンジで焼き芋・ふかし芋を作る手順
ここでは、早見表のレシピをもとに、焼き芋風とふかし芋の作り方を順にご説明します。どちらも、家にある道具で作れます。電子レンジの出力の段階は機種によって違うため、200Wがない場合の考え方と、皮を香ばしくしたいときの仕上げ方もあわせてご紹介します。
準備するものと、芋の選び方
準備するものは次のとおりです。
- さつまいも1本(重さを量っておく)
- キッチンペーパー(焼き芋風の場合)
- ラップ
- 耐熱性の皿
- 竹串
芋は、細長いものを選ぶと、中が硬く残る失敗を防ぎやすいとされています(パナソニック)。ニチレイフーズのレシピは、大きい芋は300gくらいになるように切るよう案内しています。皮を食べるかどうかにかかわらず、表面の土は水できれいに洗い落としてください。
焼き芋風の手順|濡らしたペーパーとラップで包み、弱い出力で時間をかける
甘さを重視するときの手順です。ニチレイフーズのレシピ(約300gの芋1本)をもとにご紹介します。
- さつまいもを水で洗い、濡れたままキッチンペーパーで包みます
- キッチンペーパーの上から、ラップで包みます
- 600Wで1分30秒加熱します(200g程度の小さめの芋なら1分)
- 続けて、200Wで8〜10分加熱します(小さめの芋なら8分程度)。200Wがない機種では、手動で選べる200Wに近い弱い出力を使います。レシピでは「解凍モードでもよい」とされていますが、自動で時間を決める解凍は、この手順と同じ加熱にならないことがあります(詳しくは下の「200Wがない・『解凍』しかない・500Wや700Wの機種のとき」でご説明します)
- 竹串を刺して、中心まで通るかを確かめます。硬ければ、200Wで30秒ずつ追加で加熱します
ラップは、芋との間に少し余裕をもたせて包むのがコツです。サランラップを販売する旭化成は、食品を直接包むときは余裕をもたせ、電子レンジの取扱説明書に従って使うよう案内しています。加熱中はその場を離れず、焦げたにおいや煙に気づいたら、すぐに加熱を止めてください。
ふかし芋の手順|さつまいも1本(約200g)はレンジで何分?
手早く火を通したいときや、料理に使うときの手順です。パナソニックが紹介している方法(約200gの芋1本)をもとにご説明します。
- さつまいもの表面の土を、きれいに洗い流します
- ラップで直接包みます
- 耐熱性の平皿にのせ、500Wなら4分30秒〜6分、600Wなら4〜5分加熱します
- 加熱ムラを抑えるため、加熱後に約5分蒸らします
- いちばん太い部分に竹串を刺し、抵抗なく中心まで通れば完成です。芯が残っているようなら、様子を見ながら約30秒ずつ追加で加熱します
パナソニックは、ラップで包むことで芋の水分を外に逃がさずに加熱できると説明しています。甘さよりも手早さを優先した方法で、料理の下ごしらえにも使いやすいのが特徴です。
200Wがない・「解凍」しかない・500Wや700Wの機種のとき
電子レンジの出力の段階は、機種によって違います。レシピと同じ出力がないときは、次のように考えてください。
- 200Wがないとき:手動で選べる弱い出力を、取扱説明書で確かめます。例えば、パナソニックのスチームオーブンレンジ NE-W302 の手動のレンジ出力は、700W・600W・500W・300W・150Wで、200Wはありません(取扱説明書)。このような機種では、200Wに近い弱い出力を選び、竹串で確かめながら時間を調整します
- 「解凍」しかないとき:レシピでは「200Wがなければ解凍モードで」と紹介されることがあります。ただし、解凍の仕組みは機種によって違います。シャープのQ&Aには、自動の解凍を「食品の重さをセンサーが検知して、加熱時間が決まるしくみ」と説明しているものがあります。このような自動の解凍は、レシピが想定している「弱い出力で○分」という加熱とは仕組みが違います。手動で弱い出力を選べるか、取扱説明書で確認してください
- 500Wや700Wの機種のとき:パナソニックは、加熱時間を「表示されたワット数×表示された時間÷使用する電子レンジのワット数」で換算できると説明しています。例えば「600Wで4分」なら、500Wでは約4分48秒、700Wでは約3分26秒が目安です
火が通ったかは竹串で。足りなければ30秒ずつ
加熱が終わったら、芋のいちばん太い部分に竹串を刺し、抵抗なく中心まで通るかを確かめます。硬さが残っていたら、30秒ずつ追加で加熱し、そのつど確かめてください。一度に長く追加すると、加熱しすぎにつながります。
加熱後のラップの内側には、熱い蒸気がたまっています。旭化成も、電子レンジで加熱した後は蒸気でやけどをするおそれがあると注意を呼びかけています。顔や手を近づけすぎないようにして、ラップの端からゆっくり開けてください。
皮を香ばしくしたいなら、トースターで仕上げる
皮をパリッと香ばしくしたいときは、仕上げに別の器具を使う方法もあります。
電子レンジで中まで火を通したら、ラップとキッチンペーパーをすべて外します。ラップの内側には熱い蒸気がたまっているので、端からゆっくり開けてください。そのあと芋をオーブントースターに移し、焼き色がつくまで様子を見ながら表面を焼いて仕上げます。ラップやキッチンペーパーは、つけたままトースターに入れないでください。トースターでアルミホイルを使う場合は、ヒーターに触れないようにするなど、お使いの機種の取扱説明書に従ってください。
ただし、トースターで仕上げると甘さが増すことを示した資料は、当サイトでは確認できていません。香ばしさや食感を好みに近づけるための工夫と考えてください。
電子レンジだと焼き芋が甘くなりにくい理由|芋の中の温度が一気に上がる
電子レンジで作った芋が焼き芋ほど甘くならないのは、芋の中の温度が短い時間で上がり、甘さのもとになる麦芽糖が作られる時間が短くなるためと説明されています。ここでは、焼き芋が甘くなる仕組みから順にご説明します。研究で分かっていることと、その実験の条件もあわせてご紹介します。
焼き芋の甘さには、加熱中にできる麦芽糖が関わる
焼き芋の甘さのもとのひとつは、加熱している間にできる麦芽糖(マルトース)です。その仕組みから見ていきましょう。
さつまいもを加熱すると、でんぷんが糊化(こか:でんぷんが加熱によって水を含み、やわらかく変化すること)します。そこに、芋にもともと含まれるβ-アミラーゼ(でんぷんを分解する酵素)が働くと、麦芽糖ができます(いも類振興情報136号)。
いも類振興情報136号は、一般的な品種で麦芽糖が盛んに作られる温度域について、「極論すれば」と前置きしたうえで「70~75℃の狭い範囲に限られる」と説明しています。一方で、β-アミラーゼは50℃より高くなるにつれて働きが落ち、75〜80℃に達するとほとんど働かなくなるとされています(同)。つまり一般的な品種では、芋の中が70〜75℃前後の温度帯を長く通るほど、麦芽糖が作られやすいということです。この温度帯は、品種や条件によって違います。
なお、焼き芋の甘さには、収穫後の貯蔵中に増えるショ糖などの糖も関わっています(後の「コツ」の章でご説明します)。温度と甘さの関係は、家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でも詳しくご説明しています。
電子レンジは芋の中まで一気に温め、甘くなる温度帯を短く通り過ぎる
器具によって、芋の中の温度の上がり方は違います。ここが、電子レンジで甘くなりにくい理由の中心です。
オーブンや焼き芋の石は、芋の外側から熱を伝えます。熱は皮の側から少しずつ中へ伝わるため、芋の中の温度はゆっくり上がります。いも類振興情報136号も、石焼きや壺焼きは蒸し加熱に比べて芋の温度の上がり方が緩やかなため、麦芽糖が多くできると説明しています。
電子レンジは、マイクロ波で芋の内部の水分子を振動させ、急速に加熱します(『焼き芋小百科』)。そのため芋の中の温度が短い時間で上がり、麦芽糖が作られやすい温度帯を短く通り過ぎてしまいます。136号は、芋の温度の上がり方が早すぎると麦芽糖が十分にできず、甘さが不足すると説明しています。『焼き芋小百科』も、電子レンジは「短時間加熱のため、甘味は少ない」としています。
研究でわかっていること|切った芋の実験では、焼いた芋に電子レンジの約2倍の糖
焼いた芋と、電子レンジで加熱した芋を比べた研究もあります。ここでは、その結果と実験の条件をご紹介します。
桐渕壽子・久保田紀久枝(1976年)は、高系14号を焼いた場合と電子レンジで加熱した場合で、できる糖の量とβ-アミラーゼの働きを比べました。その結果、焼いた芋には、電子レンジで加熱した芋の約2倍の糖ができていました。電子レンジでは、加熱を始めて90秒の時点で、β-アミラーゼの働きがほぼ失われていました。
この実験では、300〜400gの芋を6等分し、中心部分の約60gの4切れを使っています。焼くときは140±5℃の電気定温乾燥器を使い、電子レンジでは1切れずつラップに包んで加熱しました。そのため、90秒という時間は、丸ごとの芋や家庭の電子レンジにそのまま当てはまるものではありません。
さらに古い研究では、松元文子ほか(1965年)が、電子レンジで芋の大きさを変えて加熱したところ、加熱に長い時間がかかったものほど甘かったと報告しています。酵素が働ける時間の長さが関係していると考察されています。
水分が抜けやすく、外見や触感は焼き芋に近いという報告も
電子レンジで加熱した芋は、甘さのほかにも特徴があります。水分の抜け方です。
松元ほか(1965年)は、電子レンジで加熱すると蒸発する水分が多く、「外見や触感としては焼きいもに近く」、その点では蒸し加熱より好まれる面もあると述べています。蒸した芋より仕上がりの色が美しい、とも書かれています。
一方で、水分が抜けやすいということは、加熱しすぎるとパサつきやすいということでもあります。パナソニックも、パサパサになる原因のひとつに、加熱しすぎによる水分の減少を挙げています。
電子レンジで少しでも甘く作るコツ|弱い出力・品種・芋の状態
電子レンジで焼き芋と同じ甘さを出すのは難しいものの、工夫できることはあります。ここでは、弱い出力で時間をかける方法、品種、芋そのものの状態の3つについてご紹介します。あわせて、まだ確かめられていないことも、はっきりさせておきます。
弱い出力で時間をかける|理屈と、確かめられていないこと
焼き芋風のレシピは、弱い出力で時間をかけることで甘さを引き出そうとする方法です。その理屈と限界を整理します。
ニチレイフーズやJAグループのレシピは、最初に600Wで短く加熱したあと、200Wや解凍モードに切り替えて時間をかけます。弱い出力で加熱すると、芋の中の温度の上がり方がゆるやかになると考えられます。温度の上がり方が緩やかなほど麦芽糖が多くなるという説明(いも類振興情報136号)や、加熱に時間がかかったものほど甘かったという研究(松元ほか、1965年)と、方向は合っています。
ただし、電子レンジを200Wなどの弱い出力で加熱したときに、600Wで加熱したときより糖が増えることを実際に測った研究は、当サイトでは確認できていません。最初の600Wの加熱で芋の中心が何℃になるかを測った資料も、確認できていません。弱い出力で時間をかけても、焼き芋と同じ甘さになるとは考えないほうがよいでしょう。
糊化温度の低いクイックスイートは、電子レンジでも甘さが出やすいとされる
品種によっても、電子レンジでの甘さの出方は違います。研究で詳しく調べられている例に、クイックスイートがあります。
クイックスイートは、農研機構が育成した、でんぷんが糊化し始める温度の低い品種です。いも類振興情報136号は、糊化温度の低い品種では、麦芽糖が作られる期間が確保され、電子レンジなどで急速に加熱しても一定の甘さが得られると説明しています。
中村善行ほか(2014年)は、50〜100℃の温度で10℃刻みに加熱した芋を調べ、クイックスイートでは約60℃から80℃を超える高温まで、広い温度域で麦芽糖ができ続けると報告しています。80℃で加熱しても、β-アミラーゼの働きは保たれていました。比べた紅あずま(ベニアズマ)では、細胞の中のでんぷんの糊化が確かめられたのは80℃以上で、その温度域ではβ-アミラーゼの働きが大きく落ちていました。同じ著者の解説(いも類振興情報126号、2016年)は、クイックスイートでは50℃で加熱した時点で、細胞の中のでんぷんの約6割がすでに糊化していたとしています。いずれも電子レンジで加熱した実験ではありませんが、クイックスイートが電子レンジでも甘くなりやすい理由を考えるうえで参考になる結果です。
一方、「ねっとり系の品種は電子レンジに向く」「向かない」といった説明は、資料によって逆のことが書かれています。品種ごとに電子レンジでの甘さを比べた一次資料は、当サイトでは確認できていません。
芋そのものの甘さは、貯蔵の状態でも変わる
仕上がりの甘さは、加熱の仕方だけで決まるわけではありません。芋そのものの状態も関わります。
さつまいもは、収穫後に貯蔵するあいだに、ショ糖などの糖が増えます。安藤利夫ほか(2018年)は、貯蔵に伴って焼き芋が甘くなるのには、調べた6品種すべてで、貯蔵中に増えるショ糖などの糖が大きく寄与していたと報告しています。クイックスイートとべにはるかでは、焼いたときにできる麦芽糖も大きく寄与していました。
いも類振興情報136号も、甘さへの寄与は、麦芽糖とショ糖で同程度としています。電子レンジで作るときも、芋そのものの状態が仕上がりの甘さに関わると考えられます。旬や貯蔵と甘さの関係は、さつまいもの旬と、貯蔵・加熱で甘くなる流れを解説した記事でご説明しています。
電子レンジでさつまいもを加熱するときの注意|発火・やけど・包むもの
さつまいもは、電子レンジで加熱しすぎると、発煙・発火することがある食品です。全国の消費生活センターなどに寄せられた電子レンジの事故の相談にも、さつまいもに関するものが含まれています(国民生活センター)。ここでは、実験で確かめられていることと、火が出たときの対処、芋を包むものの扱いをまとめます。
加熱しすぎると発煙・発火することがある|国民生活センター・東京消防庁の実験
さつまいもの発火は、公的機関の実験でも確かめられています。
国民生活センターは2026年3月、電子レンジの事故についての注意を公表しました。その中で、さつまいも(約100g)をラップをせずに、手動で500Wに設定して加熱し続けるテストを行っています。加熱を始めて約8分でさつまいもから煙が出て、約11分で火花をきっかけに発火しました。庫内の圧力が上がって扉が開き、電子レンジは加熱を止めたと報告されています。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられ、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された電子レンジ使用中の事故(発煙、発火、誤使用など)の相談は、2020年4月から2025年12月までに521件でした。そのうち食品などの内訳では、「サツマイモ」が18件ありました。発火の仕組みについては、さつまいもなど水分の少ない根菜類を長時間加熱すると、水分が蒸発して炭化が進み、可燃性のガスが発生して、庫内に充満したガスに引火すると説明しています。
東京消防庁の実験では、700Wで加熱した焼き芋(120g)が6分26秒で、生のさつまいも(170g)が11分30秒で出火しました。同庁は、さつまいもや肉まんなどは長時間加熱すると急速に燃焼する危険があるとして、注意を呼びかけています。
これらの時間は、それぞれの実験の条件で火が出るまでにかかった時間です。この時間より短ければ安全という目安ではありません。芋の量や状態、機種や出力が違えば、煙や火が出るまでの時間も変わります。
少ない量・小さく切った芋・温め直しの焼き芋は特に注意
電子レンジの取扱説明書にも、さつまいもについての注意が書かれていることがあります。
例えば、パナソニックのスチームオーブンレンジ NE-W302 の取扱説明書は、発煙・発火を防ぐための注意として、「特に、少量の加熱時、油脂の多い食品・液体、さつまいもなどの根菜類の加熱には気を付ける」と書いています。小さい芋や小さく切った芋は、レシピの時間のまま加熱すると、加熱しすぎになりやすくなります。すでに火が通っている焼き芋を温め直すときも、東京消防庁の実験のように、長く加熱すれば火が出ることがあります。
国民生活センターは、パッケージやレシピに書かれた加熱時間の目安を参考にし、判断が難しい場合は加熱時間を控えめに設定して、様子を見ながら加熱するよう呼びかけています。東京消防庁も、加熱時間を長めに設定しないこと、加熱中はその場から離れないことを挙げています。
煙や火が出たら、扉を開けずに電源を切る
万一のときに慌てないよう、対処の仕方を知っておきましょう。
庫内で煙や火が出たときは、扉を開けないでください。国民生活センターは、あわてて扉を開くと酸素が一気に入り、炎の勢いが増してさらに危険になるおそれがあるとしています。そのうえで、動作を停止させて電源プラグを抜き、扉を開けずに煙や火が収まるのを待つよう呼びかけています。
東京消防庁も、扉を開けずに電源を切り、火災になったときは119番通報するよう呼びかけています。同庁によると、あわてて扉を開け、燃えている物を取り出そうとして、着ていた服に火がつき亡くなった事例があります。
アルミホイル・キッチンペーパー・ラップ・新聞紙の扱い
電子レンジで芋を包むものについても、確認しておきましょう。
- アルミホイル:電子レンジのレンジ加熱では、原則として金属類は使えません(国民生活センター)。パナソニックも、電子レンジ調理でのアルミホイルの使用は厳禁とし、発火や発煙、ドアガラスの割れなど故障につながるおそれがあるとしています。オーブンレンジでオーブン機能を使う場合は、使える容器が変わります(国民生活センター)。オーブン機能で焼くときの注意は、オーブンで焼き芋を作る方法を解説した記事でご説明しています
- キッチンペーパー:大王製紙(エリエール)は、同社のキッチンペーパーについて、電子レンジ機能で使えるとしたうえで、加熱しすぎないよう注意を呼びかけています。オーブン機能には使えないとしています。お使いの製品の表示も確認してください
- ラップ:製品の表示と、電子レンジの取扱説明書に従って使います。食品を直接包むときは、少し余裕をもたせて包みます(旭化成)
- 新聞紙:濡らした新聞紙で包んで電子レンジで加熱する方法も見かけます。しかし当サイトでは、この方法の安全性を確かめた公的な資料やメーカーの資料を確認できませんでした。そのため、当サイトではこの方法をおすすめしていません
作ったら早めに食べ、残りは冷蔵庫へ|常温は2時間まで(32℃超は1時間)
電子レンジで加熱したさつまいも(焼き芋風・ふかし芋)は、作ったあとの扱いにも気をつけましょう。
加熱したさつまいもは、できるだけ早く食べてください。米国農務省食品安全検査局は、加熱した食品を常温に置くのは2時間まで、気温が32℃を超えるときは1時間までを目安としています。食べきれない分は、小分けにして早めに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
冷めたものを温め直すときは、中心までしっかり温めます。ただし、温め直しは、常温に長く置いた芋を安全にする方法ではありません。焼いた後の扱いは、焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事と焼き芋の日持ちを保存方法ごとに解説した記事で詳しくご説明しています。
うまくいかないときの原因と対処|甘くない・硬い・パサパサ
電子レンジで作ったさつまいもが思ったように仕上がらないときの、主な原因と対処をまとめます。原因はひとつとは限らないため、芋の状態と加熱の仕方の両方を見直してみてください。
甘くない
電子レンジは、もともと焼き芋ほど甘くなりにくい加熱の仕方です(前の章)。600Wなどの強い出力だけで短く加熱した場合は、弱い出力で時間をかける焼き芋風の手順を試してみてください。ただし、弱い出力にしても、焼き芋と同じ甘さになるとは限りません。
芋の品種や、収穫からの日数、貯蔵の状態によっても甘さは変わります。甘さを重視するなら、オーブンなど、芋の中の温度がゆっくり上がる器具を使う方法もあります。
中が硬い・芯が残る
中まで火が通らないのは、熱が均一に伝わっていない可能性があります。パナソニックは、細長い芋を選ぶことと、加熱後に約5分蒸らすことを勧めています。それでも硬い場合は、30秒ずつ追加で加熱して確かめてください。
なお、十分に加熱しても硬さが残る原因のひとつとして、低温障害(さつまいもを冷やしすぎたときに起こる傷み)が知られています。生のさつまいもの保存と低温障害については、さつまいもを冷蔵庫で保存してよいかを解説した記事でご説明しています。
パサパサ・ベチャっとする
パサパサになるのは、加熱しすぎて水分が抜けたことが考えられます。電子レンジで加熱すると蒸発する水分が多いことは、前の章でご紹介した研究でも報告されています。次に作るときは加熱時間を短めにして、足りない分を30秒ずつ足してみてください。
品種の違いについては、パナソニックが次のように説明しています。紅あずま(ベニアズマ)やなると金時は水分が少ないため、パサパサになりやすく、べにはるかやシルクスイートがおすすめとしています。反対に、安納芋など水分の多い品種はベチャっと仕上がりやすいため、細めの芋を選ぶよう勧めています。
焦げたにおいがする・煙が出た
焦げたにおいや煙は、加熱しすぎのサインです。すぐに加熱を止めてください。庫内に煙や火が見えるときは、扉を開けずに電源を切り、収まるのを待ちます(前の章の「煙や火が出たら、扉を開けずに電源を切る」をご覧ください)。
よくある質問
電子レンジでの焼き芋・ふかし芋について、検索でよく調べられている疑問にお答えします。
Q1. 焼き芋は、レンジとトースターのどちらで作るのがいいですか?
手早さを重視するなら電子レンジ、甘さや香ばしさを重視するならトースターが向いていると考えられます。電子レンジは、レシピにもよりますがトースターより短い時間で火が通る一方、焼き芋らしい甘さは出にくくなります。トースターは芋の外側から熱が伝わるため、芋の中の温度が電子レンジよりゆっくり上がり、皮も香ばしく焼けます。
ただし、トースターは時間がかかります。メーカーのレシピには、200℃で20分焼いて裏返し、さらに20分焼く例(ハイアール)があります。直径5.5cm以内の小ぶりの芋を、230℃で30〜40分程度焼く例(バルミューダ)もあります。器具ごとの作り方は、家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でご紹介しています。
Q2. 電子レンジやオーブンレンジで、ねっとりした焼き芋にできますか?
ねっとりした食感には、加熱中に麦芽糖がたくさんできて、でんぷんが減ることが関わると考えられています(いも類振興情報136号。蒸した芋の研究)。電子レンジは、麦芽糖ができにくい加熱の仕方です(前の章)。ただし、電子レンジで加熱した芋のねっとり感を、焼き芋と比べて調べた資料は、当サイトでは確認できていません。品種では、パナソニックがべにはるか・安納芋・シルクスイートなどをねっとり系(粘質)に分類していますが、同社はこの分類を「おおまかな目安」としています。
オーブンレンジなら、レンジ機能ではなくオーブン機能を使う方法があります。例えばパナソニックは、芋をアルミホイルで包み、160℃に予熱したオーブンで約1時間20分焼く方法を紹介しています。オーブン機能での焼き方は、オーブンで焼き芋を作る方法を解説した記事で詳しくご説明しています。
Q3. 買った焼き芋や冷めた焼き芋を、電子レンジで温め直しても大丈夫ですか?
電子レンジで温め直すことはできますが、加熱しすぎには注意してください。東京消防庁の実験では、700Wで加熱した焼き芋(120g)が6分26秒で出火しています。これより短い時間なら安全という意味ではありません。紙袋やアルミホイルから出し、短めの時間から様子を見ながら温めましょう。
冷蔵した焼き芋の温め直しは焼き芋の日持ちを保存方法ごとに解説した記事、冷凍した焼き芋の温め方は冷凍焼き芋の解凍方法を解説した記事でご説明しています。なお、温め直しは、常温に長く置いた焼き芋を安全にする方法ではありません。
Q4. 加熱した後、レンジの中に置いておくと甘くなりますか?
加熱後に電子レンジの中でしばらく置くと甘くなる、という説明を見かけることがあります。しかし当サイトでは、置いている間に麦芽糖が増えることを示した資料を確認できていません。パナソニックのレシピにある「約5分蒸らす」は、加熱ムラを抑えるための手順として紹介されています。
Q5. 塩水に浸けたり、両端を切ったりすると甘くなりますか?
焼き芋を甘くする方法として紹介されることがありますが、当サイトでは、これらの方法で甘くなることを示した一次資料を確認できていません。甘さには、品種や貯蔵の状態、加熱の仕方が関わります。
Q6. 電子レンジ用の焼き芋調理器は使えますか?
電子レンジで焼き芋を作るための調理器具も販売されています。使う場合は、その製品の説明書に書かれた出力や時間、使い方に従ってください。当サイトでは、特定の製品の紹介はしていません。
まとめ
電子レンジで焼き芋・ふかし芋を作るときのポイントを、最後に整理します。
- 電子レンジでも焼き芋風の芋やふかし芋は作れますが、芋の中の温度が一気に上がるため、焼き芋らしい甘さは出にくくなります。焼いた芋には、電子レンジで加熱した芋の約2倍の糖ができていたという研究があります(約60gに切った芋での実験)
- 焼き芋風は、濡らしたキッチンペーパーとラップで包み、600Wで短く加熱したあと、200Wなどの弱い出力で時間をかけるレシピが紹介されています。ただし、焼き芋と同じ甘さになるとは限りません
- ふかし芋は、ラップで包み、約200gなら600Wで4〜5分(500Wなら4分30秒〜6分)加熱し、約5分蒸らすのが目安です(パナソニック)
- 糊化温度の低いクイックスイートは、電子レンジで急速に加熱しても一定の甘さが得られるとされています
- 加熱しすぎると、さつまいもが発煙・発火することがあります。時間は短めに設定して様子を見ながら足し、加熱中はその場を離れないでください。煙や火が出たら、扉を開けずに電源を切ります
- 作ったら早めに食べ、常温に置くのは2時間まで(気温が32℃を超えるときは1時間まで)を目安に、残りは冷蔵庫へ入れましょう
家で焼き芋を作るほかの方法は、家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でまとめています。
参考資料
本記事の作成にあたって参照した資料です。
- 国民生活センター「電子レンジによる事故を防止!使い方を再チェックしませんか?」2026年3月25日
- 東京消防庁「火災に注意!電子レンジを安全に使用しましょう!」、同ページ掲載のリーフレット(PDF)
- 川越いも友の会編『焼き芋小百科』2005年(日本いも類研究会のサイトに掲載)
- 中村善行「サツマイモの甘さや食感とでん粉の糖化」いも類振興会『いも類振興情報』136号、14〜18頁、2018年
- 中村善行「糊化温度の低いでん粉を含むサツマイモ「クイックスイート」におけるマルトース生成の特徴」いも類振興会『いも類振興情報』126号、30〜36頁、2016年
- 桐渕壽子・久保田紀久枝「甘藷の加熱調理に関する研究(第1報)生成糖とβ-アミラーゼ活性」家政学雑誌27巻6号、418-422頁、1976年
- 松元文子・平山静子・大竹蓉子「電子レンジによる甘藷の加熱について」家政学雑誌16巻5号、284-287頁、1965年
- 中村善行・高田明子・藏之内利和・増田亮一・片山健二「糊化温度の低いデンプンを含むサツマイモ「クイックスイート」における加熱に伴うマルトース生成の機序」日本食品科学工学会誌61巻2号、62-69頁、2014年
- 安藤利夫・家壽多正樹・日坂弘行「焼きいもの食味が異なるサツマイモ6品種の遊離糖およびデンプン含量に対する貯蔵期間の影響ならびにこれら成分値による甘味,肉質の数値化」園芸学研究17巻4号、449-457頁、2018年
- ニチレイフーズ ほほえみごはん「【焼き芋の作り方】電子レンジで甘みを引き出すテク」
- JAグループ「電子レンジの解凍モードで簡単ホクホク焼きいも」
- パナソニック UP LIFE「【失敗しない】電子レンジでさつまいもを簡単においしく加熱する方法|ワット数・時間のコツも解説」2026年8月25日、「電子レンジの「ワット数」とは?500Wや600Wなど出力別の使い方と効率的にあたためるコツ」2026年5月11日、「オーブンなら自宅で本格焼き芋が簡単に!作り方のコツを解説」2026年5月11日、「さつまいもの旬はいつ?種類の違いと自宅でカンタン絶品焼き芋の作り方」2026年8月31日
- パナソニック「スチームオーブンレンジ NE-W302 取扱説明書」
- シャープ「解凍のしかたは?」Q&A情報(文書番号158951)
- ハイアール LIFE STYLE「オーブントースターで簡単!さつまいもの甘さを引き出す焼き芋の作り方」
- バルミューダ「スチームトースターでの焼き芋の焼き方を教えてください。」(よくあるご質問)
- 大王製紙 エリエール「キッチンペーパー・キッチンタオルについて」(よくあるご質問)
- 旭化成「サランラップの使い方」
- 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)"Leftovers and Food Safety"
サツマイモの甘さと健康の秘密
サツマイモに含まれている栄養素や甘くなる仕組みをご紹介します。




















