秋になると、家庭菜園や市民農園で育てたさつまいもを、いつ掘ればよいのか迷うことがあります。「葉が黄色くなったら」「植えてから4か月」など、目安はいろいろ見かけますが、資料によって日数も書き方もまちまちです。
結論からお伝えすると、さつまいもの収穫時期は、植え付けからおよそ120〜150日前後が目安です。何月に掘るかは、植え付けた日によって変わります。例えば千葉県の普通掘り栽培では、5月中旬〜6月中旬に植え付け、9月〜11月中旬に収穫するとしています。最後は試し掘りで芋の大きさを確かめ、霜が降りる前に掘り終えるようにしましょう。
本記事では、さつまいもの収穫時期について、わかりやすくご説明したいと思います。植え付けからの日数、品種やマルチによる違い、葉の見方、試し掘りのやり方、早すぎ・遅すぎで起きること、掘った後の扱いまで、公的機関や産地の資料をもとにまとめました。
なお、本記事で扱うのは、家庭菜園などで育てたさつまいもの掘りどきです。お店に並ぶさつまいもの旬と食べ頃は、さつまいもの旬と、貯蔵・加熱で甘くなる流れを解説した記事でご紹介しています。
さつまいもの収穫時期は、植え付けから120〜150日前後
さつまいもの収穫時期は、植え付けからおよそ4〜5か月(120〜150日前後)が一般的な目安です。ただし、植える時期(作型)や地域によって、掘りどきは前後します。ここでは、作型と地域ごとの目安を表で整理したうえで、植え付けた日から数えた日付の早見表と、資料によって日数が違う理由をご説明します。
作型・地域別の収穫時期の早見表
収穫時期の目安を、公的機関などの資料から、作型と地域ごとにまとめました。作型とは、植え付けから収穫までのスケジュールのことです。秋に収穫する一般的な作型を「普通掘り」、早く植えて夏に収穫する作型を「早掘り」と呼びます。
| 作型・地域 | 植え付けの時期 | 収穫の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 普通掘り(関東地域) | 5月上旬〜6月中旬 | 植え付けから120〜150日。収穫は10月中旬〜11月上中旬にかけて | 農研機構 |
| 早掘り(関東地域) | 4月下旬ごろから | 植え付けから100〜120日。収穫は8月上旬〜9月上旬にかけて | 農研機構 |
| 関東 | — | 植え付けから4か月程度。10月上旬〜11月上旬 | 日本いも類研究会 |
| 九州 | — | 9月下旬〜11月下旬 | 日本いも類研究会 |
| 千葉県(普通掘り) | 5月中旬〜6月中旬 | 9月〜11月中旬。北総地域では11月中旬が収穫の晩限 | 千葉県 |
| 北海道 | 晩霜の危険がなくなってから | 9月下旬ごろに試し掘りをして判断。霜にあたる前に | 北海道立総合研究機構 |
表の時期は、それぞれの資料が地域の栽培全体について示した幅です。例えば5月1日に植えた場合、120〜150日後は8月29日〜9月28日で、農研機構が示す10月中旬より早くなります。早めに植えた場合は、表の収穫の時期を待たずに、日数の目安に近づいたら試し掘りをしてみましょう。植え付けた日からの目安は、次の早見表で確かめてください。
種苗会社のタキイ種苗も、植え付けから120〜140日程度を目安としています。そのうえで多くの資料が、収穫の前に試し掘りをして、芋の大きさを確かめるよう勧めています(タキイ種苗・千葉県・宮城県・北海道立総合研究機構)。試し掘りのやり方は、後の章でご説明します。
植え付け日から数える|100日・120日・150日は何月何日?
植え付けた日がわかっていれば、カレンダーで目安の日を出すことができます。普通掘りでよく植えられる時期について、植え付けから100日・120日・150日後の日付を計算しました。
| 植え付け日 | 100日後 | 120日後 | 150日後 |
|---|---|---|---|
| 5月1日 | 8月9日 | 8月29日 | 9月28日 |
| 5月15日 | 8月23日 | 9月12日 | 10月12日 |
| 6月1日 | 9月9日 | 9月29日 | 10月29日 |
| 6月15日 | 9月23日 | 10月13日 | 11月12日 |
家庭菜園向けの資料では、試し掘りは植え付けから約100日以降、収穫は約120〜150日を目安にしています(ヤンマー)。表の100日後の日付は、試し掘りを始める時期の参考にしてください。
注意したいのは、植え付けが遅いほど、150日後が晩秋にかかることです。6月15日に植えると、150日後は11月中旬になります。地域によっては、それより前に霜が降りることがあります。日数の目安に届いていなくても、霜が降りる前に掘り終えることを優先しましょう(理由は「葉で収穫時期は分かる?」の章でご説明します)。来年のためにも、植え付けた日と品種をメモしておくと便利です。
資料によって日数が違うのはなぜ?
資料によって、収穫までの日数は「120〜140日」「120〜150日」「4か月程度」などと少しずつ違います。日本いも類研究会の『さつまいもMiNi白書』は、収穫時期は芋の肥大の程度と、利用の目的によって左右されるとしています。
利用の目的による違いの例として、栃木県農業総合研究センターの試験があります。べにはるか(紅はるか)を2019年5月28日に植え、植え付けから90〜168日後に掘って比べました。その結果、青果用では芋を太らせすぎないために135日、業務用の加工向けでは十分に芋が太る150日が適するとしています。大きすぎる芋を避けたいのか、十分な大きさの芋がほしいのかによっても、掘りどきは変わるということです。
このほか、作型(植え付けの時期)、地域の気候、品種、次の章でご紹介するマルチの有無によっても、収穫までの日数は前後します。資料の数字は、それぞれの条件での目安と考えてください。
品種とマルチの有無で、掘りどきは前後する
同じ時期に植えても、品種や栽培の仕方によって、芋が太る早さは違います。ここでは、マルチ(畝をポリフィルムで覆う栽培)の有無による違いと、主な品種ごとの収穫時期に関わる特徴を、県や産地の資料から整理します。あわせて、積算温度で収穫期を見る方法もご紹介します。
マルチ栽培は早め、マルチなしは遅め
畝をフィルムで覆うマルチ栽培をしている場合は、覆わない場合より収穫の目安が早めになります。タキイ種苗は、関東地方以西では、マルチ栽培で9月下旬から、マルチなしで10月下旬〜11月上旬が収穫適期になるとしています。
産地の例もあります。鹿児島県・種子島のJA種子屋久は、安納いもを、マルチ栽培は定植後120日、露地栽培(マルチなし)は定植後140日を目安に、晴天の日に掘り取っていると紹介しています(農畜産業振興機構『野菜情報』2018年11月号)。マルチの有無で、20日ほどの差をつけていることになります。
ご自身の畑でマルチを張ったかどうかも、植え付けた日とあわせて覚えておくと、掘りどきの見当をつけやすくなります。
品種別の目安|紅はるか・シルクスイート・安納芋ほか
品種によって、芋が早く太るもの、ゆっくり太るものがあります。県や産地、農研機構の資料で確認できた、収穫時期に関わる特徴をまとめました。
| 品種 | 収穫時期に関わる特徴 | 出典 |
|---|---|---|
| べにはるか(紅はるか) | 芋の肥大が比較的遅く、早掘り栽培には向かない。収穫直後の肉質は粉質で、1か月以上貯蔵すると粘質化し、甘さが増す | 千葉県 |
| べにはるか(紅はるか) | 青果用は芋を太らせすぎないために定植から135日、業務用の加工向けは150日が適する(2019年5月28日定植の試験) | 栃木県 |
| シルクスイート | 早掘り栽培に適性がある。貯蔵3週間程度で肉質が粘質化し、糖度も高まる | 千葉県 |
| シルクスイート | 中身の成分(ショ糖・でんぷん)の充実には、畑で育てる期間が100日以上必要 | 千葉県 |
| 紅あずま(ベニアズマ) | 芋の早期肥大性(早くから太る性質)が優れる。早掘り栽培では8月から出荷される | 千葉県 |
| 高系14号 | 早期肥大性に優れ、早掘り栽培に向く | 千葉県 |
| べにまさり | 蒸し芋の食味から、掘り取りの適期は植え付けから110日以降(黒マルチ栽培・2004年の1年分の結果) | 茨城県 |
| 安納いも(安納芋) | マルチ栽培は定植後120日、露地栽培は140日が目安(種子島) | JA種子屋久 |
| ふくむらさき | 芋1個の重さが軽いため、早掘りを避け、十分な生育期間を確保する | 千葉県 |
| あまはづき | 早掘り栽培で糖度の高さが際立ち、収穫直後の8月から、ねっとり甘い焼き芋を作れる | 農研機構 |
表のとおり、べにはるかは芋がゆっくり太る品種とされていて、早めに掘ると小ぶりになりやすいと考えられます。反対に、紅あずまや高系14号は早くから太りやすく、早掘りにも使われます。あまはづきは農研機構が育成した品種で、早掘りして、掘ってすぐに甘い焼き芋にできるとされています。品種ごとの特徴は、あまはづきの特徴を解説した記事やふくむらさきの特徴を解説した記事でもご紹介しています。
なお、紅あずまやなると金時について、植え付けから何日で掘るかを具体的に示した公的な資料は、当サイトでは確認できませんでした。苗を買ったお店や種苗会社の説明もあわせて参考にし、最後は試し掘りで確かめてください。
積算温度の目安は、資料によって2,200〜3,000℃と幅がある
日数のほかに、「積算温度」で収穫期を判断する方法もあります。積算温度とは、植え付けてからの毎日の平均気温を足し上げた値です。宮城県の資料は、アメダスの平均気温から計算しています。
ただし、目安の数字は資料によって違います。
| 資料 | 積算温度の目安 |
|---|---|
| タキイ種苗 | 平均気温の積算温度2,200〜2,500℃で収穫 |
| 宮城県美里農業改良普及センター(2024年) | 定植後の積算温度が2,700〜3,000℃の時期が収穫適期(一部、北海道などでは2,400℃が目安) |
| 北海道立総合研究機構 | 定植から収穫までの日積算気温が約2,400℃確保できる地域では、安定した収量が見込める |
北海道立総合研究機構の数字は、収穫の時期というより、さつまいもの栽培に向く地域の条件として示されたものです。数字が違う理由は、それぞれの資料には書かれていません。資料ごとの目安を、同じ物差しとして比べないほうがよいでしょう。
積算温度で考えると、暑い年ほど、目安の値に早く届くことになります。宮城県の資料によると、2024年は8月の平均気温が平年より約3.2℃高くなりました。この年に5月25日に植えた場合、積算温度が2,500℃に届くのは9月7日、3,000℃に届くのは9月29日と予想されていました。予想は、大崎市鹿島台のアメダスの平均気温をもとに、9月17日までは実測値、それ以降は予報や過去10年の平均値を使って計算したものです。
同じ資料で、6月15日に植えた場合は、3,000℃に届くのが10月23日でした。資料が霜害のリスクが高まるとする10月20日を過ぎます。積算温度も日数と同じく目安として使い、試し掘りで確かめると安心です。
葉で収穫時期は分かる?|「黄色くなったら」の注意点
「葉が黄色くなったら収穫のサイン」という説明はよく見かけます。ただ、葉の色だけで掘りどきを決めるのは難しく、病気の症状と重なることもあります。ここでは、葉の色を見るときの考え方と、霜との関係、気をつけたい葉やつるの変化をご説明します。
葉の黄変は目安のひとつ。地上部だけでは判断しにくい
タキイ種苗は、収穫適期は地上部からは判別できないとしたうえで、植え付けから約4か月、葉や茎が黄色くなり始めるころを目安に挙げています。そのうえで、あらかじめ試し掘りをして芋の大きさを確かめ、判断するよう勧めています。葉の色は目安のひとつで、決め手は試し掘りという考え方です。
当サイトが確認した公的機関などの資料(農研機構・日本いも類研究会・千葉県・宮城県・北海道立総合研究機構)は、植え付けからの日数や時期、試し掘りで収穫時期を説明していて、葉の黄変を収穫適期の目安として挙げたものは見当たりませんでした(2026年10月時点)。千葉県の栽培技術指針では、葉の黄化や黄変は、立枯病や基腐病などの病気の症状として出てきます。
葉が黄色くなるかどうかは、地域や生育の型によっても違います。日本いも類研究会の『さつまいもMiNi白書』は、関東の北方型では収穫期にも茎葉の黄変や落葉は少なく、九州・四国の南方型では、茎葉が黄変して落葉枯死するまで芋が太り続けるとしています。葉が黄色くならないからといって、掘るのを待ち続ける必要はありません。日数の目安に近づいたら、まず試し掘りをしてみましょう。
霜に当たる前に掘り終える
さつまいもは熱帯原産の植物で、寒さに弱い作物です(千葉県・宮城県)。霜に当たると腐りやすくなり、貯蔵性も落ちるため、多くの資料が、霜が降りる前に収穫を終えるよう勧めています(タキイ種苗・千葉県・宮城県)。
収穫の期限の目安を示している資料もあります。千葉県は、北総地域では11月中旬が収穫の晩限としています。宮城県美里農業改良普及センターの資料は、10月20日以降は霜害の発生リスクが高まるとして、10月20日までを目安に降霜前に収穫を終えるよう呼びかけています。北海道立総合研究機構は、収穫は遅いほど増収し、芋もしっとり甘くなりやすい一方で、霜に当たると腐敗しやすくなるとしています。
JA北新潟の家庭菜園の記事では、初霜が降りると若い葉が枯れるのですぐに分かり、何回か降霜に遭って多くの葉が黒く枯れ上がったら、急いで全部掘り上げるよう書いています。霜で葉が枯れたら、待ったなしの合図と考えてください。ただし、保存する芋の傷みにくさを考えると、霜が降りる前に掘り終えるほうが安心です。お住まいの地域で初霜がいつごろになるかは、地元のJAや農業改良普及センターの情報も参考になります。
葉やつるの黄変・株元の黒ずみは、病気のこともある
葉やつるが黄色くなるのは、病気の症状のこともあります。農林水産省九州農政局は、家庭菜園などに取り組む人に向けたチラシで、サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の症状を、葉やつるが黄色や赤色に変色して次第にしおれ、株元が黒色から黒褐色に変色して枯れる、と説明しています。基腐病は、カビの一種が原因の病気です。
茨城県の行方地域農業改良普及センターも、収穫の前に畑をよく観察し、枯れた株や黄化している株がないか確かめるよう呼びかけています。葉の黄色さに加えて、しおれていたり、株元が黒っぽく変色していたりする株があれば、収穫のサインと考えず、病気を疑ってください。見つけたときの対応は、「収穫の手順」の章でご説明します。
試し掘りのやり方|いつ・どの株を・何を見るか
掘りどきを決める大きな手がかりは、実際に掘って芋の大きさを見る「試し掘り」です。県の資料には、試し掘りをする時期や、どの株を掘ればよいかが具体的に書かれています。ここでは、その方法を、家庭菜園でも取り入れやすい形でご紹介します。
試し掘りは、収穫予定の少し前から
試し掘りは、収穫の予定日より前に行います。千葉県と宮城県の資料は、品種ごとの収穫適期になる前に試し掘りをして、芋の太り具合を確かめてから収穫に入るよう勧めています。品種によって太る早さが違うため、複数の品種を植えているときは、品種ごとに確かめるとよいでしょう。
時期の目安は、家庭菜園向けの資料で植え付けから約100日以降(ヤンマー)です。北海道立総合研究機構は、北海道では9月下旬ごろに試し掘りをして、芋の大きさを見て判断するとしています。JA北新潟の家庭菜園の記事では、自家菜園なら8〜9月ごろから、必要に応じて少しずつ掘って楽しむ方法も紹介されています。
掘る株の選び方|畝の端を避けて2〜3株
どの株を掘るかによって、判断が変わることがあります。千葉県と宮城県の資料は、畝の端から3m以上内側で、地上部の生育が中くらいで、欠株(苗が育たなかった場所)のないところを2〜3株掘るのが望ましいとしています。枕地(畝の両端の、機械や人が向きを変える部分)や畝の端の株は、芋が太りやすいため避けます。
また、苗を植えた向きによっても芋の太り方が違うため、隣り合う2つの畝を掘ると、より正確に判断できるとしています。家庭菜園の短い畝では3m以上内側の株を選ぶのが難しいこともありますが、できるだけ端の株を避け、育ち具合が平均的な株を選ぶとよいでしょう。
株ごと掘り上げずに様子を見たいときは、「探り掘り」という方法もあります。株元に手を差し込んで、太った芋だけを収穫する方法です(JA北新潟)。
判断の目安は芋の重さ|200〜500gの芋が多くなったら
試し掘りでは、芋の大きさ(重さ)を見ます。宮城県の資料は、試し掘りで200〜500gの芋が多くなってきたら収穫適期としています。北海道立総合研究機構も、同じく200〜500gの芋が多くなってきたら収穫適期としています。掘った芋をキッチンスケールで量り、この範囲の芋がどのくらいあるかを数えてみると、判断しやすくなります。
なお、この200〜500gは、出荷も視野に入れた生産者向けの資料の目安です。家庭で食べる分なら、焼き芋に使いやすい大きさなど、好みや使い道に合わせて掘りどきを決めてもかまいません。さつまいもの大きさと重さの関係は、さつまいものサイズと重さを解説した記事でご紹介しています。
小さい芋ばかりの場合は、まだ太る途中と考えられます。霜が降りる時期までに余裕があれば、日を改めて、もう一度試し掘りをしてみましょう。
芋が小さく、つるばかり茂っているときは
試し掘りをしてみると、つるや葉は元気に茂っているのに、芋がほとんど太っていないことがあります。こうした状態は「つるぼけ」と呼ばれます。原因と対策は、つるぼけの原因と対策を解説した記事で詳しくご説明しています。
早すぎ・遅すぎで起きること
掘りどきが早すぎても遅すぎても、芋の味や形、保存のしやすさに影響が出ることがあります。資料に書かれている内容を、早すぎる場合と遅すぎる場合に分けてご紹介します。どちらの場合も、食べる楽しみがなくなるわけではないので、起きることを知ったうえで掘りどきを選んでください。
早く掘りすぎると|食味が劣りやすく、中身も充実していない
タキイ種苗は、収穫が早すぎると食味が悪くなるとしています。どのくらい早いと影響が出るかについては、品種ごとの試験があります。
茨城県農業総合センターの試験では、べにまさりの蒸し芋の甘みは、植え付けから約100日までは比べたベニアズマに劣り、110日を過ぎると同等か、やや優る傾向がみられました。千葉県の試験では、シルクスイートの中身の成分の充実には、畑で育てる期間が100日以上必要とされました。80日の芋は、焼き芋にしたときのショ糖はむしろ多かったものの、生の芋のでんぷんが少なく、充実していない特徴を示したとしています(15℃で貯蔵した芋を使った試験)。
また、収穫が遅いほど収量が増えるとする資料(北海道立総合研究機構)からは、早く掘るほど芋は小ぶりになりやすいと考えられます。
とはいえ、早く掘った芋が食べられないわけではありません。紅あずまのように、早掘りして8月から出荷される芋もあります(千葉県)。早めに掘った芋は、すぐに食べずに、しばらく置いてから食べるのがおすすめです(「掘った後の扱い」の章でご説明します)。
遅れると|割れ・形の乱れ・霜による傷み
収穫が遅すぎる場合について、タキイ種苗は、芋の形が乱れ、亀裂ができることもあるとしています。
千葉県の資料は、収穫のときに見つかる割れについて、いくつかの要因が組み合わさって起きると考えられる、としています。収穫の遅れによる芋の太りすぎや、水分が多すぎることによる膨張に、センチュウ(土の中にいる、ごく小さな線虫)の寄生や、収穫のときの衝撃などが重なるという説明です。長さに対して太さが大きい「丸いも」も、肥料の加里(カリウム)が多いことや、掘り遅れによる太りすぎが原因のひとつとされています。
宮城県の資料は、畑に植えている期間が5か月を超えると、芋の貯蔵性が悪くなる(老化イモ)としています。さらに、霜に当たると腐りやすくなります(前の章)。
一方で、霜に当たる前であれば、遅く掘るほど収量が増え、しっとり甘くなりやすいとする資料もあります(北海道立総合研究機構)。大きめの芋をたくさん収穫したいのか、手ごろな大きさの芋がほしいのかによって、掘りどきを選ぶとよいでしょう。
収穫の手順|掘る日の天気・つる切り・掘り方
掘りどきが決まったら、いよいよ収穫です。掘る日の天気や、つるを刈るタイミング、芋の扱い方によって、その後の傷み方が変わることがあります。ここでは、収穫の手順と、病気が疑われる株を見つけたときの対応をご説明します。
晴れの日を選び、畑が乾いているときに掘る
収穫は晴れた日を選びます(タキイ種苗)。千葉県と宮城県の資料は、土が湿っていると皮むけが起きたり、貯蔵性が落ちたりする原因になるとして、できるだけ畑が乾いた日に掘るよう勧めています。千葉県は、芋に土がつきやすく、作業しにくくなることも挙げています。雨が降った直後は避け、土が乾いてから掘りましょう。
つるは掘る直前に、株元で刈る
掘る前に、地上に広がったつるを刈り取ります。JA北新潟の家庭菜園の記事は、つるの株元を探し出し、地際のつるを地上4〜5cm残して鎌で刈り取る方法を紹介しています。千葉県の生産者向けの資料は、つる刈りは収穫の当日に行うのが望ましいとしています。
「収穫の1週間ほど前につるを切っておくと甘くなる」という説明を見かけることもありますが、当サイトでは、その根拠となる資料を確認できませんでした。海外では、収穫の4・8・10日前に茎葉を刈ると、収穫時の皮むけの被害がそれぞれ26・53・62%減ったという報告があります。ただしこれは、アメリカで機械を使って収穫する畑の研究で、甘さについては調べていません(La Bonte・Wright、HortScience、1993年)。家庭菜園では、つるは掘る直前に刈れば十分と考えられます。
芋を傷つけないように掘る
つるを刈ったら、芋を傷つけないように、スコップやクワで株のまわりの土をほぐしながら掘り上げます。品種によって芋の長さが違うため、掘る深さに注意します(千葉県)。べにはるかのように形が長めの品種では、深めに掘るとよいでしょう。
掘った芋は、丁寧に扱ってください。宮城県の資料は、芋を「投げない、落とさない、ぶつけない」よう呼びかけていて、打ち傷から菌が入って腐ることがあるとしています。同じ資料は、農研機構の調査として、10cmの高さから落とした芋は10個中4個が腐敗したと紹介しています。また、収穫した直後の芋は、皮がむけやすい状態です(北海道立総合研究機構)。
基腐病が疑われる株を見つけたら
収穫の前や掘っているときに、病気の症状がないかも確かめます。茨城県の行方地域農業改良普及センターは、収穫した芋をよく観察し、なりつる(芋とつながっている茎)が黒く変色していないか、芋のなり首(つるとつながっていた側)から変色したり腐ったりしていないかを確かめるよう呼びかけています。基腐病が疑われる症状です。
こうした株を見つけたときは、まず最寄りの病害虫防除所や農業改良普及センターに相談してください。対応の仕方は、見つけた時期や資料によって違います。農林水産省九州農政局のチラシは、植え付けた後の見回りで疑わしい株を見つけたら、最寄りの病害虫防除所などに相談し、発病株は速やかに抜き取って畑の外で処分するよう勧めています。一方、茨城県の普及センターは、収穫のときに症状が見られたら収穫作業をやめ、抜き取りや処分は行わずに連絡するよう求めています。どちらの資料も、まず相談先に連絡するよう呼びかけています。自己判断で処分する前に、相談先の指示を受けると安心です。
九州農政局のチラシは、病気が発生した畑は早めに収穫すること、病原菌が残っているため次からその畑には植え付けないことも呼びかけています。腐った芋や、苦み・異臭のある芋は、食べないでください(判断の注意は「掘った後の扱い」の章でご説明します)。さつまいもの黒い斑点や変色については、さつまいもの黒い斑点を解説した記事でご説明しています。
掘った後の扱い|乾かす・洗わない・しばらく置く
掘り上げたさつまいもは、そのまま箱にしまうのではなく、ひと手間かけてから保存します。また、掘りたての芋は、甘みがまだ控えめなことがあります。ここでは、乾かし方と傷のある芋の扱い、保存の温度、食べごろまでの考え方をご説明します。
表面を乾かしてから保存する|干す時間は資料によって違う
掘ったさつまいもは、水で洗わずに、表面を乾かしてから保存します。タキイ種苗は、収穫後にしばらく乾燥させてから貯蔵するとしています。長く貯蔵する場合は、土のついたまま芋をよく乾かしてから、一つずつ新聞紙で包んで段ボールに入れ、ふたに空気穴を開けるよう紹介しています。日本いも類研究会も、掘り上げたら乾燥して13〜15℃で貯蔵するとしています。
どのくらいの時間乾かすかは、資料によって違います。JAあつぎは、1〜2日ほど天日干しをして付いた土を払い落とし、その後1週間ほど陰干ししてから貯蔵する方法を紹介しています。そのうえで、天日干しが長すぎると、日焼けや乾燥しすぎで品質が落ちると注意しています。何時間・何日と決めた公的な資料は、当サイトでは見当たりませんでした。表面の土が乾くまで乾かし、長い時間、強い日に当てすぎないようにするとよいでしょう。
洗わないのは、表皮を傷つけず、濡らさないためです。洗ってしまったときの扱いも含めて、保存の方法はさつまいもの保存方法を解説した記事で詳しくご説明しています。
傷のある芋・割れた芋は、先に使う
掘るときに傷がついた芋や、割れた芋は、保存するよりも先に使うようにしましょう。前の章でご紹介したとおり、傷から菌が入って腐ることがあるためです。
産地では、収穫した芋を高温多湿の環境に数日置き、表皮の傷を自然にふさぐ「キュアリング」という処理を行うことがあります。農研機構(生研支援センター)によると、一般的には温度30〜35℃・湿度90〜99%で3〜4日ほど置くとされています。家庭でこの条件を保つのは難しいため、無理に再現しようとせず、傷のある芋から使うのが現実的です。
傷のついた芋は、苦み成分を作ることもあります。擦り傷をつけた芋を、13℃と25℃、湿度60〜70%の乾いた条件で保存した実験では、傷の部分でイポメアマロンという苦み成分ができ、25℃ではその生成が大きく増えました(島ほか、熱帯農業、1996年)。同じ実験で、湿度85〜95%の条件では、13℃・25℃のどちらでも検出されていません。苦みやいつもと違う味がしたら、飲み込まずに食べるのをやめてください。
ただし、苦みや変色、異臭がないからといって、安全が保証されるわけではありません。食中毒の原因となる細菌は、見た目やにおいをほとんど変えないことがあります。掘った日や置いていた場所といった保存の履歴も、あわせて判断の材料にしてください。
保存は13〜15℃前後、10℃を下回らない室内で
乾かした芋(切っていない生の芋)は、13〜15℃前後を目標に、少なくとも10℃を下回らない室内で保存します(日本いも類研究会・JAなめがた甘藷部会連絡会)。さつまいもは寒さに弱く、冷蔵庫は温度が低すぎます。段ボールや発泡スチロールの箱に入れるときも、密閉すると湿気がこもって腐る原因になるため、密閉はしないでください(日本いも類研究会)。
掘りたてより、しばらく置いたほうが甘みが増しやすい
掘りたてのさつまいもは、まだ甘みが控えめなことがあります。タキイ種苗は、収穫直後よりも2〜3週間貯蔵した芋のほうが、甘みが増しておいしくなるとしています。
品種によっても違います。農研機構は、収穫直後のべにはるかは甘味が弱く、食感も粉っぽいとしています。千葉県の資料では、べにはるかは1か月以上、シルクスイートは3週間程度の貯蔵で、肉質が粘質化するとされています。種子島の安納いもも、1か月程度貯蔵することで糖が安定して甘くなるとして、出荷前に貯蔵しています(JA種子屋久)。一方、あまはづきは、早掘りした8月の収穫直後から、ねっとり甘い焼き芋にできるとされています(農研機構)。貯蔵による変化は品種ごとに違うため、きみまろこの特徴を解説した記事など、品種を解説した記事もあわせてご覧ください。
掘った芋は、まずは2〜3週間ほど置いてから食べ比べてみると、甘さの変化を楽しめます。掘りたてと食べ頃の時期がずれる理由は、さつまいもの旬と、貯蔵・加熱で甘くなる流れを解説した記事でご説明しています。
よくある質問
さつまいもの収穫時期について、よくある疑問にお答えします。早めに掘ってよいか、つるだけ先に切ってよいか、掘った後の干し方などを取り上げました。詳しい説明は、各章もあわせてご覧ください。
Q1. 8月や9月に掘ってもいいですか?
掘ってもかまいません。関東地域の早掘り栽培では、4月下旬ごろから植え、8月上旬〜9月上旬に収穫します(農研機構)。5〜6月に植えた場合も、9月に試し掘りをして、芋が十分に太っていれば掘ってよいでしょう。早めに掘った芋は甘みが弱いことがあるため、しばらく置いてから食べるのがおすすめです。
Q2. 時間がなくて掘れません。つるだけ先に切ってもいいですか?
当サイトが確認した資料では、つるは掘る直前(当日)に刈る手順になっていて、先に切っておくと甘くなるという根拠は見当たりませんでした。アメリカの研究(La Bonte・Wright、1993年)は、以前の研究で、収穫の15日前に茎葉を刈っても皮むけはそれ以上減らず、芋が芽を出し始めたと紹介しています。つるを切るかどうかより、霜が降りる前に掘ることを優先しましょう。
Q3. 掘った後、何日干せばいいですか?
何日と決めた公的な資料は、当サイトでは見当たりませんでした。タキイ種苗は「しばらく乾燥させてから貯蔵」とし、JAあつぎは1〜2日ほど天日干しした後、1週間ほど陰干しする方法を紹介しています。表面の土が乾くまで乾かし、強い日に長く当てすぎないようにしましょう。
Q4. 掘ったら、切り口から白い液が出てきました
掘るときに芋が切れたりすると、切り口から白い液がにじむことがあります。ヤラピン(さつまいもの乳液に含まれる樹脂配糖体)を含む乳液です。日本いも類研究会は、この液をヤラピンまたはヤラッパ樹脂と呼び、放っておくと黒いタール状の物質に変わると説明しています。詳しくは、ヤラピンを解説した記事でご説明しています。
Q5. 掘った芋を洗ってしまいました
濡れたまま箱に入れると湿気がこもって傷みやすくなるため、水気を拭き取り、表面をよく乾かしてから保存しましょう。洗ったときに表皮に傷がついていることもあるので、ほかの芋より先に使うと安心です。
Q6. 一度に全部掘りますか?少しずつ掘ってもいいですか?
家庭菜園なら、少しずつ掘ってもかまいません。JA北新潟の家庭菜園の記事は、株元に手を差し込んで太った芋だけを取る探り掘りで、必要に応じて収穫する方法を紹介しています。ただし、霜が降りる前には残りを掘り終えるようにしましょう。
まとめ
さつまいもの収穫時期について、植え付けからの日数、品種やマルチによる違い、葉の見方、試し掘りのやり方、掘った後の扱いまでご説明しました。日数はあくまで目安で、最後は試し掘りで確かめることが大切です。要点を整理します。
- さつまいもの収穫時期は、植え付けからおよそ120〜150日前後が目安です。何月になるかは植え付けた日で変わるため、植え付けた日から数えて、試し掘りの時期を決めましょう
- マルチ栽培は早め、マルチなしは遅めになります。べにはるかのように芋がゆっくり太る品種、紅あずまや高系14号のように早く太る品種があります
- 葉の黄変は目安のひとつにすぎません。葉やつるの黄変に加えて株元が黒い株は、病気を疑いましょう
- 植え付けから100日ほどたったら試し掘りをします。200〜500gの芋が多くなったら掘りどきの目安です(宮城県・北海道立総合研究機構)
- 霜が降りる前に掘り終えます。掘る日は晴れた、畑の乾いた日を選び、つるは掘る直前に刈ります
- 掘った芋は洗わずに表面を乾かし、13〜15℃前後で保存します。2〜3週間ほど置くと甘みが増しやすくなります
収穫したさつまいもの保存方法はさつまいもの保存方法を解説した記事、旬と食べ頃はさつまいもの旬と、貯蔵・加熱で甘くなる流れを解説した記事でご紹介しています。
参考資料
本記事の作成にあたって参照した資料です。
- 農研機構「(研究成果)8月の収穫直後から甘いサツマイモ新品種「あまはづき」」2021年10月20日
- 農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター「《こぼれ話65》輸出用サツマイモの腐敗低減技術を開発」
- 日本いも類研究会「Q さつまいもの簡単な栽培方法を教えて下さい。」
- 日本いも類研究会「Q さつまいもの保存方法を教えてください。」
- 日本いも類研究会「Q さつまいもを切るとでてくる白い「お汁」はなんでしょうか。」
- 日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』「Ⅹ 栽培技術」
- 千葉県農林水産技術会議「サツマイモ栽培技術指針」令和5年3月
- 千葉県農林総合研究センター「「シルクスイート」の貯蔵に伴う食味変化と食味マップへの追加及び在ほ日数と食味関連成分の関係」(試験研究成果普及情報)
- 宮城県美里農業改良普及センター「さつまいも通信 vol.3」令和6年9月20日
- 北海道立総合研究機構「北海道でのさつまいも栽培」
- 栃木県農業総合研究センター「さつまいも安定栽培技術の確立」研究成果集 第43号
- 茨城県農業総合センター農業研究所「かんしょ「べにまさり」の植付け節数と掘取り適期」平成16年
- 茨城県 行方地域農業改良普及センター「普及だより」第141号、令和4年10月
- 農林水産省九州農政局「さつまいも・ニュース」(サツマイモ基腐病)
- 鮫島友平(JA種子屋久)「産地紹介 鹿児島県 JA種子屋久」農畜産業振興機構『野菜情報』2018年11月号
- 島佳久・永浜伴紀・菅沼俊彦・北原兼文「サツマイモの傷害と保蔵条件による品質変化, 特にイポメアマロンの生成」熱帯農業 第40巻第4号、204〜212頁、1996年
- D.R. La Bonte, M.E. Wright "Image Analysis Quantifies Reduction in Sweetpotato Skinning Injury by Preharvest Canopy Removal" HortScience 28(12): 1201, 1993
- タキイ種苗「サツマイモ 野菜栽培マニュアル」
- タキイ種苗「サツマイモの収穫時期の目安を教えてください。」(野菜に関するQ&A)
- ヤンマー「サツマイモ|ごちそう!家庭菜園」
- JA北新潟「サツマイモの上手な収穫と貯蔵法」2016年11月1日
- JAあつぎ「営農通信」2023年12月
- JAなめがた甘藷部会連絡会「さつまいもの保存方法」
サツマイモの甘さと健康の秘密
サツマイモに含まれている栄養素や甘くなる仕組みをご紹介します。




















