はじめに
焼き芋がおいしい季節になると、売り場で「鹿児島県産」「茨城県産」といった産地の表示を目にすることも多いと思います。
では、さつまいもを最も多く作っているのはどの県で、2位以下にはどの県が続くのでしょうか。
本記事では、農林水産省の作物統計をもとに、さつまいもの産地と生産量のランキングについて、わかりやすくご説明したいと思います。
最新の令和7年産(2025年産)の確報に加えて、全都道府県の数字がそろう令和5年産のトップ10、近年の推移、品種別・用途別の内訳、世界の生産量と原産地までまとめています。
なお、統計ではさつまいもを「かんしょ(甘藷)」と表記しているため、資料名を挙げるときはその表記のまま引用します。
数字は年ごとに変わるため、本文ではいずれも「何年産の、どの資料の数字か」を添えています。
さつまいもの生産量ランキング【令和7年産・都道府県別】
令和7年産のさつまいもの収穫量は全国で69万9,400tで、1位は鹿児島県の21万9,000t、2位は茨城県の19万5,500tです。
3位以下は、千葉県、宮崎県、徳島県、熊本県と続きます(農林水産省「作物統計」令和7年産、2026年6月30日公表の確報)。
ここでは、主な産地6県の数字と、7位以下が載っていない理由を順にご説明します。
主産県6県の収穫量・作付面積・10a当たり収量
令和7年産の統計で、県ごとの数字が公表されているのは次の6県です。
| 順位 | 県 | 収穫量 | 全国に占める割合 | 作付面積 | 10a当たり収量 | 前年産との比較(収穫量) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島県 | 219,000t | 31.3% | 9,240ha | 2,370kg | 100%(700t増) |
| 2 | 茨城県 | 195,500t | 28.0% | 7,790ha | 2,510kg | 98%(3,700t減) |
| 3 | 千葉県 | 80,000t | 11.4% | 3,420ha | 2,340kg | 96%(3,300t減) |
| 4 | 宮崎県 | 69,500t | 9.9% | 3,060ha | 2,270kg | 90%(7,800t減) |
| 5 | 徳島県 | 25,400t | 3.6% | 1,070ha | 2,370kg | 98%(600t減) |
| 6 | 熊本県 | 17,700t | 2.5% | 780ha | 2,270kg | 97%(500t減) |
| — | 全国 | 699,400t | 100% | 31,300ha | 2,230kg | 98%(1万7,600t減) |
出典:農林水産省「作物統計」令和7年産かんしょの収穫量(全国農業地域別・都道府県別)(e-Stat、2026年6月30日公表)。
全国に占める割合は、当サイトが収穫量から計算した値です。
「10a当たり収量」は、10a(1,000m²)あたりの平均の収穫量で、畑の面積あたりのとれ高を表します。
前年産と比べると、鹿児島県は700t増え、ほかの5県はいずれも前年産を下回りました。
減り幅が最も大きかったのは宮崎県で、収穫量は前年産の90%でした。
農林水産省九州農政局が「宮崎の統計情報とデータ分析」のページで公表している資料(「令和7年産かんしょ【拠点だより3月号】」)によると、宮崎県の10a当たり収量は前年産を7%下回りました。
同じ資料は、5月上旬に植えた苗の生育はおおむね順調だったものの、5月中旬以降に植えた苗は夏の高温などの影響でいもの数が少なく、肥大も進まなかったことなどによるとしています。
上位2県で約6割、上位4県で約8割
上位の県を合わせると、全国の収穫量のどれくらいを占めるのかを見てみます。
鹿児島県と茨城県の2県だけで、全国の収穫量の59.3%を占めています。
千葉県と宮崎県を加えた上位4県では80.6%、主産県の6県では86.8%になります。
農林水産省の作物統計に「三大産地」という区分はありません。
収穫量の上位3県を挙げるなら、鹿児島県・茨城県・千葉県です。
令和元年産から令和7年産までの7年間、上位4県の順位は毎年、鹿児島県・茨城県・千葉県・宮崎県の順でした(作物統計の各年産の確報)。
作付面積は鹿児島県、10a当たり収量は茨城県が多い
収穫量の順位は、作付面積の広さと、面積あたりのとれ高の両方で決まります。
作付面積は鹿児島県が9,240haで最も広く、茨城県の7,790ha、千葉県の3,420haが続きます。
一方、10a当たり収量は茨城県が2,510kgで、主産県6県のなかで最も多くなっています。
茨城県の作付面積は鹿児島県の84%ほどですが、収穫量では89%ほどにあたり、面積あたりのとれ高の多さが差を縮めています。
10a当たり収量は天候や病気の影響で年ごとに変わるため、比べるときは同じ年産の数字を見ることが大切です。
7位以下が載っていない理由|全国調査と主産県調査
令和7年産の統計に6県しか載っていないのは、6県しか調べていないためです。
さつまいもの調査は、作付面積は3年ごと、収穫量は6年ごとに全国の都道府県を調べ、それ以外の年は主な産地の県(主産県)だけを調べる仕組みになっています(作物統計 令和7年産の統計表の注)。
主産県は、前回の全国調査の年である令和5年産で、全国の作付面積のおおむね8割を占めるまでの上位の都道府県とされています。
また、主産県だけを調べた年の全国の作付面積と収穫量は、令和5年産の全国調査の結果をもとに推計した値です。
そのため、令和6年産と令和7年産では、7位以下の順位をつけることができません。
全都道府県を並べたランキングは、全国調査の年である令和5年産の統計で見ることになります(次の章)。
注に書かれた周期どおりであれば、令和8年産は作付面積を全国で調べる年にあたり、収穫量の次の全国調査は令和11年産になります。
全都道府県のトップ10【令和5年産・全国調査】
全都道府県の収穫量がそろっている最新の年は、全国調査が行われた令和5年産(2023年産)です。
ここでは、そのトップ10と11位以下の都道府県、市町村の順位についてご説明します。
令和7年産とは年が違うため、前の章の表と数字を比べるときはご注意ください。
令和5年産のトップ10
令和5年産の収穫量の上位10都道府県は次のとおりです。
| 順位 | 都道府県 | 収穫量 | 全国に占める割合 | 作付面積 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島県 | 215,400t | 30.1% | 9,790ha |
| 2 | 茨城県 | 200,200t | 28.0% | 7,730ha |
| 3 | 千葉県 | 91,300t | 12.8% | 3,540ha |
| 4 | 宮崎県 | 68,900t | 9.6% | 3,010ha |
| 5 | 徳島県 | 27,100t | 3.8% | 1,080ha |
| 6 | 熊本県 | 18,400t | 2.6% | 822ha |
| 7 | 大分県 | 9,730t | 1.4% | 425ha |
| 8 | 静岡県 | 8,220t | 1.1% | 442ha |
| 9 | 埼玉県 | 5,770t | 0.8% | 356ha |
| 10 | 神奈川県 | 4,800t | 0.7% | 308ha |
| — | 全国 | 715,800t | 100% | 32,000ha |
出典:農林水産省「作物統計」令和5年産かんしょの収穫量(全国農業地域別・都道府県別)(e-Stat、2024年6月28日公表)。
全国に占める割合は、当サイトが収穫量から計算した値です。
上位10県の合計は全国の90.8%で、さつまいもの生産が一部の県に集中していることがわかります。
6位の熊本県までは、令和7年産の主産県と同じ顔ぶれです。
7位から10位には、大分県・静岡県・埼玉県・神奈川県が入っています。
11位以下の都道府県
11位以下は、高知県(4,480t)、石川県(3,760t)、長崎県(3,750t)、愛知県(3,740t)、新潟県(3,340t)と続きます(令和5年産)。
トップ10に入らなかった関東の都県では、栃木県が3,160t、群馬県が2,750t、東京都が1,030tでした。
北海道は作付面積100ha・収穫量1,870tで、47都道府県のうち25番目でした。
収穫量が最も少なかったのは青森県の81tで、令和5年産では47都道府県すべてで収穫量が計上されています。
市町村のランキングが公表されていない理由
「どの市町村が一番多く作っているのか」という疑問には、最新の公的な統計で答えることができません。
農林水産省の資料によると、作付面積の上位100市町村の調査は、平成18年産(2006年産)を最後に行われていないためです(農林水産省「令和7年度いも・でん粉に関する資料」)。
参考までに、平成18年産の作付面積の上位4市は、茨城県鉾田市(2,330ha)、鹿児島県鹿屋市(2,160ha)、千葉県香取市(1,690ha)、千葉県成田市(1,300ha)でした。
同じ年の収穫量で見ると、鹿屋市(6万8,800t)が鉾田市(5万9,500t)を上回っており、作付面積と収穫量で順位が入れ替わります。
当時の市町村の区分による20年前の数字なので、現在の順位としては使えない点にご注意ください。
鹿児島県と茨城県で多く作られる背景|用途と土地の違い
鹿児島県と茨城県は収穫量では近い数字ですが、作られたさつまいもの使い道は大きく異なります。
鹿児島県は焼酎やでん粉の原料になるさつまいもが多く、茨城県はそのまま調理して食べる生食用と、干し芋などの加工食品用が中心です。
ここでは、農林水産省がまとめた都道府県別の用途の内訳と、公的機関の資料をもとに、主な産地の特徴をご紹介します。
県によって大きく違う「何に使われるか」
まず、主産県6県のさつまいもが、それぞれ何に使われているかを見てみます。
| 県 | 生食用 | 加工食品用 | 焼酎用 | でん粉用 |
|---|---|---|---|---|
| 鹿児島県 | 15.3% | 19.2% | 48.4% | 14.8% |
| 茨城県 | 73.8% | 24.6% | 0.1% | — |
| 千葉県 | 91.6% | 1.7% | 0.0% | — |
| 宮崎県 | 9.1% | 15.4% | 73.0% | 0.9% |
| 徳島県 | 88.5% | 4.4% | 0.0% | — |
| 熊本県 | 93.2% | 5.8% | 0.2% | — |
| 全国 | 51.6% | 16.0% | 22.6% | 4.7% |
出典:農林水産省「かんしょの用途別消費の推移」都道府県別仕向状況(令和7年産、概算値)。
この表は都道府県の報告にもとづく農林水産省地域作物課の調べで、割合は当サイトが各県の生産量に対して計算した値です。
「—」は数量が計上されていないことを示し、残りの割合は種子用・飼料用・輸出用・減耗などです。
焼酎用は、鹿児島県と宮崎県の2県で全国の99.3%を占めています。
令和7年産の表で、でん粉用の数量が計上されているのも、鹿児島県と宮崎県の2県です。
一方、茨城県と千葉県の生食用を合わせると、全国の生食用の60.3%になります。
全国の加工食品用のうち、約43%は茨城県の分です。
加工食品用には、干し芋(蒸切り干し)や菓子の原料のほか、焼き芋・大学いも・惣菜用なども含まれます(同資料の加工食品用の内訳の区分)。
鹿児島県|焼酎・でん粉の原料と、台風・シラス台地
鹿児島県は、収穫したさつまいもの約半分が焼酎の原料に使われる産地です。
令和7年産(概算)では、21万9,000tのうち焼酎用が10万5,932t(48.4%)、でん粉用が3万2,500t(14.8%)でした(農林水産省「かんしょの用途別消費の推移」)。
焼酎用として広く作られている品種が、コガネセンガン(黄金千貫)です(農研機構『NARO』No.26)。
令和6年産の鹿児島県の作付面積は3,841haで、県内の品種で最も多くなっています(農林水産省「かんしょ品種の普及状況」)。
農畜産業振興機構は、南九州でさつまいもが基幹作物として栽培されている背景として、次の点を挙げています(「シラス台地でのでん粉原料用かんしょ栽培」2014年)。
- 南九州は台風の多い地域であること
- シラス台地と呼ばれる火山灰性の土壌は保水性が低く、農作物の栽培に向かないとされること
- さつまいもは台風などの自然災害に強く、比較的安定して生産できること
鹿児島県では、こうした原料用の品種に加えて、べにはるか(499ha)や、安納芋として知られる品種の安納紅(341ha)などの食用の品種も作られています(令和6年産・概算)。
安納芋の特徴は、安納芋の特徴を解説した記事でご紹介しています。
茨城県|全国のべにはるかの約半分と、干し芋
茨城県は、作付けの多くが食用の品種です。
令和6年産(概算)の品種別の作付面積は、べにはるかが4,044ha、シルクスイートが1,104haでした(農林水産省「かんしょ品種の普及状況」)。
続いて、紅まさり(統計上の表記は「べにまさり」)が965ha、紅あずま(統計上の表記は「ベニアズマ」)が858haです。
全国のべにはるかの作付面積7,987haのうち、約半分(51%)が茨城県です。
行方市など霞ヶ浦・北浦の周辺で作られる「行方かんしょ」は、農林水産省の地理的表示(GI)に登録されています。
その登録の資料では、行方台地を中心とする周辺の土壌は、水はけのよい「淡色黒ボク土」だと説明されています(行方かんしょブランド推進協議会「行方かんしょ」明細書)。
そのため、乾燥に強く水はけのよい土を好むさつまいもの栽培に適しているとされています(同)。
茨城県は干し芋(ほしいも)の産地としても知られ、農林水産省は茨城県の干しいものシェアを全国トップと紹介しています(農林水産省「うちの郷土料理 干しいも 茨城県」)。
茨城県の干しいもの大部分は、ひたちなか市・東海村・那珂市で生産されていると紹介されています(同)。
干し芋については、干し芋を解説した記事でご紹介しています。
千葉県・宮崎県・徳島県・熊本県
3位以下の4県にも、それぞれ特徴があります。
- 千葉県(3位): 千葉県は、県内の主な産地として香取市・成田市・多古町を挙げています(千葉県「ちば旬鮮図鑑 さつまいも」)。令和6年産の作付けは、べにはるか(1,818ha)とシルクスイート(1,067ha)が多く、紅あずま(476ha)が続きます。令和7年産(概算)では、生産量の9割以上が生食用です。
- 宮崎県(4位): 令和7年産(概算)では焼酎用が73.0%で、6県のなかで焼酎用の割合が最も高い県です。品種はコガネセンガンが1,854haで最も多く、全国のコガネセンガンの作付けの約99%が鹿児島県と宮崎県に集まっています(令和6年産・概算)。
- 徳島県(5位): 県の北東部の砂地の地域(鳴門市・北島町・松茂町・徳島市)では、「なると金時」が盛んに作られています(農林水産省 GFP「徳島県 なると金時GFPグローバル産地計画」)。品種の統計では、なると金時は高系14号の計に含まれる「鳴門金時」の欄に集計されており、令和6年産の徳島県の907.8haは、すべてこの欄に計上されています。
- 熊本県(6位): 令和6年産の作付けは、べにはるか(449ha)が多く、シルクスイート(177ha)が続きます。令和7年産(概算)では、生産量の9割以上が生食用です。
なると金時の特徴は、なると金時を解説した記事でご紹介しています。
各地で親しまれてきたさつまいもの郷土菓子は、全国のさつまいも郷土菓子を紹介した記事でまとめています。
さつまいもの生産量の推移|基腐病と長期の減少
さつまいもの生産量は、長い目で見ると大きく減り、ここ数年は病気や天候の影響で産地ごとに大きく動きました。
ここでは、令和に入ってからの上位2県の推移と、その背景にあるサツマイモ基腐病、昭和からの長い期間の変化をご説明します。
令和元年〜7年の鹿児島県と茨城県
令和元年産からの全国と上位2県の収穫量は、次のとおりです。
| 年産 | 全国 | 鹿児島県 | 茨城県 | 2県の差 |
|---|---|---|---|---|
| 令和元年(2019年) | 748,700t | 261,000t | 168,100t | 92,900t |
| 令和2年(2020年) | 687,600t | 214,700t | 182,000t | 32,700t |
| 令和3年(2021年) | 671,900t | 190,600t | 189,200t | 1,400t |
| 令和4年(2022年) | 710,700t | 210,000t | 194,300t | 15,700t |
| 令和5年(2023年) | 715,800t | 215,400t | 200,200t | 15,200t |
| 令和6年(2024年) | 717,000t | 218,300t | 199,200t | 19,100t |
| 令和7年(2025年) | 699,400t | 219,000t | 195,500t | 23,500t |
出典:農林水産省「作物統計」各年産のかんしょの収穫量(確報、e-Stat)。
令和5年産以外は主産県だけを調べた年で、全国の値は推計値です。
令和元年産には9万t以上あった2県の差は、令和3年産には1,400tまで縮まりました。
それでも、令和元年産から令和7年産まで、収穫量1位は毎年鹿児島県でした。
鹿児島県の収穫量は、令和元年産の26万1,000tから令和3年産の19万600tまで減り、その後は21万t台で推移しています。
茨城県は令和元年産の16万8,100tから増え、令和5年産以降は20万t前後です。
作付面積は、鹿児島県が1万1,200ha(令和元年産)から9,240ha(令和7年産)に減った一方、茨城県は6,860haから7,790haに増えています。
サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の影響
鹿児島県の収穫量が大きく減った背景には、サツマイモ基腐病の広がりがあります。
サツマイモ基腐病は、つるが枯れ、いもが腐る病気です(農林水産省「サツマイモ基腐病対策について」)。
平成30年度(2018年度)に、宮崎県・鹿児島県・沖縄県のさつまいもの産地で、国内で初めて確認されました(同)。
農研機構は、基腐病の被害は南九州で大きかったと説明しています(農研機構『NARO』No.26「サツマイモ基腐病の克服に向けて」)。
同誌によると、鹿児島県と宮崎県を合わせた収穫量は、2019年の34万tから2021年の26万tへ大きく落ち込みました。
農林水産省の作柄の概要によると、令和2年産の10a当たり収量は前年産を5%下回りました(農林水産省「令和7年度いも・でん粉に関する資料」)。
その理由として、主に宮崎県と鹿児島県での生育期間の日照不足に加えて、基腐病の拡大が挙げられています。
令和3年産も、主に鹿児島県での基腐病の影響から、10a当たり収量は、平均的な年の水準(10a当たり平均収量)の92%にとどまったとされています(同)。
10a当たり平均収量は、前年産を起点とした過去7か年のうち、最高と最低を除いた5か年の平均値です(農林水産省「令和7年産かんしょの作付面積及び収穫量」)。
令和4年産については、天候に恵まれたことに加え、鹿児島県と宮崎県で抵抗性品種への切り替えや防除対策によって基腐病の被害が減ったことが、10a当たり収量が増えた要因とされています(同)。
鹿児島県の10a当たり収量は、令和3年産の1,850kgから令和7年産の2,370kgまで回復しています。
家庭菜園で育てる場合の基腐病への注意は、さつまいもの収穫時期を解説した記事でも触れています。
昭和30年の約10分の1に
もっと長い期間で見ると、さつまいもの生産量は大きく減っています。
全国の収穫量が最も多かったのは、昭和30年産(1955年産)の718万tです(農林水産省「令和7年度いも・でん粉に関する資料」)。
作付面積が最も広かったのは、昭和24年産(1949年産)の44万800haでした(同)。
その後、収穫量は昭和50年産に141万8,000t、平成22年産に86万3,600tまで減りました。
令和7年産の69万9,400tは、昭和30年産の約10分の1です。
使い道も大きく変わっています。
昭和30年度は、でん粉用が29.4%、飼料用が12.2%を占め、生食用は37.9%でした(農林水産省「かんしょの用途別消費の推移」)。
令和7年産(概算)では生食用が51.6%と半分を超え、でん粉用は4.7%、飼料用は0.2%です。
茨城県では、太平洋戦争の前後の食糧統制の時代に栽培が急に増え、昭和20年ごろには作付面積が全国1位だったと記されています(行方かんしょブランド推進協議会「行方かんしょ」明細書)。
その後、需要が食用からでん粉用へ移り、昭和34年のでん粉価格の暴落を境に作付面積は急激に減ったとされています(同)。
品種別・用途別に見るさつまいもの生産
どの県で作られているかに加えて、どの品種が作られ、何に使われているかを見ると、産地の違いがよりわかりやすくなります。
ここでは、農林水産省がまとめた品種別の作付面積と、全国の用途別の数量をご紹介します。
品種別の作付面積|べにはるかが約4分の1
令和6年産(概算)の作付面積を品種別に見ると、べにはるかが7,987haで全体の25.5%を占め、最も多くなっています。
| 順位 | 品種 | 作付面積 | 割合 | 作付面積の多い県 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | べにはるか | 7,987ha | 25.5% | 茨城県・千葉県・鹿児島県 |
| 2 | コガネセンガン | 5,761ha | 18.4% | 鹿児島県・宮崎県 |
| 3 | シルクスイート | 2,507ha | 8.0% | 茨城県・千葉県 |
| 4 | 高系14号(なると金時などを含む) | 2,215ha | 7.1% | 徳島県・鹿児島県・宮崎県 |
| 5 | 紅あずま(ベニアズマ) | 1,679ha | 5.4% | 茨城県・千葉県 |
| 6 | みちしずく | 1,535ha | 4.9% | 鹿児島県 |
| 7 | 紅まさり(べにまさり) | 1,428ha | 4.6% | 茨城県・鹿児島県 |
| 8 | こないしん | 1,427ha | 4.6% | 鹿児島県 |
出典:農林水産省「かんしょ品種の普及状況」(令和7年度いも・でん粉に関する資料。令和6年産・概算値、全体31,267ha)。
作付面積の多い県は、同資料の品種別・都道府県別の表から、当サイトが面積の多い順に抜き出したものです。
べにはるかの割合は、平成27年産の10.2%から、令和6年産には25.5%まで増えました(同資料の品種別作付面積の推移。令和6年産は概算値)。
一方、紅あずまは令和元年産の13.0%から、令和6年産には5.4%まで下がっています。
鹿児島県で多いみちしずくは、同資料の主要品種の特性表で、加工用・でん粉原料用の品種とされ、基腐病への抵抗性に優れると記されています。
各品種の特徴は、次の記事でご紹介しています。
全国の用途別|生食用が約半分、焼酎などのアルコール用が約2割
全国で収穫されたさつまいもの使い道を見ると、令和7年産(概算)では、生食用が36万600tで約半分を占めます。
| 用途 | 数量 | 割合 |
|---|---|---|
| 生食用 | 360,600t | 51.6% |
| アルコール用(焼酎など) | 157,800t | 22.6% |
| 加工食品用 | 112,200t | 16.0% |
| でん粉用 | 33,200t | 4.7% |
| 種子用 | 11,100t | 1.6% |
| 飼料用 | 1,700t | 0.2% |
| 減耗・その他 | 22,900t | 3.3% |
| 合計(生産数量) | 699,400t | 100% |
出典:農林水産省「かんしょの用途別消費の推移」(令和7年度いも・でん粉に関する資料。令和7年産・概算値)。
統計の「アルコール用」は、生切り干し用・蒸留酒用・専売アルコール用の合計とされています(同資料の注)。
都道府県別の表では、令和7年産のアルコール用はすべて「焼酎用」として計上されています。
生食用のうち、市場に出荷される市場販売用は33万2,000t(47.5%)、農家が自分の家で食べる分は2万8,600t(4.1%)です。
県ごとの内訳は、前の章の「県によって大きく違う『何に使われるか』」の表のとおりで、焼酎用・でん粉用は南九州、生食用は関東などの産地が中心です。
世界のさつまいも生産量ランキングと原産地
さつまいもは日本だけでなく、世界の多くの国で作られています。
日本の生産量は世界のなかでは多くありませんが、畑の面積あたりのとれ高には特徴があります。
ここでは、国連食糧農業機関(FAO)の統計をもとに世界の生産量と日本の位置をご紹介し、さつまいもの原産地にも触れます。
世界の生産量の半分以上は中国
FAOの統計(FAOSTAT)によると、2024年の世界のさつまいもの生産量は9,093万tでした(農林水産省「かんしょの主要生産国と生産量」)。
そのうち中国が5,135万tと、半分以上(約56%)を占めています。
中国に続くのはマラウイ(798万t)とナイジェリア(409万t)で、上位にはアフリカの国が多く並んでいます。
日本の生産量は71.7万tで、世界の約0.8%です。
一方、日本の10a当たり収量は2,255kgで、世界平均の1,260kgの約1.8倍です。
なお、農林水産省の資料の表は収穫面積の大きい国から順に並んでおり、日本は31番目です。
生産量の順位は、比べる国の範囲や統計の改訂で変わるため、本記事では順位ではなく割合でお示ししています。
同資料には「2026年6月時点のFAOSTAT公表データに基づき、2020〜2023年のデータを修正」との注があり、過去の数字も改訂されることがあります。
原産地はメキシコを中心とする熱帯アメリカ
さつまいもの原産地は、メキシコを中心とする熱帯アメリカとみられています(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。
農林水産省も、さつまいもはメキシコを中心とする熱帯アメリカで生まれ、紀元前800〜1000年ごろには中央アンデス地方で作られていたと紹介しています(農林水産省「サツマイモはどこからきたの?」)。
15世紀の終わりにコロンブスがヨーロッパへ持ち帰ったのち、アフリカやインド、東南アジアなどへ広がったとされています(同)。
日本へは、1600年前後に中国から琉球(現在の沖縄県)に伝わり、その後、薩摩(現在の鹿児島県)を経て広まったとされています(日本いも類研究会、農林水産省)。
原産地は日本ではありませんが、「さつまいも」という名前は、琉球から薩摩に伝わったことに由来するとされています(農林水産省)。
日本への伝来と普及の歴史は、さつまいもの伝来と歴史を解説した記事で詳しくご説明しています。
よくある質問
さつまいもの産地と生産量について、よく調べられている質問を中心に、短くお答えします。
数字は、とくに断りがない限り、作物統計の令和7年産の確報にもとづいています。
Q1. さつまいもの三大産地はどこですか?
農林水産省の作物統計に「三大産地」という区分はありません。
収穫量の上位3県を挙げるなら、鹿児島県・茨城県・千葉県で、3県で全国の収穫量の70.7%を占めます(令和7年産)。
Q2. さつまいもの生産量日本一の県はどこですか?
令和7年産の収穫量が最も多いのは鹿児島県で、21万9,000t(全国の31.3%)です。
作付面積も鹿児島県が最も広く、令和元年産から令和7年産まで、収穫量1位は毎年鹿児島県でした。
ただし、令和3年産のように2位の茨城県との差が1,400tまで縮まった年もあり、順位は毎年の統計で確かめる必要があります。
Q3. 茨城県と千葉県は全国で何位ですか?
令和7年産の収穫量は、茨城県が19万5,500tで2位、千葉県が8万tで3位です。
全国調査の年である令和5年産でも、茨城県が2位、千葉県が3位でした。
Q4. 一番おいしいさつまいもの産地はどこですか?
産地ごとのおいしさを比べた公的な順位は、当サイトが調べた範囲では見当たりません。
焼き芋の甘さには、加熱でできる麦芽糖と、生の芋に含まれるショ糖などの糖の量と甘さの度合いが関わると説明されています(片山健二「『焼き芋』の甘さの秘密」化学と教育67巻7号、2019年)。
同じ解説では、麦芽糖の量は加熱の方法やでんぷん・酵素の性質に、ショ糖の量は収穫後の貯蔵の期間や条件に左右されるとしています。
そのため、同じ産地のさつまいもでも、品種や貯蔵の状態、焼き方によって味わいは変わります。
貯蔵による甘さの変化はさつまいもの旬と食べ頃を解説した記事、焼き方による違いは家で焼き芋を作る方法を器具別に解説した記事でご紹介しています。
Q5. 干し芋の生産が多いのはどこですか?
干し芋の産地として知られるのは茨城県で、農林水産省は茨城県の干しいものシェアを全国トップと紹介しています(農林水産省「うちの郷土料理 干しいも 茨城県」)。
茨城県の干しいもの大部分は、ひたちなか市・東海村・那珂市で生産されていると紹介されています(同)。
Q6. さつまいもの統計は次にいつ更新されますか?
令和7年産では、2026年2月3日に作付面積と収穫量(概数)が公表され、2026年6月30日に確報が公表されました。
令和8年産も、例年どおりであれば同じころに公表されると見込まれます。
注に書かれた周期どおりであれば、令和8年産は作付面積を全都道府県で調べる年にあたります。
本記事も、新しい統計が公表されたら数字を見直す予定です。
まとめ
さつまいもの産地と生産量について、ポイントを整理します。
最新の統計でも、上位の顔ぶれは近年変わっていません。
- 令和7年産の収穫量は全国で69万9,400tで、1位は鹿児島県(21万9,000t)、2位は茨城県(19万5,500t)、3位は千葉県(8万t)です。
- 上位2県で全国の約6割、上位4県で約8割を占めます。
- 令和6年産・7年産は主産県6県だけの調査で、全都道府県のトップ10は全国調査の年の令和5年産で見ます(7位から10位は大分県・静岡県・埼玉県・神奈川県)。
- 鹿児島県は焼酎用・でん粉用が多く、茨城県と千葉県は生食用が中心です。茨城県は全国のべにはるかの約半分を作付けし、干し芋の産地としても知られます。
- 鹿児島県は基腐病の広がりなどで令和3年産まで収穫量が減り、その後は21万t台で推移しています。令和元年産から令和7年産まで、収穫量は毎年1位です。
- 全国の収穫量は、最も多かった昭和30年産の約10分の1になっています。
- 世界の生産量の半分以上は中国で、日本は世界の約0.8%ですが、10a当たり収量は世界平均の約1.8倍です。
産地による出荷の時期や、店頭で出回る時期の違いは、さつまいもの旬と食べ頃を解説した記事でご紹介しています。
参考資料
本記事の作成にあたって参照した資料です。
- 農林水産省「作物統計調査 作況調査(水陸稲、麦類、大豆、そば、かんしょ、飼料作物、工芸農作物)」令和元年産〜令和7年産のかんしょの収穫量(全国農業地域別・都道府県別)の統計表(e-Stat。令和7年産は2026年6月30日、令和5年産は2024年6月28日公表)
- 農林水産省「令和7年産かんしょの作付面積及び収穫量」
- 農林水産省「令和7年度いも・でん粉に関する資料」(生産状況/かんしょの用途別消費の推移/かんしょ品種の普及状況/かんしょの主要生産国と生産量)
- 農林水産省 九州農政局「令和7年産かんしょ【拠点だより3月号】」(宮崎の統計情報とデータ分析、2026年3月)
- 農林水産省「サツマイモ基腐病対策について」
- 農研機構「NARO No.26 サツマイモ基腐病の克服に向けて」
- 農畜産業振興機構「【第一線から】シラス台地でのでん粉原料用かんしょ栽培〜鹿児島県肝属の田島晴海さん〜」(広報誌、2014年1月)
- 行方かんしょブランド推進協議会「行方かんしょ 明細書」(農林水産省 地理的表示保護制度の登録産品)
- 農林水産省「うちの郷土料理 干しいも 茨城県」
- 千葉県「ちば旬鮮図鑑 さつまいも」
- 農林水産省 GFP「徳島県 なると金時GFPグローバル産地計画」
- 日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』「Ⅱ さつまいもの歴史」
- 農林水産省「サツマイモはどこからきたの?」
- 片山健二「「焼き芋」の甘さの秘密」化学と教育 第67巻第7号、318〜319頁(2019年)
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