スーパーの店頭やお取り寄せサイトで「紅まさり」を見かけて、どんな味なのか気になった方も多いのではないでしょうか。ところが検索してみると、糖度を「14度以上」と書いているサイトと「10〜12度」と書いているサイトがあり、数字が食い違っていて、かえって分からなくなってしまいます。

紅まさりが店頭に並ぶのは、秋から冬にかけての限られた時期です。買うかどうかを決めるタイミングと、こうして調べるタイミングは、ほぼ重なります。ここで「甘くない品種だ」と受け取ってしまうと、本当は好みに合ったかもしれない品種を、そのまま通り過ぎることになります。

本記事では、農研機構や茨城県農業総合センターなどの一次情報をもとに、紅まさりが「甘くない」と言われる理由を3つに整理して、わかりやすくご説明したいと思います。読み終えたときには、甘いか甘くないかという一つの物差しではなく、どういう甘さで、自分の好みに合うかどうかで判断できるようになるはずです。


この記事の要点

  • 茨城県の貯蔵試験(14℃定温保存)では、糖度計の数値は紅あずまより低いのに、甘味度は同程度と報告されています
  • 同じ試験で、掘取直後から3か月後まで甘味はほぼ一定でした
  • 焼き芋で人気のシルクスイートは、紅まさりを交配親として生まれた品種です

紅まさり(べにまさり)とは?基本の品種データ

紅まさりは2001年に「かんしょ農林55号」として命名登録された青果用のさつまいもで、肉色は淡黄、蒸すとやや粘質になる、食味に優れた品種です。まずは品種としての素性を、公的なデータで押さえておきます。

項目内容
品種名べにまさり(流通名:紅まさり)
農林番号かんしょ農林55号
命名登録2001年12月
品種登録2005年3月23日(登録番号12964)
育成機関農研機構 九州沖縄農業研究センター
交配1992年(平成4年)/母「九州104号」×父「九系87010-21」
系統名九系92015-7 → 九系191 → 九州130号
いもの形紡錘形(ぼうすいけい:中央がふくらんだ形)・大きさは中
皮色/肉色赤/淡黄
蒸しいもの肉質やや粘質
食味上(高系14号は中)
上いも重(収量)高系14号比で標準栽培+15%、早掘マルチ栽培+26%
病害虫抵抗性サツマイモネコブセンチュウ中/ミナミネグサレセンチュウ中/黒斑病やや強〜強
貯蔵性やや易(コガネセンガン・高系14号より優れる)
用途青果用
普及見込み地域全国のかんしょ作地域

(出典:農研機構「べにまさり」品種紹介ページ、九州沖縄農業研究センター報告「カンショ新品種『べにまさり』の育成」)

農研機構が1992年に交配した青果用品種「かんしょ農林55号」

紅まさりを育成したのは、農研機構の九州沖縄農業研究センターです。1992年(平成4年)に、母「九州104号」と父「九系87010-21」を人工交配して生まれました。

その後は「九系92015-7」という系統番号で選抜が進み、1997年に「九系191」を経て、同年12月には各地で地域適応性を調べるために「九州130号」の系統名で関係機関へ配付されています。そして2001年12月、「かんしょ農林55号 べにまさり」として命名登録されました。

育成の狙いは、当時の主力だった「高系14号」を食味でも収量でも上回る青果用品種をつくることでした。実際、蒸しいもの食味評価は「上」で、高系14号の「中」より優ります。収量にあたる上いも重も、標準栽培で高系14号より15%、早掘マルチ栽培では26%高いという結果が報告されています。

「まさり」という名前が何に勝ることを指しているのか、育成機関の資料に明記はありません。ただ、高系14号を上回ることを目標に育てられた経緯とは、きれいに重なります。なお紅まさりは青果用の品種であり、でん粉原料用でも焼酎用でもありません。

「紅まさり」と「べにまさり」は同じ品種。表記が2通りある理由

検索していると「紅まさり」と「べにまさり」の両方が出てきて、別の品種かと迷った方もいるのではないでしょうか。結論から言うと、まったく同じ品種です。品質や規格の違いを表しているわけでもありません。

育成機関である農研機構や、農林水産省の資料での正式な表記は、ひらがなの「べにまさり」です。一方、店頭やお取り寄せサイトで使われるのは漢字の「紅まさり」で、検索されている表記もこちらに集中しています。つまり公的な文書はひらがな、売り場と検索は漢字、という住み分けが起きているわけです。

さつまいもの品種名には、こうした表記のゆれがしばしば見られます。「紅はるか」も正式にはひらがなの「べにはるか」ですし、「紅あずま」も「ベニアズマ」とカタカナで書かれることがあります。どちらの表記で探しても同じものにたどり着きますので、通販で品種名を検索するときは両方を試してみてください。

登録年が2001年と2005年の2つあるのは、制度が違うから

紅まさりについて調べると、登録年として「2001年」と書いてあるページと「2005年」と書いてあるページの両方に出会います。これはどちらかが間違っているわけではありません。2つの登録は、まったく別の制度によるものです。

2001年12月のほうは「命名登録」です。農林水産省の育成品種として「かんしょ農林55号 べにまさり」という名前が公表された時点を指します。農林番号が付くのは、この命名登録によるものです。

2005年3月23日のほうは、種苗法にもとづく「品種登録」です。こちらは育成者の権利を保護するための制度で、登録番号12964が与えられています。なお農研機構の品種紹介ページによれば、この育成者権の存続期間は20年で、2025年3月23日に満了しています。農林番号と登録番号という2つの番号が存在するのは、この2つの制度が併存しているためです。

紅まさりを紹介しているページには、この制度の違いに触れないまま片方の年だけを載せているものが多く、そのため読者からは情報が食い違っているように見えてしまいます。品種名を調べていて登録年が2つ出てきたら、「命名登録」と「品種登録」のどちらを指しているのかを確かめてみてください。

皮は赤、中は淡黄。高系14号より黄色みが強いのが見分けどころ

紅まさりの見た目は、いかにもさつまいもらしい姿をしています。いもの形は紡錘形で、大きさは中くらいです。形の揃いは比較的よいほうで、皮の色は赤、中の肉色は淡黄と報告されています。

ここで押さえておきたいのが肉色の濃さです。育成論文には、徳島県での試験結果として「蒸いもの肉色は黄で『高系14号』より濃かった」と記されています。切ったときに「思ったより黄色い」と感じたら、それは紅まさりらしい特徴と言えます。

もう一つ、紅まさりには大いもや丸いもになりやすいという性質があります。育成論文でも「短紡錘形になりやすく、各県の調査でも『丸いも』と評された」と記録されており、産地ではこれが課題になってきました。茨城県では栽植密度や挿苗の節数を調整して、扱いやすいサイズに収める栽培技術が組み立てられています。

店頭でSサイズやSSサイズの紅まさりが売られていることがあるのは、この品種特性を規格の作り分けで扱いやすくした結果と考えられます。大きなさつまいもの扱いについては、「大きすぎるさつまいも」で焼き芋はできる?美味しく焼くコツと活用法のページで詳しくご説明しています。

主産地は茨城県と宮崎県。「ひなたスイート」はブランド名

紅まさりの出荷元としてはっきり確認できるのは、茨城県と宮崎県です。茨城県では行方市を中心にJAなめがたが「紅まさり(べにまさり)」の名前で出荷しており、宮崎県では串間市のくしまアオイファームが生産から貯蔵まで手がけています。

茨城県が主産地になっているのは、育成の段階からの経緯があります。育成論文によれば、紅まさりは茨城県で準奨励品種に採用され、最終的な普及面積は750haが見込まれていました。あわせて徳島県では当面20ha、佐賀県でも普及が見込まれています。大分県の奨励品種決定調査でも、早掘栽培で「ベニアズマ」より10%多収で、外観と食味が優れるという結果が出ています。栽培適地は全国のかんしょ作地域とされており、産地を選びにくい品種です。

ここで知っておくと役に立つのが、紅まさりには別名で売られている商品があるという点です。くしまアオイファームの商品情報では、紅まさりを「ひなたスイート」という名称で扱っています。宮崎県の別名である「日本のひなた」にちなんだ名前です。

つまり「ひなたスイート」を買ったことがある方は、すでに紅まさりを食べている可能性が高いことになります。品種名だけで検索していると、この商品にはたどり着けません。紅まさりを探すときは、ブランド名でも売られていることを頭の片隅に置いておくと、選択肢が広がります。

[画像挿入推奨: 紅まさりの外観(皮の赤色と紡錘形が分かるもの)/alt「紅まさりの外観」]

「紅まさりは甘くない」と言われる3つの理由

紅まさりは糖度計の数値が紅あずまより低いものの、糖の構成比が違うため、甘味度は同程度と報告されています。「紅まさりは甘くない」という声は実際に検索結果にも現れますが、この評価には3つの原因が絡んでいて、そのどれもが紅まさりそのものの欠点ではありません。順に見ていきます。

理由①|比較対象が紅はるかや安納芋に固定されている

いま焼き芋の甘さの基準になっているのは、紅はるかや安納芋だと言われています。蜜がしたたるあの甘さを標準として紅まさりを食べれば、控えめに感じるのは自然なことです。

ところが比較する相手を変えると、評価はあっさり裏返ります。育成論文では、蒸しいもの糖度(Brix値)は「高系14号」や「コガネセンガン」より高いと報告されています。

高系14号は、なると金時をはじめとする各地のブランド芋の母体になっている伝統品種です。その高系14号より糖度が高いのですから、紅まさりは甘みの弱い品種ではありません。高系14号については「高系14号」の特徴とは?伝統品種の魅力と他品種との徹底比較のページで詳しくご説明しています。

つまり「甘い」「甘くない」は品種に固定された性質ではなく、何と比べたかで反転する相対的な評価にすぎません。紅はるかは貯蔵によって甘みがさらに伸びると言われる品種なので、そもそも土俵が同じではないという事情もあります(紅はるかの特徴|焼き芋好きに人気の秘密と他品種との違い)。

理由②|Brixは低くても、糖の構成比が違うため甘味度は同程度

数字が低く出ること自体が、誤解の入口になりました。そしてここが、紅まさりを理解するうえで最も興味深いところでもあります。

茨城県農業総合センターが、紅まさりと紅あずま(ベニアズマ)を14℃で定温保存し、掘取後3か月間の食味を比べた試験を行っています。その結果が、次のようなものでした。

紅まさりのBrix(糖度計で測る値)は紅あずまより低い。ところが甘味度では同程度で、食味官能試験の甘味にも両者の差がなかった。(茨城県農業総合センター「かんしょ『べにまさり』の掘取後3ヶ月間の食味特性」平成17年度/10月中旬収穫・14℃定温保存・5段階の食味官能試験)

ここでいう甘味度とは、含まれる糖ごとの相対的な甘さの強さを合算した値のことです。糖度計の数字では負けているのに、計算上の甘味度でも、実際に食べ比べた官能試験でも差がなかった、というのがこの試験の結論になります。

なぜこんなことが起きるのでしょうか。同じ試験が、その理由にあたるデータも示しています。

紅まさりはグルコースとフルクトースの割合が高く、紅あずまはショ糖とマルトースが糖組成の大部分を占める。(出典同上)

つまり2つの品種は、含んでいる糖の構成比が違うということです。なお、紅まさりにショ糖やマルトースが含まれないという意味ではありません。JAなめがた甘藷部会連絡会が茨城県農業総合センターの監修を受けて作成した『焼き芋の話』でも、紅まさりについて「麦芽糖とショ糖に、ねっとりとした甘さの果糖とさわやかな甘さのブドウ糖が含まれます」と紹介されています。

糖は種類によって甘味の強さが異なるため、同じ量が入っていても感じ方は一致しません。そしてBrixは糖の量に近い指標であって、甘さの体感を直接測っているわけではないのです。糖度の指標そのものについては、さつまいもの糖度(Brix値)とは?甘さの指標「糖度」の秘密のページで詳しくご説明しています。

この結果は、紅まさりを選ぶときの判断を変えます。濃厚すぎる甘さが少し重いと感じている方にとって、この甘さの出方はむしろ長所として働きます。一方で、蜜がしたたる紅はるかの甘さそのものを求めている方には、紅まさりは物足りなく映る可能性が高いでしょう。甘さが足りないのではなく、甘さの出方が違う品種だと考えると、しっくりきます。

理由③|出回っている糖度の数値が食い違い、測定条件が書かれていない

冒頭で触れた、サイトごとに糖度の数字が違うという問題です。当サイトで確認したかぎり、公的機関の資料と、通販事業者や個人が運営するページとでは、書かれ方が大きく異なっていました。

情報源の種類記載されている糖度測定条件出典表記
農研機構(育成論文)高系14号・コガネセンガンより高いあり(蒸しいも)あり
茨城県農業総合センター紅あずまより低い(Brix)あり(14℃定温保存・蒸しいも)あり
通販事業者・個人運営ページ(3件)「10〜12度」「14度前後」「14度以上」と一致しないいずれも記載なしいずれも記載なし

(2026年9月4日時点、当サイト調べ)

数値が食い違っているだけでなく、後者はいずれも測定条件も出典も書かれていません。これでは、どれを信じるかを読者が判断できません。

そもそもBrixは、溶液に溶けている固形分の濃度を測る指標です。糖だけを抜き出して測っているわけではなく、加熱するとでん粉も測定対象に入ってきます。さらに、加熱で水分が飛べば、糖が増えていなくても数値は上がります。焼き芋や干し芋の糖度が高く出るのは、この水分の減少が効いているためです。

だからこそ、生なのか、蒸しなのか、焼きなのか。貯蔵は何日か。これらを書いていない数値は、品種どうしの比較には使えません。

参考までに、千葉県の生産技術の手引きでは、焼きいもの甘味度を条件つきで示しています。その条件は「遠赤外線加熱器200℃40分間加熱、平成22〜24年産の平均値」です(千葉県農林水産技術会議『新品種活用による産地育成を目指したサツマイモの高品質生産技術・販売促進支援の手引き』平成27年3月)。条件が書かれていれば、数値は比較に使えます。

紅まさりの糖度として言えるのは、条件をそろえた相対値だけ

では結局、紅まさりの糖度は何度なのでしょうか。一次情報が示しているのは相対的な評価だけで、絶対値は示されていません。

はっきり言えるのは、次の2つです。

  • 農研機構(育成論文):蒸しいもの糖度は「高系14号」「コガネセンガン」より高い
  • 茨城県農業総合センター:Brixは「紅あずま」より低い。ただし甘味度は同程度

一見すると矛盾しているように読めますが、そうではありません。比較している相手が違うだけです。

高系14号やコガネセンガンと並べれば紅まさりのほうが上、紅あずまと並べればBrixは下、けれど甘味度は互角、ということになります。これが、公的なデータから言える紅まさりの位置です。

数値がいくつかという情報は、条件が揃っていなければ意味を持ちません。持ち帰っていただきたいのは「何度か」ではなく、「どの品種と比べて、どういう甘さか」という見方のほうです。

紅まさりの食感と、シルクスイートにつながる系譜

紅まさりはホクホク系ではなくやや粘質の品種で、焼き芋で人気のシルクスイートの交配親にあたります。甘さの次に気になるのが食感ではないでしょうか。紅まさりは、ホクホクとねっとりのどちらでもない、独特の位置にいます。

ホクホク系ではなく「やや粘質」。掘取直後から3か月後まで変わらない

蒸したときの肉質を、農研機構は「やや粘質」と評価しています。育成論文でも、蒸しいもは「甘みが強く、やわらかくて食べやすい」「なめらかで、甘く、食味評価は高い」と表現されています。ホクホク系とねっとり系の分類については、焼き芋の「ホクホク系」と「ねっとり系」の違いとはのページで詳しくご説明しています。

なお資料によっては「やや粘質」と「粘質」の両方の表記が出てきます。評価した機関と試験の条件が違うためで、「ホクホク系ではない」という点ではどちらも一致しています。

もう一つ、紅まさりの食感には見逃せない性質があります。掘取直後から3か月後まで、肉質が一貫して粘質のまま変わらないのです。(茨城県農業総合センター、14℃定温保存)

比較対象になった紅あずまは、掘取直後は粉質で、3か月かけて粘質へと変化していきます。同じ試験の中で、紅まさりだけが最初から最後まで粘質でした。つまり紅まさりは、いつ食べても食感がぶれにくい品種だと言えます。

一方で、産地や小売の紹介文を読むと表現が割れています。JA常陸は「ホクホク感としっとり感の両方を合わせ持つ、バランスの良い食感」とし、JAみやざきは「焼き芋にするとホクホクとした食感」と紹介しています。一次評価の「やや粘質」とはずれて見えますが、これも比較対象の違いで説明がつきそうです。紅はるかや安納芋のねっとり感を基準にすれば、紅まさりは相対的にホクホク寄りに感じられるためです。

ただし、繊維が少なくなめらかという評価は、公的資料と流通の双方で一致しています。さつまいもの繊維(筋)については、さつまいもの筋が多い原因は何?のページもあわせてご覧ください。

紅あずまとの違いは、粉質か粘質かに加えて糖の構成比にある

紅まさりと紅あずまは、同じ茨城県の試験で直接比較されている組み合わせです。その分、違いがはっきりしています。

食感の違いは、すでに触れたとおりです。紅あずまは掘取直後が粉質で、貯蔵するにつれて粘質へ移っていきます。紅まさりは最初から粘質で、時期による振れ幅が小さいという特徴があります(「紅あずま」の特徴と魅力|ホクホク食感が自慢の定番さつまいも)。

そして違いは、もう一段深いところにも及んでいました。紅まさりはグルコースとフルクトースの割合が高く、紅あずまはショ糖とマルトースが大部分を占める。含んでいる糖の構成比が違います。

Brixの数値は紅あずまのほうが高く出ますが、甘味度で比べると同程度でした。こうなると「どちらが甘いか」という問いは、あまり意味を持ちません。どちらの甘さが自分の好みかという選び方に切り替えたほうが、納得のいく買い物になります。

紅まさりはシルクスイートの交配親

紅まさりの名前を知らなくても、シルクスイートなら食べたことがあるという方は多いはずです。実はこの2つには、親子の関係があります。

シルクスイートは、「春こがね」に「紅まさり」を交配して生まれた品種です(千葉県農林水産技術会議『サツマイモ栽培技術指針』令和5年3月)。育成したのはカネコ種苗で、登録品種としての登録名はHE306、育成者権者もカネコ種苗が持っています。「シルクスイート」の名称が商標登録されたのは2011年、品種登録は2018年と紹介されています。紅まさりの品種登録が2005年ですから、親のほうが13年先に登録されていた計算になります。

シルクスイートといえば、絹のようになめらかな舌触りが持ち味です。そして紅まさりもまた、繊維が少なくなめらかだと評価されている品種でした。カネコ種苗もシルクスイートを「肉質はしっとりとした粘質で舌ざわりが良く、甘みが強い品種」と説明しており、粘質でなめらかという評価は、紅まさりへの評価とそのまま重なります。

シルクスイートのあのなめらかさは、紅まさりから受け継いだ形質である可能性があります。ただし、どの形質がどちらの親に由来するのかを特定した資料は見つかっていないため、ここは断定を避けておきます。シルクスイートについては、シルクスイートの特徴とは?紅はるかとの違いや選び方・保存方法まで徹底解説のページで詳しくご説明しています。

シルクスイートが好きな方にとって、紅まさりは「あの舌触りのルーツ」を確かめられる品種です。食べ比べてみると、共通する部分と違う部分の両方が見えてきて、興味深い体験になるはずです。

5品種の比較表|紅まさりは粉質と粘質の中間に位置する

紅まさりの立ち位置を、代表的な品種と並べて確認しておきます。

品種食感タイプ甘さの傾向品種の位置づけ向く食べ方
紅まさりやや粘質(中間)後を引かない上品な甘さ農研機構育成/かんしょ農林55号(2001年命名登録)焼き芋、天ぷら、菓子材料
紅はるかねっとり系非常に強い農研機構育成/かんしょ農林64号焼き芋、干し芋
シルクスイートしっとり系(高水分)上品な甘さカネコ種苗育成/登録品種(登録名HE306)焼き芋、スイーツ
紅あずまホクホク系(粉質)素朴な甘さ農林認定品種/東日本の定番焼き芋、天ぷら
高系14号ホクホク系(粉質)あっさり登録制度以前からの伝統品種天ぷら、菓子材料

※食感と甘さの傾向は、貯蔵期間と加熱方法によって変わります。また「甘さの傾向」は流通上よく使われる表現をまとめたもので、公的機関が測定した数値ではありません。

こうして並べると、紅まさりが粉質側の紅あずま・高系14号と、粘質側の紅はるかのちょうど中間に位置しているのが分かります。品種ごとの向き不向きは、焼き芋に向く品種を解説した記事や自分好みのさつまいもの品種の選び方のページもあわせてご覧ください。

なお、徳島県のブランド芋として知られるなると金時も、高系14号の系統です(「なると金時(鳴門金時)」の特徴とは?発祥から人気品種との違いまで徹底解説)。紅まさりは育成の過程でその高系14号と比較され、食味でも収量でも上回る評価を得た品種です。

紅まさりの旬と入手方法

紅まさりの収穫は産地によって7月から11月ごろで、産地の熟成を経た秋から冬が食べ頃です。スーパーより通販と直売所で見つかりやすい品種でもあります。味の見当がついたら、次は入手の話です。紅まさりには、他の品種とは違う事情がいくつかあります。

公的試験では掘取直後から3か月後まで甘味はほぼ一定

さつまいもは寝かせないと甘くならない、と言われます。これは広く知られている話で、紅あずまをはじめとする品種では実際にそのとおりです。

ところが紅まさりには、この常識がそのまま当てはまりません。茨城県農業総合センターの試験(14℃定温保存)では、紅まさりの甘味は掘取直後から3か月後までほぼ一定で、安定した食味特性を示しました。肉質も一貫して粘質のままです。同じ試験で比較された紅あずまが、粉質から粘質へと変化していったのとは対照的でした。

この結果は、育成時の評価とも噛み合います。育成論文は紅まさりを「早期肥大性で収量性も高く、いもの形状も良いことから、作期拡大のための早掘用品種としても期待できる」と評価しており、早掘マルチ栽培での上いも重は高系14号を26%上回ります。早い時期に掘っても品質が揃いやすいことが、早掘りの作型を支えていると考えられます。さつまいも全般の熟成については、さつまいもの熟成とは何ですか?のページで詳しくご説明しています。

とはいえ、産地側は熟成(収穫後にしばらく貯蔵して食味を整えること)を経てから出荷しています。くしまアオイファームは、熟成期間として2か月を置くとしています。つまり店頭やお取り寄せで手に入る紅まさりは、すでに産地で熟成済みです。家庭でさらに長く寝かせなくても、おいしく食べられると考えてよいでしょう。掘りたての紅まさりを味わえるのは、直売所や生産者からの直送が中心になります。

収穫は産地で7月〜11月。食べ頃は秋から冬

食べ頃の案内は、産地によって少しずれます。

産地収穫熟成食べ頃
くしまアオイファーム(宮崎県串間市)7月〜11月2か月9月〜1月
JA常陸(茨城県)9月〜11月期間の記載なし12月〜3月

2か月ほどの差は、産地の作型の違いによるものと考えられます。宮崎は収穫の開始が早く、7月から掘り始めます。早掘り適性の高い品種であることが、こうした作型の幅につながっているのでしょう。

買う側からすると、9月から3月まで、どこかの産地の紅まさりが食べ頃を迎えているという理解でよさそうです。早い時期に出回るものは早掘りのものですが、紅まさりの場合はそれで甘味が落ちにくいと考えられます。

ただし、その根拠は2つに分かれます。早掘り適性の高さは育成論文の収量・肥大性のデータによるもの、掘取後の食味の安定性は茨城県の貯蔵試験によるものです。茨城県の試験は10月中旬に収穫したいもの貯蔵経過を追ったもので、早掘りと通常掘りを比べたわけではありません。

スーパーより通販と直売所。検索結果の大半が産直サイト

紅まさりを探すとき、最初に行くべき場所はスーパーではありません。「紅まさり」で検索すると、検索結果の多くが通販サイト、産直サイト、苗の販売ページ、動画で占められています(2026年9月4日時点、検索結果の上位20件を当サイトで確認)。これは裏を返せば、紅まさりが主に通販と産直で流通している品種だということです。

具体的な入手先としては、次のようなところがあります。

  • JAなめがた(茨城県行方市)の産地直送
  • くしまアオイファーム(宮崎県串間市)の商品
  • 産直プラットフォームや農協系のオンラインショップ

規格の作り分けも進んでいて、SサイズやSSサイズの小ぶりなもの、訳あり・不揃い品なども流通しています。そしてもう一つ、先ほど触れた「ひなたスイート」の存在を忘れないでください。品種名で検索して見つからないときでも、ブランド名で探すと在庫があることがあります。

見かけにくいのは、作付面積の上位に入らないため

そもそも、なぜ紅まさりはスーパーで見かけないのでしょうか。大きな理由として考えられるのが、栽培されている面積が上位品種に届いていないことです。

農林水産省がまとめている品種別の作付シェアでは、上位3品種は次のようになっています。

  • べにはるか:24.7%
  • コガネセンガン:20.2%
  • シルクスイート:9.7%

(農林水産省「サツマイモの品種について教えてください。」/令和6年度いも・でん粉に関する資料)

この上位3品種で全体の半分以上を占めており、紅まさりはここに入っていません。大手小売の売り場は流通量の多い品種で構成されるため、紅まさりが定番の棚に並ぶ機会は限られます。

ただ、これは悪いことばかりではありません。流通量が少ないということは、見つけたときが買い時だということでもあります。シーズン中に店頭や産直で紅まさりを見かけたら、その場で確保しておくくらいでちょうどよいかもしれません。

紅まさりのおいしい食べ方と保存方法

紅まさりは低い温度で時間をかけて加熱すると甘さが出やすくなります。焼き芋のほか、天ぷらや菓子の材料にも向くと紹介されている品種です。ここからは、手に入れたあとの話を、選ぶ・焼く・応用する・しまう、の4つの順に見ていきます。

ステップ1|太さが均一で皮にハリのあるものを選ぶ

売り場で紅まさりを選ぶときの見どころは、他のさつまいもと基本的に同じです。

  • 紡錘形で、太さが均一なもの
  • 皮にハリとツヤがあり、しなびていないもの
  • 持ったときに、大きさの割にずっしり重いもの
  • 表面に深い傷や黒いくぼみがないもの

皮にシワが寄っているものは、水分が抜けています。選び方の詳細は、美味しいさつまいもの見分け方のページで詳しくご説明しています。

紅まさりならではの注意点は、サイズの選び方です。この品種は大いもや丸いもになりやすいため、売り場でも大ぶりのものに当たることがあります。焼き芋にするなら、極端に大きいものより、中くらいで細長いものを選んだほうが火の通りが均一になります。大きいものは、切り分けて天ぷらや菓子の材料に回すほうが扱いやすいでしょう。産直でSサイズやSSサイズが選べる場合、焼き芋用にはそちらが向いています。

ステップ2|低い温度で時間をかけて加熱する

紅まさりの甘さを引き出す条件は、加熱の温度と時間です。さつまいもが焼くと甘くなるのは、加熱で糊化(こか:でん粉が水を含んで柔らかく変化すること)したでん粉にβ-アミラーゼという酵素が働き、麦芽糖(マルトース)をつくり出すためです。

ここで効いてくるのが温度帯になります。日本いも類研究会によれば、でん粉の糊化開始温度は概ね65〜75℃、β-アミラーゼが働く温度は70℃前後とされています。そして、この酵素が熱で働かなくなる失活温度も、品種間で差がありながら70℃前後です。

つまり、でん粉が糊化してから酵素が失活するまでの、限られた温度帯をどれだけ長く保てるかで甘さが決まります。高温で一気に焼くと、この時間帯を通り過ぎてしまいます。低温でじっくり、と言われるのはこのためです。糖化の仕組みについては、さつまいもの甘さの秘密「β-アミラーゼ」を分かりやすく解説しますおよびさつまいもの甘さの秘密|「熟成」「糊化」「糖化」とはのページで詳しくご説明しています。

オーブンを使うなら、高温で短時間ではなく、低めの温度で長めに焼いてみてください。そのほうが、酵素の働く温度帯を長く保てます。電子レンジの短時間加熱で甘さが出にくいのも同じ理屈で、急速に温度が上がるため、酵素が働く時間を確保できません。レンジを使う場合も、低いワット数で長めに加熱したほうが、酵素の働く温度帯を保ちやすいと考えられます。

なお、紅まさりに固有の最適温度と加熱時間を示した公的なデータは見つかりませんでした。他品種の数値をそのまま当てはめるのは適切ではないため、ここでは原則だけをお伝えしています。参考として、前述の千葉県の手引きが焼きいもの評価に用いている条件は「遠赤外線加熱器200℃40分間加熱」です。

最後に、焼き上がりの見た目についても触れておきます。紅まさりは蜜が出にくいと紹介されることがあり、切ったときに蜜がしたたる紅はるかのような見え方にはならないようです(この点は通販事業者や個人メディアの紹介にもとづくもので、一次情報では確認できていません)。甘さの出方が違う品種ですので、蜜の有無で判断しないほうが実態に合います。焼き芋の蜜については、焼き芋の蜜とは?その正体と甘さの秘密を徹底解説のページで詳しくご説明しています。

[画像挿入推奨: 紅まさりを焼いた断面(淡黄の肉色が分かるもの)/alt「紅まさりの焼き芋の断面」]

ステップ3|焼き芋以外なら天ぷらや菓子の材料に

紅まさりの上品な甘さは、焼き芋以外でも活きます。紹介されることが多いのは、天ぷら、大学芋、干し芋です。

繊維が少なくなめらかという特性は、裏ごしを使う菓子との相性がよさそうです。蒸して裏ごしすれば、スイートポテトやモンブランの生地に使えます。甘さが後を引かないぶん、砂糖を加える料理でも重くなりにくいという利点もありそうです。煮崩れしにくく、形を残したい料理にも使えるとされています。

大学芋のように蜜をからめる料理では、芋そのものの甘さが強すぎると全体がくどくなりがちです。そこに紅まさりの控えめな甘さがちょうど収まる、という考え方ができます。

ただし、これらの食べ方は通販事業者や個人メディアの紹介にもとづくもので、公的な試験データで裏づけられたものではありません。まずは焼き芋で品種の素の味を確かめてから、他の調理に広げていくのがおすすめです。

ステップ4|常温で保存し、長く置くなら焼いてから冷凍する

さつまいもは低温に弱い作物です。紅まさりも例外ではないので、生のいもを冷蔵庫で保存するのは避けてください。新聞紙で1本ずつ包み、段ボール箱や紙袋に入れて、風通しのよい常温の場所に置きます。保存方法の詳細は、さつまいもは冷蔵庫で保存しても大丈夫?正しい保存方法と長持ちのコツのページで詳しくご説明しています。

保存の面では、紅まさりに心強い性質があります。農研機構の評価では、貯蔵性はやや易とされており、育成論文では「コガネセンガンや高系14号より優れ、やや易である」と記されています。箱で手に入れても扱いやすい部類に入ります。

それでも食べきれない量があるときは、焼き芋にしてから冷凍してください。このとき気をつけたいのが、冷めるまでの時間です。焼き上がった芋を常温に長く置くと傷みの原因になりますので、粗熱が取れたら早めに1本ずつラップで包み、冷凍庫に入れてください。食べるときは冷蔵庫での解凍か、電子レンジで温め直します。冷凍のコツは焼き芋の冷凍保存の方法を解説した記事、保存中の安全面については焼き芋の食中毒と保存の注意点を解説した記事をあわせてご覧ください。

なお、店頭で買った紅まさりは産地で熟成を済ませたものです。家庭でさらに寝かせるより、おいしいうちに食べきる前提で量を決めたほうがよさそうです。

紅まさりについてよくある質問

紅まさりについて検索されることの多い疑問を、3つまとめました。

Q. 紅まさりのカロリーはどのくらいですか?

公的な数値としてはっきりしているのは、蒸したさつまいも(塊根・皮なし)が100gあたり131kcalという値です。焼き芋は加熱で水分が抜けるぶん、同じ重さあたりでは高くなり、151kcalとされています(文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」)。

ただしこれはさつまいも全般の数値であって、紅まさりに固有の測定値ではありません。品種による差より、食べる量と調理法による差のほうが大きくなります。カロリーの詳細は、焼き芋のカロリー|100g151kcal・1本の目安と糖質のページで詳しくご説明しています。

Q. 紅まさりの苗は手に入りますか?

種苗会社が切苗を扱っており、通販でも取り寄せられます。ただし栽培の方法については、この記事では扱っていません。紅まさりは大いもや丸いもになりやすい品種のため、家庭菜園でも形の揃いには工夫が要ります。

Q. 紅まさりは焼酎用の品種ですか?

いいえ、紅まさりは青果用として育成された品種です。焼酎の原料として広く使われているのはコガネセンガンで、こちらは用途がはっきり分かれています。「紅まさり 焼酎」で検索される方がいるのは、名称が似た芋焼酎の銘柄と混同されているためかもしれません。

まとめ|紅まさりが向く人と向かない人

紅まさりは後を引かない甘さを好む方に向き、蜜がしたたる濃厚な焼き芋を求める方には物足りなく感じられる品種です。ここまでの内容を、3つに絞って整理します。

  • 糖度計の数値は控えめでも、甘さは弱くない。 紅あずまとの比較試験(14℃定温保存)で、Brixは低いのに甘味度は同程度でした。含んでいる糖の構成比が違うためです
  • 掘取直後から甘い品種で、店頭のものは産地で熟成済み。 家庭で長く寝かせなくてもよく、買ってきたらおいしいうちに食べきる前提で量を決められます
  • シルクスイートの交配親にあたる。 あの絹のような舌触りのルーツを、親の側から味わえます

紅まさりを調べ始めると、つい「甘い品種か、甘くない品種か」という一つの物差しで判断したくなります。けれど公的なデータが示していたのは、甘さには量だけでなく質があり、品種によって出方が違うという事実でした。この見方を持つと、紅はるかもシルクスイートも紅あずまも、優劣ではなく好みで選べるようになります。

次にできることは、食べ比べです。紅まさりを1本手に入れて、いつも食べている品種と同じ焼き方で並べてみてください。糖度の数字では見えなかった違いが、口の中ではっきり分かるはずです。

品種の最新情報は、農研機構や各産地のJA等でご確認ください。品種ごとの違いについては、紅はるかの特徴、シルクスイートの特徴、紅あずまの特徴、高系14号の特徴、ホクホク系とねっとり系の違いの各ページでもご説明しています。

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