はじめに

大学芋や芋けんぴ、スイートポテトなど、さつまいもを使ったお菓子は、毎日のおやつから地域の行事まで、さまざまな場面で親しまれています。

一方で、「あの芋のお菓子は何という名前?」「どこの地域のお菓子?」と気になっても、和菓子・洋菓子・郷土菓子が入り混じっていて、全体をつかみにくいのではないでしょうか。

本記事では、さつまいものお菓子を和菓子・洋菓子・郷土菓子・干し芋などの加工品に分けて一覧にし、名前の由来や伝わる地域、さつまいもの使い方について、わかりやすくご説明したいと思います。

名前の由来や歴史は、農林水産省や日本いも類研究会などの資料をもとにまとめ、説が分かれるものは複数の説をご紹介します。

作り方のレシピや、お店・商品の紹介は扱っていません。

全国の郷土菓子をくわしく知りたい方は全国のさつまいも郷土菓子を紹介した記事、干し芋の歴史や食べ方を知りたい方は干し芋を解説した記事もあわせてご覧ください。

さつまいものお菓子とは?一覧で見る種類と名前

さつまいものお菓子は、さつまいもを蒸す・揚げる・干す・練るなどして、その甘さと食感を生かしたお菓子の総称です。

決まった定義があるわけではなく、本記事ではこのように整理しています。

農林水産省の資料によると、令和7年産(概算)のさつまいもの生産量は699,400tです。

このうち加工食品用は112,200tで、全体の16.0%を占めています(農林水産省「令和7年度いも・でん粉に関する資料」かんしょの用途別消費の推移)。

日本いも類研究会は、加工食品に使われるさつまいもの用途として、干しいもや菓子、ようかん・まんじゅうのあんに使うペーストなどを挙げています(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。

ここでは、主なお菓子を一覧表で示したうえで、分け方と、さつまいもがお菓子に使われてきた背景をご紹介します。

主なさつまいものお菓子 一覧表

まずは、本記事で取り上げる主なさつまいものお菓子を一覧にしました。

地域は、農林水産省の「うちの郷土料理」「にっぽん伝統食図鑑」などで、そのお菓子が伝わる地域として紹介されているものです。

名前 分類 主な地域 さつまいもの使い方 詳しい記事
大学芋 和菓子 全国 乱切りを揚げ、蜜をからめる 本記事の和菓子の項
芋けんぴ 和菓子・郷土菓子 高知県 細く切って揚げ、砂糖や糖蜜をからめる 本記事の和菓子の項
芋ようかん 和菓子 全国 蒸して裏ごしし、型で固める 本記事の和菓子の項
芋きんつば 和菓子 全国 裏ごしして四角く固め、薄い衣をつけて焼く 本記事の和菓子の項
茶巾しぼり 和菓子 全国 裏ごしして、布巾やラップで絞る 本記事の和菓子の項
芋納豆 和菓子 全国 角切りを蜜で煮て、砂糖をまぶす 本記事の和菓子の項
スイートポテト 洋菓子 全国(日本生まれとされる) 裏ごしし、バターや卵などと合わせて焼く スイートポテトの解説記事
芋ブリュレ 洋菓子 全国 焼き芋などに砂糖をふり、表面をあぶる 芋ブリュレの解説記事
モンブラン 洋菓子 全国 ペーストを細く絞り出す 本記事の洋菓子の項
タルト・パイ 洋菓子 全国 ペーストやあんを生地に詰めて焼く 本記事の洋菓子の項
紅芋タルト 洋菓子 沖縄県 紅芋のペーストを生地に詰めて焼く 紅芋の解説記事
さつまいもチップス スナック菓子 全国 薄切りを揚げる 本記事の洋菓子の項
鬼まんじゅう 郷土菓子 愛知県 角切りを小麦粉の生地に混ぜて蒸す 鬼まんじゅうの解説記事
いきなり団子 郷土菓子 熊本県 輪切りを小麦粉の生地で包んで蒸す いきなり団子の解説記事
石垣もち 郷土菓子 大分県 角切りを小麦粉の生地に混ぜて蒸す 石垣もちの解説記事
かんころ餅 郷土菓子 長崎県(五島地方) 薄切りにして干し、餅米とつく 郷土菓子の解説記事
こっぱ餅 郷土菓子 熊本県(天草地方) 輪切りをゆでて干し、餅にする 郷土菓子の解説記事
からいもねったぼ 郷土菓子 鹿児島県 蒸した芋を餅につき混ぜる 郷土菓子の解説記事
ねりくり 郷土菓子 宮崎県 蒸した芋を餅につき混ぜる 本記事の郷土菓子の項
いももち 郷土菓子 和歌山県・徳島県など 芋と餅米や餅粉を合わせて餅にする 郷土菓子の解説記事
いもべらあずき 郷土菓子 高知県 丸ごと煮て干した芋を、小豆と甘く煮る 郷土菓子の解説記事
きんこ 郷土菓子・干し芋 三重県(志摩地方) 煮てから切って干す 郷土菓子の解説記事
干し芋 加工品 茨城県・静岡県など 蒸して薄く切り、干す 干し芋の解説記事
からいもあめ 郷土菓子 鹿児島県 麦芽で糖化させ、煮詰めて飴にする 本記事の加工品の項
あめんどろ 素材(芋蜜) 鹿児島県 蜜(シロップ)にする あめんどろの解説記事

地域の欄は目安で、ほかの地域で作られていないという意味ではありません。

和菓子・洋菓子・郷土菓子の分け方

さつまいものお菓子を和菓子・洋菓子・郷土菓子に分ける、決まった基準があるわけではありません。

本記事では、次のように整理しています。

  • 和菓子:蜜やあん、裏ごしなど、和菓子の作り方でさつまいもを使うもの(大学芋・芋ようかんなど)
  • 洋菓子:バターや乳製品、卵などと合わせ、洋菓子の作り方で仕上げるもの(スイートポテト・モンブランなど)
  • 郷土菓子:特定の地域で受け継がれてきたもの(鬼まんじゅう・いきなり団子など)
  • 加工品・素材:そのまま食べるほか、お菓子づくりにも使われるもの(干し芋・あめんどろなど)

芋けんぴのように、和菓子として知られる一方で、高知県の郷土菓子として紹介されるものもあります(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)。

スイートポテトは、名前や作り方は洋菓子ですが、日本で生まれたお菓子とされています。

分類はあくまで目安として、気になるお菓子を探す手がかりにしてください。

さつまいもがお菓子に使われてきた理由

さつまいもがお菓子に使われてきた背景の一つに、加熱すると甘みが増す性質があります。

さつまいもを加熱すると、でんぷんが糊化(こか:でんぷんが水を吸ってやわらかくなる変化)し、それをβ-アミラーゼという酵素が麦芽糖(マルトース)に変えることで、甘みが増します。

甘くなる温度や加熱のしかたは、家で焼き芋を作る方法と甘くなる温度を解説した記事で詳しくご説明しています。

お菓子としての歴史も古く、江戸時代の青木昆陽は『蕃藷考(ばんしょこう)』で、さつまいもは代用食・菓子・酒・餅などにして様々に食べられるとほめています(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。

1789年(寛政元年)には、大阪の珍古楼主人(ちんころうしゅじん)が料理本『甘藷百珍(かんしょひゃくちん)』を著しています。

この本にはさつまいもの料理123品が収められ、「羊羹いも」「加須底羅(かすてら)いも」「煎餅いも」といった、お菓子を思わせる名前も並んでいます(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』、国立国会図書館の書誌情報)。

焼き芋が江戸の町で親しまれるようになった歴史は、焼き芋の歴史と文化を解説した記事でご紹介しています。

さつまいもの和菓子|大学芋・芋けんぴ・芋ようかんなど

さつまいもの和菓子には、揚げて蜜や砂糖をからめるものや、蒸して裏ごしし、練ったり固めたりするものがあります。

名前の由来には、はっきりしないものや、資料によって説明が分かれるものもあります。

ここでは、大学芋・芋けんぴ・芋ようかんと、芋きんつば・茶巾しぼり・芋納豆をご紹介します。

大学芋|揚げて蜜をからめる

大学芋は、乱切りにしたさつまいもを油で揚げ、砂糖を煮詰めた蜜をからめたお菓子です。

仕上げに黒ごまをふることもあります。

「大学芋」という名前の由来には、決まった答えがありません。

日本いも類研究会によると、大学いもがはやりだしたのは関東大震災の後のことだそうです。

同研究会は、1996年の地方紙の記事で紹介された話として、昭和の初め(昭和2年)に、学資に困った東京大学の学生が作って売り始めたという説を挙げています。

そのうえで、本当かどうかは誰も証明できないものの、有力な説だとしています(日本いも類研究会 Q&A「大学いもの名前の由来を教えて下さい。」)。

芋けんぴ|細く切って揚げ、砂糖をからめる

芋けんぴは、さつまいもを細長く切って油で揚げ、砂糖や糖蜜をからめたお菓子です。

農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」では、高知県の郷土菓子として紹介されています。

高知県も、芋けんぴは高知県が発祥の地といわれていると紹介しています(高知県「SUPER LOCAL 高知家 NEWS」第2弾・2026年8月18日)。

土佐(今の高知県)には、もともと砂糖の蜜に小麦粉を練り込み、短冊状に切って焼いた「けんぴ」というお菓子がありました。

芋けんぴは、形がこれに似ていたことから、そう呼ばれるようになったとされます(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)。

「けんぴ」は「堅干」とも書かれます(同)。

江戸時代中期に薩摩から土佐へさつまいもが伝わり、細く切って揚げ、砂糖をまぶしたお菓子がハレの日の食べ物として作られるようになったのが、芋けんぴの始まりとされています(同)。

芋ようかん|蒸して裏ごしし、固める

芋ようかんは、蒸したさつまいもを裏ごしし、砂糖などを加えて練り、型に入れて固めたお菓子です。

寒天を加えて固める作り方と、寒天を使わずに芋の生地を型に詰めて固める作り方があります。

さつまいもを裏ごししたペーストは、ようかんやまんじゅうのあんの材料にも使われています(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。

同じ資料では、こうしたペーストには、調理した後に黒く変わりにくい高系14号が向くと説明されています。

芋きんつば・茶巾しぼり・芋納豆

裏ごしや煮る工程を生かした和菓子は、このほかにもあります。

  • 芋きんつば:裏ごしした芋を四角く固め、小麦粉を水で溶いた薄い衣をつけて、面ごとに焼いたもの。
  • 茶巾しぼり:裏ごしした芋に砂糖などを混ぜ、布巾やラップで包んで絞り、しぼり目をつけたもの。
  • 芋納豆:甘納豆の一種で、角切りなどにした芋を蜜で煮て、砂糖をまぶしたもの。

どれも、さつまいもの甘さと黄色い色をそのまま生かした素朴なお菓子です。

おせち料理の「きんとん(金団)」も、黄金色にちなんだ縁起物とされ、栗の甘露煮にさつまいもを組み合わせて作るものがあります(農林水産省「おせちは一年の幸を願う料理。おせちを知って作ってみよう!」)。

さつまいもの洋菓子|スイートポテト・ブリュレ・モンブランなど

さつまいもの洋菓子には、さつまいもを裏ごししてペーストにし、バターや乳製品、卵などと合わせて焼いたり、生地に詰めたりするものがあります。

ペーストの色は品種によって変わるため、色を生かしたお菓子もあります。

ここでは、スイートポテト、芋ブリュレ、モンブランやタルトなどをご紹介します。

スイートポテト|日本で生まれたとされる洋菓子

スイートポテトは、加熱したさつまいもを裏ごしし、バター・砂糖・牛乳や生クリーム・卵黄などを混ぜて形を整え、表面に卵黄を塗って焼いたお菓子です。

名前や作り方は洋菓子ですが、日本で生まれたお菓子とされています。

英語の「sweet potato」は、お菓子ではなく、さつまいもそのものを指す言葉です。

国際交流基金のウェブサイトも、スイートポテトを「明治時代に始まった日本発祥の食べ物」と紹介しています(国際交流基金 日中21世紀交流事業「日本でホットな“スイートポテト”を調査しました」)。

ただし、考案した人や年を示す記録は、当サイトでは確認できていません。

和菓子か洋菓子かという疑問や、成り立ちのくわしい話は、スイートポテトの歴史と特徴を解説した記事でご紹介しています。

芋ブリュレ・焼き芋を使ったスイーツ

芋ブリュレは、焼き芋や蒸した芋の表面に砂糖をふり、バーナーなどであぶってカラメルの層を作ったお菓子です。

フランスのデザート「クレームブリュレ」のように、表面のパリッとした食感と、その下のやわらかい芋の組み合わせを楽しみます。

カスタードクリームをのせてから焼き色をつけるものなど、作り方にはいろいろな形があります。

発祥や作り方は、芋ブリュレを解説した記事で詳しくご説明しています。

外務省の海外向け広報サイト「Web Japan」は、さつまいもを使ったデザートの種類が増えていると紹介しています。

例として、ケーキやパフェ、かき氷、プリンが挙げられています(外務省 Web Japan「Sweet Potatoes: Japan's Enduring Sweetheart」)。

モンブラン・タルト・パイ・チップス、紅芋タルト

裏ごししたさつまいもは、なめらかなペーストとして、さまざまな洋菓子に使われます。

  • モンブラン:栗のペーストの代わりに、さつまいものペーストを細く絞り出したもの。
  • タルト・パイ:さつまいものペーストやあんを生地に詰めて焼いたもの。
  • チップス:薄切りにしたさつまいもを油で揚げたもの。

日本いも類研究会は、色素を持つ品種を使えば、紫やオレンジのペーストも作れると説明しています(『さつまいもMiNi白書』)。

沖縄県の紅芋タルトは、紅芋の色を生かした洋菓子のひとつです。

沖縄県の広報誌によると、読谷村では1986年(昭和61年)に紅芋を使った特産品づくりが始まりました。

地域の活性化をねらって村内の企業に商品開発が呼びかけられるなかで、紅芋タルトが生まれたと紹介されています(沖縄県広報誌『美ら島沖縄』2010年2月号)。

紅芋と紫芋の違いは、紫芋と紅芋の違いを解説した記事でご説明しています。

さつまいもの郷土菓子|鬼まんじゅう・いきなり団子・かんころ餅など

さつまいもの郷土菓子には、米や餅米が貴重だった時代や地域で、さつまいもを生地や餅に混ぜて量を補ったものが伝わっています。

農林水産省の「うちの郷土料理」でも、食糧難の時代の工夫や、少ない餅米で家族が食べられるようにした知恵として紹介されているものがあります。

ここでは、作り方の違いで「蒸して作る」「餅に混ぜる」「干した芋を使う」の3つに分けてご紹介します。

全国の郷土菓子は、全国のさつまいも郷土菓子を紹介した記事でまとめています。

蒸して作る郷土菓子|鬼まんじゅう・いきなり団子・石垣もち

小麦粉の生地とさつまいもを合わせて蒸すお菓子は、東海地方や九州に伝わっています。

鬼まんじゅう(愛知県)

鬼まんじゅうは、角切りのさつまいもを小麦粉の生地に混ぜて蒸したお菓子です。

農林水産省の「うちの郷土料理」によると、戦中・戦後の食糧難の時代に、米の代わりの主食として広まりました。

芋の角がゴツゴツと見える様子が、鬼のツノや金棒を思わせたことから、この名がついたといわれています(同)。

「芋ういろ」「芋まん」「芋まんじゅう」などと呼ぶ地域もあります(同)。

名前の由来や歴史は、鬼まんじゅうの名前の由来と歴史を解説した記事でご紹介しています。

いきなり団子(熊本県)

いきなり団子は、輪切りのさつまいもを小麦粉の生地で包んで蒸したお菓子で、今は小豆あんを入れるものが主流です。

「いきなり」は熊本の言葉で「簡単・手早く・すぐに」という意味で、短い時間で作れることや、急な来客にもすぐ出せることが名前の由来といわれています(農林水産省「うちの郷土料理」)。

「いきなり」のさまざまな意味は、いきなり団子を解説した記事でご紹介しています。

石垣もち(大分県)

石垣もちは、角切りのさつまいもを小麦粉の生地に混ぜて蒸したお菓子です。

名前には、見た目が石垣のようにゴツゴツしているからという説と、石垣の多い地区で生まれたからという説があります(農林水産省「うちの郷土料理」)。

地域によっては「きりこみもち」「こねこみもち」とも呼ばれます(同)。

くわしくは石垣もちを解説した記事をご覧ください。

餅に混ぜる郷土菓子|かんころ餅・こっぱ餅・ねったぼ・いももち

餅米が貴重だった地域では、さつまいもを餅に混ぜて作るお菓子も受け継がれてきました。

混ぜる芋には、干した芋を使うものと、蒸したり煮たりした芋を使うものがあります(いずれも農林水産省「うちの郷土料理」)。

  • かんころ餅(長崎県):五島地方では、薄切りにして天日で干したさつまいもを「かんころ」と呼びます。これを餅米と一緒についた冬の保存食で、高価な餅米が少なくても家族みんなが十分に食べられたといわれています。
  • こっぱ餅(熊本県):天草地方の餅菓子です。「こっぱ」は小さく切るという意味の方言で、輪切りにしてゆで、天日で干したさつまいもを使います。
  • からいもねったぼ(鹿児島県):つきたての餅に蒸したさつまいもを加えてつき混ぜ、きな粉と砂糖をまぶしたものです。「からいも」はさつまいものことです。
  • ねりくり(宮崎県):都城市付近で食べられてきた芋餅です。「ねりくり」は宮崎の言葉で「つきまぜる」という意味で、昔は正月の餅つきの最後に、煮たさつまいもを一臼分の餅米に加えてついていたとされます。
  • いももち(和歌山県・徳島県など):和歌山県では少ない餅米で餅を作る知恵として、徳島県では芋の生地に餅粉を加えてあんを包む餅菓子として紹介されています。

「ねったぼ」という名前には、「練ったぼたもち」に由来するという説と、餅を「ぼったぼった」と練ってつくことに由来するという説があります(農林水産省「うちの郷土料理」)。

干した芋を使う郷土菓子|いもべらあずき・きんこ

干したさつまいもは、そのまま食べるだけでなく、ほかの材料と合わせたお菓子にもなります。

いもべらあずきは、高知県の伊野町(現在のいの町)に伝わるお菓子です。

この地域では、干しいものことを「へら」と呼びます。

さつまいもを丸ごと何時間も煮てから干し、輪切りにしてさらに干したものを「ゆでべら」「煮べら」と呼び、これをつぶして小豆と甘く煮たのが、いもべらあずきです(農林水産省「うちの郷土料理」)。

三重県志摩地方の「きんこ」は、さつまいもを煮てから切って干したもので、「隼人芋(はやといも)」と呼ばれるさつまいもが使われてきました(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)。

なお、高知県の芋けんぴのように、揚げて作る郷土菓子もあります。

干し芋とあめんどろ|お菓子にも使われるさつまいもの加工品

干し芋やあめんどろは、お菓子というより、さつまいもの加工品や素材にあたります。

それでも、干し芋はおやつとして親しまれ、あめんどろはお菓子の甘味づけにも使われることから、ここでまとめてご紹介します。

同じ鹿児島県に伝わる「からいもあめ」もあわせてご説明します。

干し芋

干し芋は、蒸したさつまいもを薄く切り、干して乾かした加工品です。

本記事ではお菓子ではなく加工品として整理していますが、そのままおやつとして食べられる点では、お菓子に近い存在といえます。

農林水産省の「うちの郷土料理」は、干しいもの発祥の地は静岡県といわれ、煮切り干しの方法を考えついたのは栗林庄蔵とされていると紹介しています。

茨城県は、干しいものシェアが全国トップと紹介されています(農林水産省「うちの郷土料理」)。

干し芋の歴史や品種、食べ方は干し芋を解説した記事、冷凍で保存するときの目安は干し芋の冷凍保存を解説した記事でご紹介しています。

あめんどろ・からいもあめ

あめんどろは、さつまいもから作る蜜(シロップ)です。

鹿児島県は、あめんどろを頴娃(えい)の特産の芋蜜として紹介しています(鹿児島県「かごしまおいしいもの選手権」最優秀賞受賞作品の紹介)。

同じ鹿児島県には、さつまいもと麦芽で作る「からいもあめ」という飴も伝わっています。

やわらかく煮たさつまいもに麦芽の粉を混ぜて糖化させ、煮詰めて飴にしたもので、昔は冬から春にかけて家庭で作られ、お茶請けや子どものおやつとして食べられていました(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)。

板状に固めるもののほか、固めずに水あめのように食べるものもあります(同)。

あめんどろの使い方は、あめんどろを解説した記事でご紹介しています。

お菓子作りに向くさつまいもの品種と食感

同じお菓子でも、使うさつまいもの品種によって、仕上がりの食感や色が変わります。

ただし、どの品種が向くかは、作りたいお菓子や好みによって異なり、「この品種が正解」とは言い切れません。

ここでは、品種を選ぶときの目安になる、食感と色の考え方をご紹介します。

ねっとり・ホクホクで仕上がりが変わる

さつまいもの食感は、おおまかに、ホクホク系(粉質)・しっとり系(中間質)・ねっとり系(粘質)に分けて紹介されることがあります。

パナソニックの情報サイト「UP LIFE」は、紅あずまなどを粉質、なると金時やクイックスイートを中間質、べにはるか・安納芋・シルクスイートを粘質に分けています(2026年8月31日)。

そのうえで、この分類に明確な基準はなく、おおまかな目安だとしています。

なると金時や、そのもとになった高系14号はホクホク系として紹介されることもあり、資料によって分類が異なる品種もあります。

いも類振興情報136号は、加熱中に麦芽糖が多くでき、でんぷんが大きく減ると、ねっとりした食感に変わりやすいと説明しています(中村善行「サツマイモの甘さや食感とでん粉の糖化」2018年)。

この結論は蒸した芋の研究にもとづき、「関わると考えられた」と書かれています。

同じ品種でも、収穫後の貯蔵の期間や加熱のしかたによって、食感は変わります。

ペーストにして使うお菓子では、芋ようかんの項でご紹介したように、調理した後に黒く変わりにくい高系14号が向くとする資料もあります(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。

色を生かす

さつまいもの肉色は、品種によって黄色だけでなく、紫やオレンジのものもあります。

こうした色素を持つ品種を使えば、紫やオレンジのペーストも作れます(日本いも類研究会『さつまいもMiNi白書』)。

紫やオレンジのペーストを使うと、さつまいもの色そのものでお菓子を色づけることができます。

紫芋の品種「ふくむらさき」についてはふくむらさきを解説した記事、紫芋と紅芋の違いは紫芋と紅芋の違いを解説した記事でご説明しています。

よくある質問

さつまいものお菓子について、検索でよく調べられている疑問にお答えします。

名前や分類に関する疑問のほか、食べ方や日持ちについての疑問もまとめました。

Q1. さつまいものお菓子で有名なものは?

どのお菓子が有名かを比べた公的な調査は見当たらないため、本記事では順位をつけていません。

特定の地域に限らず作られているものには、大学芋・芋ようかん・スイートポテトなどがあります。

地域の郷土菓子には、芋けんぴ(高知県)、鬼まんじゅう(愛知県)、いきなり団子(熊本県)、かんころ餅(長崎県)などがあります。

気になるお菓子は、一覧表から探してみてください。

Q2. スイートポテトは和菓子?洋菓子?

スイートポテトは、バターや卵、乳製品を合わせて焼く作り方から、本記事では洋菓子に分けています。

一方で、日本で生まれたお菓子とされているため、「日本生まれの洋菓子」と紹介されることもあります。

成り立ちはスイートポテトの歴史と特徴を解説した記事でご紹介しています。

Q3. さつまいもを揚げたお菓子の名前は?

さつまいもを揚げて作るお菓子には、乱切りを揚げて蜜をからめる大学芋や、細く切って揚げ、砂糖や糖蜜をからめる芋けんぴがあります。

薄切りを揚げたさつまいもチップスも、そのひとつです。

このうち芋けんぴは、高知県の郷土菓子として紹介されています(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)。

Q4. 「いももち」や「かるかん」はさつまいものお菓子?

「いももち」は、地域によって使う芋が違います。

北海道のいももちはじゃがいもで作られ、和歌山県や徳島県などには、さつまいもを使ういももちがあります。

農林水産省の「うちの郷土料理」も、いももちは地域によって使う芋の種類や作り方が異なると説明しています。

鹿児島県のかるかんは、かるかん粉と山芋(大和芋)で作るお菓子で、さつまいもは主な材料ではありません(同)。

本記事では、さつまいもを主な材料とするお菓子を取り上げています。

Q5. さつまいもはお菓子の代わりになりますか?

当サイトでは、さつまいもを食べたときの体への働きについては取り上げていません。

焼き芋のカロリーや糖質などの数値は、焼き芋のカロリーと糖質を解説した記事で、日本食品標準成分表の値をもとにご紹介しています。

おやつとして何をどのくらい食べるかは、体調や食事全体によっても変わります。

持病や食事制限がある方は、医師や管理栄養士にご相談ください。

Q6. 手作りのさつまいものお菓子はどのくらい日持ちしますか?

手作りのお菓子の日持ちは、牛乳や生クリーム、卵などの材料や、作り方、保存の状態によって変わるため、一律の日数は示せません。

焼き芋の日持ちの目安も、そのまま当てはめないでください。

厚生労働省の「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」は、調理後の食品を室温に長く放置しないこと、残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存することを挙げています。

同じ資料は、時間が経ちすぎたものや、少しでも怪しいと思ったものは、食べずに捨てるよう呼びかけています。

札幌市保健所も、腐敗を起こす菌とは違い、食中毒の原因となる菌がついていても、食べ物の味やにおい、見た目は変わらないのが普通だとしています。

作ったら早めに冷蔵庫に入れ、なるべく早く食べきるようにしましょう。

まとめ

さつまいものお菓子は、さつまいもを蒸す・揚げる・干す・練るといった使い方によって、和菓子・洋菓子・郷土菓子・加工品とさまざまな形で親しまれています。

本記事の要点は、次のとおりです。

  • 和菓子:大学芋・芋けんぴ・芋ようかんなど。揚げて蜜をからめるものや、裏ごしして固めるものがある。
  • 洋菓子:スイートポテト・芋ブリュレ・モンブランなど。ペーストにして乳製品や卵と合わせるものがある。
  • 郷土菓子:鬼まんじゅう・いきなり団子・かんころ餅など。米や餅米を補う工夫から生まれたものが伝わっている。
  • 加工品・素材:干し芋・あめんどろなど。おやつやお菓子の甘味づけにも使われる。
  • 名前の由来には諸説あるものがあり、本記事では資料に沿って複数の説をご紹介しました。

郷土菓子は全国のさつまいも郷土菓子を紹介した記事、干し芋は干し芋を解説した記事、スイートポテトはスイートポテトの歴史と特徴を解説した記事で、それぞれくわしくご紹介しています。

気になるお菓子が見つかったら、あわせてご覧ください。

参考資料

本記事の作成にあたって参照した資料です。