「紫芋」と「紅芋」は何が違うの?

秋になると店頭でも見かける紫芋(むらさきいも)と、沖縄のお土産などで有名な紅芋(べにいも)

名前も見た目もよく似ていますが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか?

「紫色の芋だから同じサツマイモの仲間でしょ?」と思われるかもしれません。

しかし、実は紅芋と紫芋は単なる呼び方の違い以上に、背景に少し複雑な事情があります

この記事では、紫芋と紅芋の特徴や栄養、味わい、流通事情などをやさしく解説します。

紅芋タルトの原料にもなる紅芋と紫芋の違いを知れば、芋スイーツをさらに美味しく楽しめること間違いなしです

紫芋とは?

紫芋とは?

紫芋(むらさきいも)とは、その名の通り中身が鮮やかな紫色をしたサツマイモです。

サツマイモ(学名 Ipomoea batatas)の一品種で、日本国内では鹿児島県や茨城県、千葉県、宮崎県など各地で広く栽培されています。

紫色の色素はポリフェノールの一種であるアントシアニンによるもので、ブルーベリーや紫キャベツにも含まれる成分です。

紫芋は渋みが少なく甘さ控えめですが上品な風味があり、色鮮やかで抗酸化作用などの機能性成分も豊富なことから人気が高まっています。

収穫直後より貯蔵後のほうが甘味が増す性質があり、焼き芋や菓子材料として用いられるほか、近年では紫芋の焼酎や天然の食品着色料にも利用されています。

代表的な紫芋の品種には、食用として甘味が強く焼き芋にも向く「種子島ムラサキ」や「パープルスイートロード」、加工用でアントシアニン含有量が特に高い「アヤムラサキ」や「ムラサキマサリ」などがあります。

私が大好きな「ふくむらさき」も紫芋の品種の一つです。(※ふくむらさきに関しましては『紫さつまいも「ふくむらさき」の特徴をわかりやすくご説明します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

品種により紫色の濃さや甘さが異なりますが、紫芋全般に共通する魅力は、その美しい紫色とヘルシーな栄養素でしょう。

紅芋とは?

紅芋とは?

沖縄で一般に「紅芋(べにいも)」といえば、塊根の肉色が紫色系のサツマイモ(カンショ)を指します。

沖縄土産の紅芋タルトなどに使われる「紅芋」も、この紫肉サツマイモです。

「紅山芋」

一方で、ヤマノイモ科の作物 「ダイジョ(学名:Dioscorea alata)」のように、紫色の「ヤム(ヤマノイモ類)」が存在します。

文献や翻訳の文脈によっては、こちらが「紅山芋」等として紹介されることがあり、これが「紅芋」と混同される原因になります。

一見すると紫芋と見分けがつかないほどよく似ていますが、紅山芋はヤムイモ科ヤマノイモ属に分類される芋で、いわゆるヤムイモの一種だと紹介されることがあります。

こうした経緯から、「紅芋=サツマイモの仲間ではない」と思われがちです。

1970年代に沖縄で紫色のサツマイモ品種「宮農36号」が普及して以降、紫色のサツマイモを沖縄では紅芋と呼ぶようになりました。(参考:『紅イモ品種の戦後からの軌跡』)

つまり現在一般に「紅芋」と言えば、沖縄産の紫芋のことだと考えると分かりやすいでしょう。

代表品種には宮農36号や備瀬(ビセ)といった紫肉サツマイモがあり、紅芋タルトの原料としては「美ら恋紅」や「おぼろ紅」などの品種が有名です。

これら沖縄の紅芋品種は高温多湿の気候に適応して湿気に強く粘質で甘みがあるのが特徴で、紅芋タルトやアイスクリームなど沖縄土産のお菓子に重宝されています。

また紅芋を原料にした焼酎(紅芋焼酎)も作られるなど、地元の食文化にも根付いています。

紅芋の別名について

沖縄で伝統的に栽培されてきた紫色のヤムイモ(ダイジョ)は「紅山芋」あるいは「ウベ(フィリピン語由来)」とも呼ばれます。
一方、現在の紅芋(紫芋の一種)は英語では“Purple Sweet Potato”に該当し、ヤムイモのウベは“Purple Yam”と呼ばれて区別されます。
日本では両者とも「紫芋」「紅芋」と訳されるため混同しやすいですが、沖縄の紅芋=サツマイモ、ウベ=ヤムイモと覚えておくと理解しやすいでしょう。

紫芋と紅芋の違い

以上のように、それぞれの概要を見ただけでも紫芋と紅芋には大きな違いがあることが分かります。

それでは具体的に、両者の違いをいくつかの観点から比較してみましょう。

紫芋と紅芋の違い

分類と名前の違い

まず分類(植物学上の違い)です。

紅芋と紫芋はどちらも見た目は紫色の芋ですが、厳密に言えば別の植物に分類されます

「紫芋」は、紫肉のサツマイモ(学名:Ipomoea batatas)の品種群を指す呼び名です。

一方「紅芋」は、文脈によって指すものが2通りあります。

  1. 沖縄の食品・菓子の文脈:紫肉のサツマイモ(=紫芋)を指す
  2. 一部の資料・翻訳の文脈:ヤマノイモ科の「ダイジョ(Dioscorea alata)」等(いわゆる紫色のヤム)を指す

したがって、店頭や原材料表示で見る「紅芋」は、ほとんどの場合、「沖縄の紫肉サツマイモ」と考えると理解しやすいです。

名前の違いは産地による呼称の違いといえるでしょう。

沖縄では紫色のサツマイモを紅芋と呼び、本土では紫芋と呼ぶという違いです。

つまり紅芋=沖縄の紫芋というのが現在の位置付けになります。

ただし歴史的には紅芋がヤムイモを指す場合もあるため、文脈によって意味が異なる点に注意が必要です。

例えば植物図鑑的な解説では「紅芋(紅山芋)はサツマイモではない」とされますが、お菓子の原材料説明などでは「紅芋(沖縄の紫色サツマイモ)」を指している場合があります。

このように紅芋という言葉には二通りの使われ方があることを押さえておきましょう。

甘さ・食感の違い

甘さ・食感の違い

味わい(甘さ)や食感にも両者の違いが見られます。

紫芋は加熱しても甘さが控えめで、ホクホクというよりしっとりとした食感になるものが多い傾向です。

一方の紅芋(沖縄の紫芋品種)は甘味が強く、紫芋よりも糖度の高い品種が多いことが知られています。

紫芋と紅芋を比べると、より甘みを楽しみたいなら紅芋がおすすめと言えるでしょう。

ただし、甘さや食感は「紅芋/紫芋」という呼び名よりも、品種差の影響が大きいです。

沖縄で普及した紫肉品種の中にも、加工適性(色の安定など)を優先して、甘さが控えめとされるものもあります。

食感の面では、紫芋・紅芋ともに一般的な黄色いサツマイモほど粉質(ほくほく感)は強くなく、ややねっとりしたしっとり系の食感です。

特に紅芋品種は山芋に似た粘り気をわずかに感じるクリーミーな食感で、これが洋菓子にした際の舌触りの良さにつながっています。

紫芋も品種によっては蒸した時に少し粘りを感じるものがありますが、多くは紅芋ほどの強い粘りはありません。

ただ近年では、紫芋の中でも甘くしっとりした新品種(例:「ふくむらさき」など)が登場しており、焼き芋にして美味しい紫芋も増えてきています。

このように甘さや食感の違いは品種によるところも大きいですが、伝統的には「紅芋の方が甘くてねっとり、紫芋は上品でほくほく控えめ」という傾向があったといえるでしょう。

栄養・色素の違い

栄養・色素の違い

紫色の色素成分(アントシアニン)の含有量に紅芋と紫芋で違いがみられます。

アントシアニンはポリフェノールの一種として知られ、抗酸化作用などが注目されています。

紫芋・紅芋ともにアントシアニンを多く含みますが、一般的に紫芋の方が含有量は多めです。

紫肉系サツマイモのアントシアニン含有量は品種による差が大きいことが知られています。

報告例では、100g当たり数十mg程度のものから、数百mgに達する高含有品種まで幅があります(例:宮農36号 33mg/100g、種子島紫 180mg/100g、アヤムラサキ 730mg/100g など)。

紫芋の色素は熱や酸にも強く、加熱調理しても色が抜けにくいという特徴があります。

そのため蒸したり焼いたりしても鮮やかな紫色を保ち、和洋菓子の材料として重宝されています。

沖縄の紅芋品種(宮農36号や備瀬など)は紫芋に比べるとアントシアニン量はやや少なめですが、その分デンプン質が粘質で甘味が強く、食味に優れるとされています。

ビタミンCや食物繊維、カリウムなど基本的な栄養成分については紫芋も紅芋も大きな差はなく、どちらもサツマイモ由来のヘルシーな食材です。

強いて言えば、紅芋(ヤムイモのダイジョを指す場合)はカリウム含有量がやや多いという報告があります。

いずれにせよ紫芋・紅芋ともに食物繊維やビタミンが豊富で低脂質のヘルシー食材ですから、美容と健康に良いおやつとしても注目されています。

産地・流通の違い

産地・流通の違い

生産地や流通状況の違いも押さえておきましょう。

紫芋は前述のように鹿児島や茨城など全国各地で生産されており、秋になるとスーパーでも比較的手に入りやすい素材です。

一方、紅芋(沖縄の紫芋)は生の状態では沖縄県外にほとんど流通していません

沖縄産の生のサツマイモ類は、害虫のまん延防止のため法律に基づく移動規制の対象になっており、原則として無処理のまま県外へ持ち出すことはできません。

沖縄諸島にはサツマイモに寄生する特有の害虫(例えばアリモドキゾウムシイモゾウムシ)が生息しており、本土にこれらが持ち込まれると農作物に深刻な被害を与える恐れがあるからです。

そのため沖縄からサツマイモ類(紅芋を含む生の芋)は法律に基づく移動規制の対象となっており、やむを得ず持ち出す場合も事前に蒸熱消毒など厳格な処理が必要になります。

現実的に旅行者が生の紅芋を本土へ持ち帰るのは難しいため、紅芋は主に現地消費か加工品として流通する形になります。

そのため本州のスーパーで生の紅芋(沖縄産紫芋)を見かけることはまずありません

どうしても手に入れたい場合は、沖縄の農家や市場から蒸した紅芋を取り寄せるか、通販で冷凍紅芋を購入する方法があります。

多くの場合は紅芋タルトや紅芋パウダーなど加工品の形で入手することになるでしょう。

一方、紫芋は鹿児島県や千葉県など産地直送の通販が充実しており、秋には比較的簡単に生の紫芋(例えば「パープルスイートロード」等)が手に入ります。

また地方のアンテナショップや道の駅などでは、期間限定で沖縄県産の紅芋(※消毒処理済みのもの)が販売されるケースもあるようです。

いずれにせよ紅芋(生)は流通量が極めて少なく希少であるのに対し、紫芋(生)は広く市場に出回っているというのが大きな違いです。

以上のように、紫芋と紅芋は分類・栄養・味・流通面でそれぞれ特徴が異なっています。下表に主要な違いをまとめましたので参考にしてください。

紫芋と紅芋の比較表

違いのポイント紫芋(紫色のサツマイモ)紅芋(沖縄の紫芋)
分類ヒルガオ科サツマイモ属(多年草の根:サツマイモ)
※観賞用ではなく食用のサツマイモの一品種
ヒルガオ科サツマイモ属(多年草の根:サツマイモ)
※現在は沖縄産の紫肉サツマイモを指す呼称
主な産地鹿児島・茨城・千葉・宮崎など日本各地
(中南米原産、全国で栽培)
沖縄県全域(亜熱帯気候に適応)
(1970年代から沖縄で品種普及)
皮と果肉の色皮:赤紫色
果肉:濃い紫色(品種により濃淡あり)
皮:紫がかった赤色
果肉:鮮やかな紫色(色が均一)
甘さ・風味甘さ控えめで上品な風味
ホクホク感は少なくしっとり系
甘味が強く濃厚
粘りがありクリーミーな食感
主な用途焼き芋、スイートポテト、芋ようかん等。
色が鮮やかで和洋菓子や天然色素に最適。
焼酎など加工食品も。
紅芋タルト、紅芋アイスなど沖縄土産菓子。
紅芋焼酎など地元の伝統食品にも利用。
生の芋は県外持ち出し不可のため加工品中心。
流通状況全国で流通。
秋にはスーパーや産直で入手可。
通販で高アントシアニン品種も購入可。
沖縄県外で生芋入手困難(法律による移動制限)。
加工品(菓子・冷凍芋など)の形で流通。

※沖縄で伝統的に栽培されてきた紫色のヤムイモ(ダイジョ)は「紅山芋」あるいは「ウベ(フィリピン語由来)」とも呼ばれます。

まとめ

紫芋と紅芋は、その鮮やかな紫色こそ共通していますが、ルーツから特徴まで多くの違いがあることがお分かりいただけたでしょうか。

それぞれ名称や分類の混同があるものの、本記事で紹介したように現在市販される紅芋は沖縄発の紫芋であり、紫芋の地域違い・品種違いと言える存在です。

栄養面ではどちらもポリフェノールやビタミンが豊富なヘルシー食材ですが、アントシアニン量は紫芋の方が多く、甘味や食感は紅芋の方が優れる傾向があります。

また入手のしやすさにも大きな差があり、紅芋は主に沖縄現地や加工品で楽しむもの、紫芋は生のまま各地で味わえるものとして流通しています。

もしホクホク系の上品な甘さを楽しみたいなら紫芋を、濃厚な甘さとねっとり食感を味わいたいなら紅芋を選ぶと良いでしょう。

例えば紫芋を使ったスイートポテトは彩りが美しく上品な味に仕上がりますし、紅芋タルトは素材の甘さを活かした濃厚なおいしさが魅力です。

それぞれの特長を知った上で調理やスイーツ作りに活かせば、今まで以上に紫色の芋のおいしさを堪能できるはずです。

ぜひ紫芋と紅芋の違いを理解して、料理やお菓子選びの参考にしてください。

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