
最近テレビやSNSでも話題の「つらさげ芋」をご存知でしょうか?
つらさげ芋に使われる品種は「紅はるか」です。
紅はるか自体は全国で普及が進んでいる品種ですが、つらさげ芋は「うのばい(垂水市大野原地区)産の紅はるかを、標高の高い環境で30日以上吊るして寒風熟成させる」といった条件や手間があるため生産量が限られ、希少性から“幻の芋”と呼ばれることがあります。
毎年12月1日が解禁日と定められており、約2か月間しか出回らない期間・数量限定の逸品です。
本記事では、このつらさげ芋について定義・由来から驚きの甘さの秘密、さらに他の芋や干し芋との違いまでわかりやすくご説明したいと思います。
つらさげ芋とは

つらさげ芋とは、「鹿児島県垂水市の大野地区・大野原(地元では「うのばい」とも呼ばれます)で受け継がれてきた製法で作られる熟成さつまいも」です。
収穫したサツマイモをツル(茎)付きのまま軒先に吊るし、寒風にさらして約1ヶ月熟成させた芋のことで、地元で「つらさげ芋」と呼ばれます。
名前の由来もその製法にちなみ、サツマイモを「吊らさげる」(吊るして下げる)ことからきています。

つらさげ芋の原料には、鹿児島の火山灰土壌で育つサツマイモ「紅はるか」という品種が使われます。
収穫後、本来ならツルを切って貯蔵するところ、つらさげ芋ではツルを付けたまま綺麗に整え束ねて吊るすという手間をかけて仕込みます。
こうして寒風にさらしながら熟成させることで、芋のでんぷん質が糖に変わりやすくなり、驚くほどの甘さを引き出せるのです。

大野原地区は、1914年(大正3年)の桜島大正大噴火をきっかけに移住・開拓された地域とされます。
つらさげ芋の製法は、この地で半世紀以上にわたり受け継がれてきた伝統として紹介されており、桜島大噴火で移住・開拓してきた先人がサツマイモをよりおいしく食べるために工夫した知恵が背景にあるとされています。
手間暇が非常にかかり大量生産はできないため、地元では「幻のサツマイモ」と呼ばれるほど希少で人気を博してきました。
現在でも毎冬の限られた時期にしか手に入らない特別なサツマイモなのです。
なぜそんなに甘いの?吊るして熟成する理由と糖度の話

つらさげ芋最大の特徴はその甘さです。
一般的なサツマイモに比べても段違いで、まるで砂糖を加えたかのような濃厚な甘みがあります。
なぜそこまで甘くなるのか、その秘密は「吊るして寒風にさらす熟成」にあります。
まず、芋を吊るして約1ヶ月寒風にさらすことで、昼夜の寒暖差を利用して芋のでんぷん質を糖質に変える作用が起こります。
気温の下がる寒い環境に芋をさらすと、芋は自己防衛のためデンプンを分解して糖分を増やそうとする性質があり、これを伝統的に利用しているのです。
「吊るす」ことで通気性が良くなり余分な水分も抜けるため、糖分濃度がさらに高まります。
実際、大野原の寒風に当てて熟成させた芋は通常貯蔵しただけの場合より早くデンプンが糖に変わり、より強い甘みを蓄えると言われます。
しかし、単に外に吊るして放っておけば良いわけではありません。
寒すぎる夜には霜に当たって一晩で芋がダメになってしまうため、農家の方々は気温に細心の注意を払っています。
例えば冷え込みが厳しい日は吊るした芋に毛布をかけたり、小屋ごとストーブで暖を取ったりして霜害から守り、逆に日中暖かすぎる日は扇風機で風通しを良くするなど、一日一日芋の状態と天候を観察しながら細やかに管理するのです。
こうした職人技ともいえる温度・湿度管理と惜しみない手間により、吊るした芋は約30日後には驚くほど深い甘みを湛えた「つらさげ芋」へと生まれ変わります。

もちろん品種(紅はるか)の持つ本来の甘さもありますが、寒風熟成による糖化作用と水分の減少が甘さの秘密です。
また、熟成後の芋を焼く際にも工夫があります。

石焼き芋など通常は高温で一気に焼くところを、つらさげ芋の焼き芋では1本1本の状態に合わせて温度を調整し、低温で2〜3時間かけてじっくり焼き上げるそうです。
こうすることで糖分を逃がさず芋の中に蜜を閉じ込め、しっとりとろけるような舌触りに仕上がります。
まさに手間暇とかけ合わせて生まれる「天然のスイートポテト(スイーツ)」と言えるでしょう。
つらさげ芋と他の芋・干し芋との違いを比較

つらさげ芋が特別甘いサツマイモだと分かったところで、「他のサツマイモ製品とは何が違うの?」という疑問も出てくるかもしれません。
そこでつらさげ芋と、よく比較される干し芋(乾燥さつまいも)、そして近年人気の熟成焼き芋(追熟した焼き芋)との違いを整理してみましょう。
以下の表に、製法や甘さ、食感などの違いをまとめました。

| 種類 | つらさげ芋(寒風熟成芋) | 熟成焼き芋(一般的な追熟) | 干し芋(乾燥さつまいも) |
|---|---|---|---|
| 主な産地 | 鹿児島県垂水市大野地区限定(高冷地・標高550m) | 各産地(茨城や九州など全国) | 茨城県など全国(茨城県ひたちなか市が一大産地) |
| 原料品種 | 紅はるか(幻のブランド芋)ほか *ツル付きで収穫・仕込み | ベニハルカ、シルクスイート等甘味品種 *収穫後すぐ貯蔵(ツルは切る) | ベニハルカ、玉豊(たまゆたか)等 *収穫後しばらく貯蔵してから加工 |
| 製法・熟成方法 | 収穫後にツルごと束ねて吊るし、屋外の寒風に約1ヶ月さらして熟成。 寒暖差でデンプンを糖化。 熟成後に低温で長時間焼き芋にする。 | 収穫後、約13〜15℃の環境で1〜2ヶ月貯蔵して追熟。 低温障害を避けつつ酵素作用で甘みアップ。 熟成後は通常の焼き芋調理。 | 収穫後、一度蒸すかふかしてからスライスし、天日干しで乾燥(数日〜1週間程度)。 水分を飛ばし長期保存できるよう加工。 昔ながらの保存食。 |
| 食感・風味 | しっとり柔らかく蜜がしたたる食感。 上品な濃厚甘味で「皮ごと食べてもおいしい」ほど皮まで柔らか。 冷やしても甘くデザートのよう。 | ねっとり系~ほくほく系まで様々。 蜜が多い品種はしっとり系で甘い。 熟成効果でコクが増し、香ばしさと甘みのバランス良い焼き芋に。 | 半生のソフトな干し芋からカリカリの乾物までタイプ色々。 一般にもちっとした嚙み応えで自然な優しい甘み。 噛むほど甘さが広がり、おやつやお茶請けに好適。 |
| 保存性 | 生の熟成芋は傷みやすく長期保存困難。焼き芋製品は要冷蔵で賞味期限7~10日程度。冷凍すれば最長6ヶ月保存可。 | 生芋のままなら風通しの良い冷暗所で1〜2ヶ月保存可(※追熟期間含む)。 焼き芋にした後は日持ちせず要冷蔵で数日以内。 冷凍保存は可。 | 長期保存向き(開封前常温で2〜3ヶ月程度保存可)。 水分が多めのソフト干し芋はカビに注意し冷蔵推奨の場合も。 開封後は乾燥剤を入れ密封し早めに消費。 |
上記の比較からも、つらさげ芋は「寒風にさらす」という独自の熟成方法によって他にはない高い甘みを実現していることが分かります。
通常、サツマイモの貯蔵・追熟は13℃前後が適温とされ、10℃以下では低温障害が起こりやすく品質が落ちたり傷みの原因になります。(※さつまいもの追熟に関しましては『さつまいもの甘さの秘密|「熟成」「糊化」「糖化」とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
しかし、つらさげ芋の場合はあえて寒冷な環境に晒す点がユニークで、その代わり農家の熟練の管理技術で低温障害をギリギリ回避しています。
この伝統製法により、短期間で一気にでんぷん糖化を進め、他に類を見ない甘さを引き出しているのです。
また、干し芋との違いも興味深いです。
干し芋は砂糖不使用でも十分甘い自然のおやつですが、それでもつらさげ芋の焼き芋は干し芋以上に水分と甘みが両立した不思議な食感です。
干し芋が「乾燥による濃縮した甘み」だとすれば、つらさげ芋は「熟成による引き出された甘み」と言えるでしょう。
それぞれ製法も風味も異なりますが、サツマイモの可能性を存分に引き出した伝統食品という点では共通しています。
つらさげ芋はいつ・どこで買える?
それでは、つらさげ芋はいつ、どこで買えるのかを見ていきましょう。
つらさげ芋を買える時期

購入できる時期は毎年決まっています。
解禁日は12月1日です。
これは全国でも珍しい制度ですが、一定の熟成期間を設け品質を守るために販売開始日を統一しているのです。
さらに長期保存が難しく大量生産もできないため、その年の分は数量限定・期間限定で売り切れ次第終了となります。
まさに旬が限られた冬の味覚と言えます。
つらさげ芋の購入できる場所

どこで買えるかですが、主な産地である鹿児島県垂水市では、現地の直売所や道の駅などで毎年販売されます。
例えば垂水市の道の駅たるみず(湯っ足り館)では解禁時期になると「つらさげ芋ありますか?」と尋ねる人も多く、入荷後すぐ売り切れてしまうほどの人気です。
また、大野地区の生産者さん自らが経営する直売所や農家の店舗でも購入できます。
遠方に住んでいる方や現地に行けない方でも、近年は通信販売で手に入れる方法があります。
垂水市の生産者グループ「つらさげの里 うのばい」や公式オンラインショップから、シーズン中に焼き芋や干し芋のセットが販売されます。
私は2025年産のものは宮下商店さんのネットショップ(宮下商店ネットショップ)から購入しました。

また、垂水市へのふるさと納税の返礼品としてつらさげ芋の焼き芋や干し芋が用意されており、寄付を通じて取り寄せることも可能です。
楽天市場など大手通販サイトでもシーズン中に取り扱われる場合があります。
2026年のふるさと納税でも、つらさげ芋の冷凍焼き芋を返礼品としていただきました。

2021年以降はテレビ番組で幻のサツマイモとして紹介された影響もあり、全国的に知名度が上がったことで入手困難になることもあるようです。
確実に手に入れたい場合は、解禁日前に生産者の情報発信(SNSや公式サイト)などをチェックしましょう。
「幻の芋」の名前どおり、毎年出回る期間は短いですが、その希少性もまたつらさげ芋の価値を高めています。
まとめ

つらさげ芋について、その定義から甘さの秘密、他の芋との比較、購入方法、保存・食べ方まで詳しく解説してきました。
「風と時間が育てた天然のスイーツ」と称するにふさわしい、自然の力と生産者の手間が生み出した奇跡のサツマイモだということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
普段私たちが口にする焼き芋とは一味も二味も違う、奥深い甘さとしっとり食感は、一度食べれば忘れられない感動を与えてくれます。
冬の限られた時期にしか出会えない希少な味だからこそ、実際に手に入れて味わったときの喜びもひとしおです。
もし焼き芋好きなら、そして甘いもの好きなら、このつらさげ芋はぜひ一度体験してほしい逸品です。
風土と伝統、そして農家さんの情熱が詰まったつらさげ芋は、まさに“天然のスイートポテト”。
その豊かな甘みに驚き、「本当に砂糖不使用なの?」と思わず確かめたくなることでしょう。
最後にもう一度まとめると、つらさげ芋は鹿児島発の熟成サツマイモで、寒風にさらす独自製法によって高い甘さを実現しています。
他の干し芋や熟成芋とは製法も風味も異なり、冬の短い期間にだけ楽しめる希少な存在です。
ぜひ機会があれば、風と時間が育んだ天然のスイーツ「つらさげ芋」を味わってみてください。
きっと焼き芋の概念が変わるほどの驚きと幸せをもたらしてくれるはずです。
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