
はじめに

秋から冬にかけて美味しさが増すさつまいもは、焼き芋やスイートポテトなどで大人気の食材です。
せっかくなら甘くて美味しいさつまいもを選びたいものですが、店頭に並ぶたくさんの中から「当たり」の一本を見つけるのは難しいと感じる方も多いでしょう。
この記事では、野菜の専門家や農家の方々の知見をもとに、美味しいさつまいもの見分け方を丁寧に解説します。
品種ごとの特徴や外見のポイント、さらには収穫後の熟成による甘みの変化についても触れながら、わかりやすくご説明したいと思います。
さつまいもの品種による食感の違い

まず押さえておきたいのは、さつまいもの品種による食感や甘みの違いです。
さつまいもには加熱したときの食感で大きく分けて「ほくほく系」「しっとり系」「ねっとり系」の品種があり、好みによって「美味しい」と感じるタイプも異なります。
店頭では品種名が表示されていることが多いので、自分が好きな食感・甘さのタイプかどうかまず品種で見極めると良いでしょう。
以下にそれぞれの食感の代表的なさつまいも品種やブランド銘柄をご紹介します。
ほくほく系の品種
「ほくほく系」の代表である紅あずまや鳴門金時、高系14号などは加熱するとホクホクとした食感で甘さは控えめで素朴な味わいです。
ほくほく系は焼き芋や天ぷら・煮物などの料理に向いています。
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ねっとり系の品種
「ねっとり系」は安納芋・紅はるかなどで、濃厚な甘さが特徴です。
近年人気の紅はるかや安納芋といったねっとり系品種は水分が多く、加熱するととろりと蜜のような食感になるほど甘みが強いのが特徴です。
ねっとり系はそのまま焼き芋でもスイーツっぽく食べられますが、ブリュレなどのスイーツや干し芋にも向きます。
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しっとり系の品種
「ほくほく系」と「ねっとり系」の中間の「しっとり系」のシルクスイートなどは、焼くとしっとり、冷ますとホクホクという中間的な食感で、上品な甘さが楽しめます。
しっとり系は両方の中間ということもあり、料理やスイーツ全般に広く向いています。
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美味しいさつまいもの見分け方のポイント

品種を確認したら、次は見た目や手に持った感触から美味しいさつまいもを選びましょう。
店頭で選ぶときの一般的な目安としては、「形」「表面(ひげ根跡)」「皮の色つや」「重さ」の4つです。
これらを総合的に観察することで、外見からある程度中身の美味しさを予想できます。
それぞれのポイントについて詳しく説明します。
【形】ふっくらと太い紡錘形

美味しいさつまいもは地中で養分をしっかり蓄えて育っているため、全体がレモンのようになだらかな紡錘形(中央部が太く両端に向かって細い形)になります。
ずんぐりと丸みを帯びた形の芋は繊維質が少なくホクホク感が得られやすいです。
一方で細長すぎたり極端にいびつな形のものは、生育不良や成長途中のストレスで繊維質が増えていたり味にばらつきが出ている可能性があります。
できるだけ均整のとれたふっくら形のものを選びましょう。
【表面】ひげ根の跡が少なく浅い

さつまいもの表面には、髭根(ひげ根)と呼ばれる細かい根が出ていた跡が小さな穴状に残っています。
表面のひげ根跡(小さな穴)は、「数」よりも「深さ」に注目するのがポイントです。
くぼみが浅く、表面がなめらかなものは繊維質が少ない傾向があります。
逆に、くぼみが深く凸凹が目立つものは筋っぽく感じやすいので避けると安心です。
なお、収穫後もひげ根そのものがたくさん生えたままになっている芋は避けたほうが無難です。
髭根が長く伸びて残っているものは水分が抜けていたり成熟しすぎて筋っぽくなっている場合が多いからです。
【皮の色とつや】濃い紅色で光沢がある

さつまいもの皮は品種によってやや差がありますが、一般的に鮮やかな赤紫色でムラがなく艶(つや)のあるものが良品です。
皮にハリと光沢があるのは十分に育ち、さらに収穫後も適切に貯蔵された証拠で、そうした芋は甘みが増して美味しくなっている可能性が高いのです。
土が付着していて皮全体が見えない場合もありますが、見えている部分の色が濃く鮮やかであれば問題ありません。
反対に、皮に黒い斑点や傷があるものは品質が落ちている場合があるため避けましょう。
黒い斑点は病気(黒斑病など)や傷んでいるサインのことがあります。
表皮がしなびていたりヒビ割れているものも、水分が抜けて鮮度が低下していますので選ばないほうが無難です。
【重さ】手に持ってずっしり重みを感じること

大きさの割に重量感のあるさつまいもは、水分と糖分をしっかり蓄えている証拠です。
持ち上げたときに明らかに軽いと感じる芋は、収穫から時間が経って水分が抜けてしまっている可能性が高く、パサついた食感や甘みの少なさに繋がります。
実際、プロの目利きによれば「見た目より軽い芋」は繊維質が多く甘みも少ない傾向にあるそうです。
また、あまりにも柔らかかったりスポンジのように軽いものは中身が劣化(乾燥や空洞化)している場合があります。
購入時にはぜひ複数の芋を手に取ってみて、ずっしりと詰まった重みを感じるものを選びましょう。
以上、形・表面・色つや・重さの4つが、美味しいさつまいもを見分けるための主なチェックポイントです。
それぞれの要素をまとめると下表のようになります。
| チェックポイント | 美味しいさつまいもの特徴 | 理由・解説 |
|---|---|---|
| 形 | ふっくらと丸みのある紡錘形(中央が太く両端が細い) | 均整の取れた形に育った芋は繊維質が少なく、ほくほくとした食感になりやすい。細すぎるものは成長不良で筋張っている恐れあり。 |
| 表面(ひげ根跡) | 表面のくぼみ(毛穴)が浅く滑らかで、ひげ根の跡が少ない | 土中でストレスなく育った証拠。筋っぽさが少なく食感も良い。ひげ根が生えたままのものや凸凹が多いものは繊維質が多い傾向。 |
| 皮の色・つや | 赤紫の皮色が濃くムラがなく、光沢がある(傷や黒い斑点がない) | しっかり成熟し適切に貯蔵された芋は皮に艶が出る。甘みが増している可能性大。黒い斑点や傷は劣化のサインなので避ける。 |
| 重さ | 持ったときに見た目以上にずっしり重みを感じる | 水分と養分(でんぷん質や糖分)が詰まっている証拠。軽いものは乾燥が進み繊維質が増えて甘みが少ない傾向がある。 |
黒い樹脂状のシミ
切り口やヘタ付近に、白い液体がにじんで黒く固まった跡が見えることがあります。
これは蜜ではなく、サツマイモ特有の成分「ヤラピン」を含む乳液が、空気に触れて酸化し黒ずんだものです。
黒い樹脂状のシミがある芋は「蜜があると甘い」と紹介されることもありますが、ヤラピン自体は糖ではないため、甘さの確定サインではありません。
形・重さ・表面のなめらかさ等とあわせて総合判断するのがおすすめです。
(※参考:「ヤラピン」とは|サツマイモ特有の成分を分かりやすく解説 )
さつまいもは熟成(追熟)でさらに甘くなる

最後に覚えておきたい豆知識として、さつまいもの甘さは収穫後の貯蔵(追熟)によって大きく向上するという点に触れておきます。
実は掘りたての新芋は水分こそ多くホクホク感も楽しめますが、糖度自体はそれほど高くありません。
収穫後しばらく(目安として1〜2ヶ月)貯蔵することで、芋の中のデンプンが糖に変化し甘みが増してくるのです。
さつまいもの貯蔵には、温度管理が重要です。
目安としては、13〜15℃前後・乾燥しすぎない冷暗所で保管します(低温に弱いため冷蔵庫は避け、10℃を下回らないよう注意)。
また、18℃以上では発芽・発根など品質低下が起きやすいので、暖房の効いた部屋など高温環境も避けます。
例えば、京都教育大学のレポートでは、収穫直後の生イモのBrix糖度が6.6%で、貯蔵約3ヶ月後に13.7%に上昇したとされています。
さらに、加熱後のBrix糖度も上昇することが示されています(※品種・貯蔵環境・加熱方法で数値は変動します)。
そのため、生産者の間では収穫後すぐに出荷せず一定期間貯蔵庫で寝かせて熟成させてから市場に出すことも一般的です。
貯蔵中は芋自体が傷を自己修復し、じっくり糖化が進むので、いわば芋がおいしさを蓄えている期間といえます。
事実、スーパーなどに並ぶさつまいもは10月下旬〜翌年2月頃にかけて熟成を経たものが多く、深みのある強い甘さを楽しめるものが増えます。
逆に秋口すぐ(9〜10月上旬)の出始めの頃は、甘さよりも風味やホクホク感を味わう時期といえるでしょう。
もし家庭菜園や芋掘り体験などで掘りたてのさつまいもを手に入れた場合は、新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所でしばらく追熟させてから食べると甘みが増して美味しくなります。
(※追熟に関しましては『さつまいもの熟成とは何ですか?』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
まとめ

さつまいもを美味しくいただくためには、品種の特徴を知った上で外見から良品を見極めることが大切です。
ほくほく系・ねっとり系など品種による食感の違いを踏まえた上で、形がふっくらとしていて表面が滑らか、皮の色が濃くツヤがありずっしり重たいものを選ぶようにしましょう。
収穫直後より適度に熟成された芋のほうが甘みが強いことも覚えておくと、旬の時期により甘いさつまいもを手に入れるヒントになるでしょう。
本記事でご紹介したポイントを押さえれば、きっと焼き芋にして最高に甘いさつまいもに出会えるはずです。
秋から冬にかけて店頭に並ぶさまざまな品種をぜひ手に取って、見た目と品種名から美味しそうな一本を選んでみてください。
ほくほく&ねっとりとした甘いさつまいもで、心も体もほっこり満たされますように。
楽しみながら美味しいさつまいも選びに挑戦してみてください。
(※同じさつまいもでも、甘さは「焼き方」で大きく変わります。焼き芋の甘さに関しましては『さつまいもの甘さの秘密|「熟成」「糊化」「糖化」とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
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