
焼き芋ブームの中、「紅あずま」「紅はるか」など名前に「紅」が付くさつまいもをよく耳にします。
その中でも異色なのが「紅さつま」です。
その名に「さつま(薩摩)」を冠する通り鹿児島県で主に栽培されている品種で、「高系14号」と呼ばれる系統から選抜された地方品種になります。
(※「高系14号」に関しましては『「高系14号」の特徴とは?伝統品種の魅力と他品種との徹底比較』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
今回は、この紅さつまとはどんな品種なのか、その特徴や他品種との違いについて、わかりやすくご説明したいと思います。
紅さつまとはどんな品種?

紅さつま(ベニサツマ)は、鹿児島県(指宿市・南九州市など)を中心に、青果用として広く栽培・出荷されてきた品種(系統)です。
昭和20年頃に育成された「高系14号」の派生系統のひとつとして位置づけられます。
たとえば徳島県の「鳴門金時」や石川県の「五郎島金時」、宮崎県の「宮崎紅」などが高系14号系統の代表例で、紅さつまもそれらと同じ系統のホクホク系品種と言えます。
東日本で主流の「紅あずま」に対し、西日本ではこの高系14号系統が広く栽培されてきた経緯があり、鹿児島県の南薩地域(指宿市・南九州市など)では、青果用さつまいもの主要品種として『紅さつま』が栽培・出荷されています。

紅さつまは鹿児島の温暖な風土に適応するよう選抜育成された品種です。
同じ品種でも、栽培条件や収穫時期、貯蔵温度・期間、加熱方法によって甘みや食感が変わるため、産地や扱い方で味わいに差が出ることがあります。
主な産地は鹿児島県南部の指宿市(いぶすき)や南九州市で、ハウス栽培による極早掘りから露地栽培まで組み合わせ、6月頃から翌1月頃まで長期間収穫・出荷されています。
鹿児島では一部を貯蔵し年間を通じて供給しており、さらに貯蔵中の熟成で甘みも増すため、旬以外の時期でも美味しい紅さつまを味わえるのです。
紅さつまの特徴(外観・食感・甘み)
それでは、紅さつまがどのようなさつまいもなのかを外観、食感、甘みの視点からご紹介したいと思います。
紅さつまの外観

紅さつまは皮の色が濃い紅赤色で、いかにも「さつまいも」らしい美しい外観をしています。
一方で中の果肉色は白に近い淡い黄色で、関東で多く出回る紅あずま(鮮やかな黄色の果肉)と比べると色味が薄いのが意外な点です。
しかし色が薄くても味の甘さはしっかりとしており、上品で強い甘みを十分に味わえる品種です。
紅さつまの食感

食感はホクホクと粉質で、加熱するとホクホク系ならではのほくほく感・ほっこり感が楽しめます。
紅さつまは焼き芋にすると甘みが強くホクホクした食感になり、香り高く上品な甘さが引き立ちます。
外観の美しさと相まって見た目・味・食感の三拍子が揃った人気品種であり、焼き芋にして紅さつま本来の甘さとホクホク感を楽しむのはもちろん、スイートポテトやチップス、大学芋など様々な料理にも使いやすい万能型の芋です。
紅さつまの甘み

紅さつまの甘みの質は濃厚ですがくどすぎず上品で、栗のような風味を感じる人もいます。
実際、紅さつまをはじめ糖度の高いホクホク系の芋を焼いたときは、まるで餡こや芋ようかんを食べているかのような濃厚な甘みになることもあります。
ホクホク派にはたまらない味わいでしょう。
紅さつまの旬と生産地

紅さつまの収穫最盛期は9〜11月頃の秋です。
温暖な産地では、ハウス栽培などにより初夏から新いもが出回ることがあります。
例えば指宿市や南九州市頴娃町(えいちょう)では5月下旬から紅さつま(愛称「えいもちゃん」)の出荷が始まっています。
収穫後の紅さつまは貯蔵性が高く、適切に温度管理しながら貯蔵することでデンプンが糖に変わりさらに甘みが増します。
そのため秋に収穫された紅さつまも冬〜春まで美味しさを保ったまま出荷・販売することが可能です。
実際、鹿児島県では冬場でも紅さつまを安定供給できるよう高度な選別・貯蔵技術を導入しており、市場から高い評価を得ています。
主要産地は前述のとおり鹿児島県南部で、ブランド名では「知覧紅(ちらんべに)」や「頴娃(えい)もちゃん」といった名称で出荷される紅さつまもあります。
鹿児島県以外でも栽培は可能ですが、気候や土壌条件の違いで甘み・食感に差が出ることもあり、やはり本場鹿児島産が安定した美味しさと言えます。
ホクホク系とねっとり系の違い

さつまいもには大きく分けてホクホク系(粉質系)とねっとり系(粘質系)があり、近年では両者の中間のしっとり系という分類も使われます。
それぞれ食感や甘さの傾向が異なり、焼き芋好きの間でも「ホクホク派」「ねっとり派」に好みが分かれるほどです。
紅さつまは昔ながらのホクホク派を代表する品種であり、その粉ふくほどのさらっとした食感が魅力です。
ホクホク系の特徴
ホクホク系の芋は、水分が少なく粉質でほっくりした食感と適度な甘さが特徴です。
加熱するとホクホクほくほくした栗のような食感になり、素朴で安定した美味しさがあります。
2000年代までは国内流通する青果用品種のさつまいもでは、ベニアズマや高系14号が長く主要品種として作付シェアを占めてきました。
代表品種は東日本の「紅あずま」と西日本の「高系14号」系統(例: 鳴門金時、紅さつま等)で、これらは昔ながらの焼き芋の定番です。
ホクホク系の焼き芋は二つに割るとほくほく粉がふくほど乾いた質感で、まさに「これぞ焼き芋!」という食感が楽しめます。
ねっとり系の特徴
ねっとり系の芋は、水分含有量が多く粘り気のあるしっとり食感が特徴です。
焼くと蜜がしみ出すほど糖度が高く非常に甘いものが多く、スプーンですくって食べられるほどトロトロになる品種もあります。
実は昔は水分の多い芋は「水芋」と言われ好まれなかったのですが、2000年代に種子島産「安納芋」の蜜芋ブームが起きてから一躍人気となりました。(参考:農畜産業振興機構ホームページ『2022年10月号 最近の焼きいもの動向』)
代表品種は「紅はるか」や「安納芋(安納紅)」で、近年は「シルクスイート」など新しい品種も登場し人気です。
ねっとり系は焼き芋に限らずスイートポテトやプリン、干し芋などにも向いており、濃厚な甘さをスイーツ感覚で楽しめます。
なお、ホクホク系とねっとり系の中間に位置するしっとり系(やや粘質)は、ホクホク感とねっとり感のバランスが良い品種群です。
近年話題の「シルクスイート」や電子レンジ調理向けの「クイックスイート」などは滑らかな舌触りが特徴で、料理用途も広いオールラウンダーと言えるでしょう。
主なさつまいも品種の比較
では、紅さつまを含む代表的な品種の特徴を色・食感・甘さの観点で比較してみましょう。
それぞれの個性を知ると、焼き芋や料理に合わせた品種選びの参考になります。

| 品種(産地) | 外皮の色 | 果肉の色 | 食感 | 甘さの特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 紅さつま(鹿児島) | 濃い紅色 | 淡い黄白色 | ホクホク系(粉質) | 甘みが強く上品 |
| 紅あずま(関東) | 赤紫色 | 鮮やかな黄色 | ホクホク系(粉質) | ほど良い甘さ |
| 鳴門金時(徳島) | 鮮紅色 | 金黄色 | ホクホク系(栗のような食感) | 甘さ控えめで上品 |
| 紅はるか(九州他) | やや紫がかった赤 | 濃い黄色 | ねっとり系(しっとり) | 強い甘み(焼くと蜜のような甘さ) |
| 安納芋(種子島) | 赤橙色(※) | 橙黄色(オレンジ) | ねっとり系 | 非常に甘い(蜜がにじむ) |
※甘さ・食感は「収穫直後か貯蔵後か」「焼き方(温度帯・時間)」で変わります。
※安納芋の皮色は系統により異なりますが、「安納紅」は赤紫色の皮、「安納こがね」は薄黄皮です。
上記のように、紅さつまはホクホク系の中でも甘みが強い品種で、同じくホクホク系の紅あずまや鳴門金時と比べても甘さが際立ちます。
特に鳴門金時は甘さが上品でさらっとしているのに対し、紅さつまはしっかりとした甘さと香りが楽しめる点で差別化できます。
一方、近年人気の紅はるかや安納芋などねっとり系品種は圧倒的な甘さとしっとり食感が魅力ですが、紅さつまのようなホクホク系には素朴で飽きのこない美味しさがあります。
好みや料理に合わせて使い分けてみると良いでしょう。
紅さつまの美味しい食べ方・調理用途

焼き芋に最適なのは言うまでもなく、紅さつまは焼くことで強い甘みとホクホク食感が引き立ちます。
石焼き芋やオーブン焼き芋にすると、皮の芳ばしさと中身のホクホク感、上品な甘さが存分に楽しめます。
焼き芋は、芋の内部温度が65〜75℃程度の時間を長く取れると、β-アミラーゼの作用で甘味成分(麦芽糖など)が増えやすいとされています。(※β-アミラーゼに関しましては『さつまいもの甘さの秘密「β-アミラーゼ」を分かりやすく解説します』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
弱火でじっくり加熱するのがコツです。
紅さつまは調理適性が高く万能な品種でもあります。

ホクホク系で水分が少なめなため、天ぷらにすると衣との相性が良くサクッとホクホクに揚がりますし、ふかし芋にすると甘くホロッと崩れる食感が楽しめます。
また、スイートポテトや芋ようかんなどお菓子作りにも向いており、紅はるかほど水っぽくないため素材の風味を活かしやすいです。
大学芋や甘露煮にしてもホクホク感と甘さが程よく調和し、美味しく仕上がります。

保存については、紅さつまに限らずさつまいも全般で共通ですが、低温に弱いため冷蔵庫での保存は避けましょう。
泥付きであれば新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所に置き、洗ってあるものは早めに使い切るのが望ましいです。
適温は13〜16℃程度と言われています。
長期保存する際は傷まないよう注意し、必要に応じて貯蔵中に熟成させると甘みが増す利点も活かせます。
さつまいもの栄養面のポイント

さつまいもには栄養面でも嬉しいポイントがあります。
さつまいもはビタミンや食物繊維が豊富な健康野菜です。
特にさつまいもにはビタミンCが多く含まれていますが、このビタミンCはイモのデンプンに守られて加熱による損失が少ないため、焼き芋や蒸し芋にしても効率よく摂取できます。(※焼き芋のビタミンCに関しましては『焼き芋のビタミンCは壊れにくい?含有量と健康効果を徹底解説』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
カロリーは、文科省の食品成分データベースでは、焼き芋(皮なし)は151kcal/100g、ご飯(精白米)は156kcal/100gです。(※焼き芋のカロリーに関しましては『焼き芋のカロリーは?|「1本」や「100g」のカロリーの目安』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
焼き芋約1本分の150g換算では、焼き芋は約227kcal、ご飯は約234kcalとなり、ほぼ同程度です。
しかもサツマイモには食物繊維やカリウム、ビタミンE等も含まれ、自然の甘みと栄養バランスを兼ね備えた優秀な食品と言えます。
またさつまいもの皮にはポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれています。(※焼き芋のポリフェノールに関しましては『さつまいものポリフェノールの効果とは?』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
皮ごと調理すると食物繊維も摂れますし、抗酸化作用のある成分も無駄なく取れるのでおすすめです。(※焼き芋の皮に関しましては『焼き芋の皮は食べるべき?栄養たっぷりの皮までおいしく食べる方法と注意点』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
焼き芋にすると皮まで香ばしく食べやすいので、ぜひ丸ごと味わってみてください。
まとめ

紅さつまは、鹿児島を代表するホクホク系のさつまいもで、その美しい紅色の皮と強い甘み・ホクホク食感が魅力の品種です。
焼き芋にすれば芳醇な甘さとほっくりした食感で、「これぞさつまいも!」という満足感が味わえます。
特にホクホク派の焼き芋好きにはぜひ一度試していただきたい品種です。もちろん、スイーツ作りや料理にも幅広く活用できるため、一箱あっても使い道に困りません。
昨今は紅はるかやシルクスイートなど新顔の品種も人気ですが、紅さつまのような昔ながらのホクホク系には素朴で飽きの来ない美味しさがあります。
ぜひ紅さつまを手に取って、その上品な甘さと栗のようなホクホク感を存分に楽しんでみてください。
食べ比べ派の方は、紅さつまと紅はるかなど異なる系統の芋を食べ比べてみるのも面白いでしょう。
それぞれの個性を知ることで、さつまいも選びが一段と楽しく、美味しいものになります。
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