「なると金時(鳴門金時)」の特徴とは

日本全国で人気のさつまいも「なると金時(鳴門金時)」。

その名前の由来や味わいの特徴、他の品種との違いなど、気になるポイントをわかりやすくご説明したいと思います。

この記事では、鳴門金時の発祥や栽培環境、甘さや食感といった特徴に加えて、近年話題の「紅はるか」や「シルクスイート」「紅あずま」との比較も交え、鳴門金時の魅力に迫りたいと思います。

(※正式には「なると金時」ですが、本記事では一般的に使われている「鳴門金時」という表現も使っています。)

「なると金時(鳴門金時)」とはどんなさつまいも?

「なると金時(鳴門金時)」とはどんなさつまいも?

「なると金時(鳴門金時)」は、徳島県鳴門市・徳島市・板野郡で生産された高系14号という品種の地域ブランド(地域団体商標)です。(参考:『商標登録第5043110号 なると金時(なるときんとき)』)(※高系14号に関しましては『「高系14号」の特徴とは?伝統品種の魅力と他品種との徹底比較』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

指定地域で生産されたものだけが「なると金時」を名乗ることができます。

1975年頃に導入された金時系の系統から、生産者が皮色などの良い系統を選抜し、1980年頃に「なると金時」と命名されたとされています。(参考:レファレンス協同データベース『「なると金時」について知りたい。』)

発祥の地は徳島県鳴門市の大毛島(おおげじま)とされ、当初は地元で栽培されていた高系14号という早堀り用の品種を選抜・改良されたものです。(参考:公益社団法人 徳島県産業国際化支援機構『なると金時』)

表皮が鮮やかな紅色で中身が黄金色

名前の「金時」は表皮が鮮やかな紅色で中身が黄金色であることにちなみ、古くから色の美しいさつまいもを「金時芋」と呼んでいたことに由来します。

実際、生の鳴門金時は皮が均一で美しい濃紅色、果肉は薄いクリーム色ですが、加熱すると中身が鮮やかな黄金色に変化し、これが名前の由来にもなっています。

鳴門金時最大の特徴は、栗のようにホクホクとした食感上品で程よく強い甘みにあります。

焼き芋にするとその魅力が最大限に引き出され、甘みと旨みが凝縮した濃厚な味わいが楽しめます。

砂糖を加えなくても十分甘いので、素材本来の風味を活かした和菓子作りにも重宝され、「栗きんとん」の代わりに使われることもあるほどです。

実際、徳島県里浦地区産の高級鳴門金時ブランド「里むすめ」は、きめ細かな外観と上質な甘さで知られ、贈答用や和菓子材料としても人気があります。

また、鳴門金時は地域ブランドとしての一面も持っています。

「なると金時」いう名称は徳島県内の指定地域で生産されたものだけが名乗ることが許された地域団体商標であり、その権利は全国農業協同組合連合会(JA全農)が管理しています。

例えば同じ徳島県産でも、里浦町産は「里むすめ」、川内町産は「甘姫」、松茂町産は「松茂美人」など産地ごとにブランド名があり、品質向上の努力が日々競われています。

このように、鳴門金時は徳島生まれの宝物とも称され、その名前自体が品質と信頼の証になっているのです。

鳴門金時のおいしさを引き出す栽培環境

鳴門金時のおいしさを引き出す栽培環境

鳴門金時が高品質で美味しい理由の一つに、その特別な栽培環境があります。

主な生産地は徳島県北東部、鳴門市や松茂町などの海沿いの砂地畑です。

鳴門海峡に面した砂地は水はけと通気性が非常に良く、さらに潮風が運ぶミネラル分を豊富に含んでいます。

この海砂混じりの砂土地こそが鳴門金時のおいしさの秘密で、芋に栄養を行き渡らせるとともに、美しい紅色の皮と独特の風味を育んでいるのです。

瀬戸内式気候

徳島県のこの地域は温暖で雨が少ない瀬戸内式気候でもあり、さつまいもが糖分を蓄えるのに最適な環境です。

日中の適度な乾燥と昼夜の寒暖差がでんぷん質の糖化を促し、鳴門金時の甘みを一層引き出します。

また、砂地で栽培される鳴門金時は形が整いやすく、表面にひげ根(細かい根)が少ない傾向があります。

ひげ根が少なく傷のない綺麗な外観は、健全に育った証拠であり、市場でも高品質の基準とされています。

鳴門金時の旬と美味しい食べ方

鳴門金時の旬と美味しい食べ方

鳴門金時の収穫の最盛期は8〜9月頃で、晩夏〜秋に新芋が出回ります。

収穫後に貯蔵して出荷するため、店頭では比較的長い期間流通します。

収穫直後よりも一定期間「熟成」させることで、でんぷんが糖に変わって甘みが増し、年明け頃には甘さが乗ってきます。

鳴門金時の持ち味であるホクホク感は保ちつつ、貯蔵条件によってはしっとり感が増すこともあります。

まさに寒い季節の焼き芋にぴったりの逸品です。

保存方法

保存方法にもひと工夫が必要です。

サツマイモの貯蔵適温はおおむね13〜15℃前後とされ、10℃以下の低温では低温障害や腐敗リスクが高まります。

家庭の冷蔵庫は低温・乾燥になりやすいので、基本的には避けるのが無難です。

新聞紙に包んで乾燥を防ぎ、直射日光や寒気を避け、冷暗所で保存すれば、収穫後もしばらく品質を保てます。

こうして適切に常温保存しつつ時間を置くことで、甘みがぐっと増した鳴門金時を楽しむことができます。

鳴門金時を美味しく調理するコツは、じっくり火を通すことです。

特に焼き芋にする場合は、オーブンや石焼きなど低温~中温で時間をかけて火を通すと、芋の中心までしっかり糖化が進みます。

実際、鳴門金時のホクホク感と甘みを最大限に引き出すには温度調整が重要で、オーブン加熱なら初心者でも簡単においしく焼き上げられます。

焼き上がった鳴門金時は皮ごとスプーンで食べられるほど柔らかく、素材本来の上品な甘さを堪能できます。

料理への応用も幅広く、鳴門金時は和洋問わず活躍します。

定番の石焼き芋やふかし芋はもちろん、ほくほく感を活かして天ぷらや煮物にするのもおすすめです。

糖度が高く上品な甘さはスイートポテトや芋ようかんなど洋菓子・和菓子作りにも向いており、実際にお土産菓子として鳴門金時を使ったスイーツも数多く販売されています。

素朴で懐かしい甘みの鳴門金時は、食卓の主役からおやつまで幅広く楽しめる万能選手なのです。

鳴門金時と他の人気さつまいも品種の違い

鳴門金時と他の人気さつまいも品種の違い

鳴門金時の特徴をより深く知るために、他の代表的なさつまいも品種と比べてみましょう。

近年は「紅はるか」や「シルクスイート」といった新品種が台頭し、従来からある「紅あずま」と併せてスーパーでも見かける機会が増えました。

それぞれ甘さや食感に個性があり、鳴門金時との違いを知ると料理や好みに合わせた選び分けができます。

以下に鳴門金時と主要品種3種の特徴を比較した表を示します。

品種(主な生産地・登録年)甘さの特徴食感の特徴おすすめ調理法その他の特徴
鳴門金時(徳島県・1980年命名)上品でコクのある甘さホクホク系(栗のような風味)焼き芋、天ぷら、和菓子(栗きんとん等)徳島限定ブランド。皮は赤紫、中身は加熱で黄金色。砂地栽培で甘みが強い。
紅はるか(宮崎県など・2010年)極めて強い甘さ(熟成後は糖度50度超)ねっとり系※(しっとり滑らか)石焼き芋、干し芋、スイーツ全般名称は「はるかに甘い」に由来。近年生食用シェア1位。焼くと蜜が出るほど甘い。
シルクスイート(関東地方・2018年)上品で自然な甘さしっとり系(絹のような滑らかさ)焼き芋、スイートポテト、ポタージュ名称は「絹のような食感」から。民間種苗会社が開発。甘みは紅はるかに次ぐが収穫後早期から甘い。
紅あずま(関東地方・1985年)素朴で控えめな甘さホクホク系(繊維少なめ)大学芋、ふかし芋、天ぷら昭和後期に育成され90年代以降長く主力品種。皮は濃赤紫で肉は黄、形は長紡錘形。貯蔵性が高く家庭料理向き。

※紅はるかは新芋(収穫直後)はややホクホクしていますが、収穫後1~2ヶ月貯蔵し熟成させることでねっとり食感と強い甘さに変化します。

上の表からも分かるとおり、鳴門金時はホクホク系の甘藷としては甘みが強く、芋そのものの風味が上品でコクがあります。

一方、近年人気の紅はるかやシルクスイートはねっとり系の甘藷で、しっとり滑らかな舌触りと驚くほどの甘さが特長です。

最後に、紅あずまはかつて主流だった昔ながらのホクホク系で、甘さもクセも強すぎないため料理全般に使いやすい万能型と言えるでしょう。

さつまいもの品種別比較

では、それぞれの品種についてもう少し詳しく見てみましょう。

紅はるか – 驚きの甘さを誇る新星品種

紅はるか

紅はるか」は2010年に品種登録された比較的新しいさつまいもで、その名のとおり「はるかに甘い」つまり“従来より格段に甘い”ことをアピールしています。

実際、適切に貯蔵・熟成させた紅はるかを焼くと糖度が50度近くにも達し、蜜があふれ出すほどの衝撃的な甘さになります。(※糖度(Brix)は熟成期間や焼き方、測定方法・測定部位によって大きく変わるため、数値は目安です。詳しくは『さつまいもの糖度(Brix値)とは?甘さの指標「糖度」の秘密』をご参照ください。)

この圧倒的な甘さとしっとり食感から、「焼き芋ブーム」の立役者となり、一躍人気品種になりました。

農林水産省の公表資料では、令和4年度の品種別の作付シェアは「べにはるか」が21.9%で1位とされています。(参考:農林水産省ホームページ『いも・でん粉に関する資料』)

皮は濃い赤紫色、加熱後の果肉はオレンジに近い濃い黄金色で、見た目にも蜜芋らしいねっとり感がにじみ出ます。

甘さが強いためスイーツ作りにも向きますが、素材の甘みが際立つ焼き芋や干し芋で真価を発揮します。

紅はるかはまさに「大地のスイーツ」とも言える存在で、鳴門金時の上品な甘さとはまた異なる濃厚な甘さの世界を楽しめる品種です。

(※紅はるかに関しましては『紅はるか(べにはるか)の特徴|焼き芋好きに人気の秘密と他品種との違い』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

シルクスイート – 絹のような舌触りを持つ人気急上昇品種

シルクスイート

シルクスイート」は2018年に登録された新品種で、群馬県の種苗会社(カネコ種苗)によって開発されました。

親品種は紅まさり×春こがねで、その名が示す通り絹のように滑らかな舌触り上品な甘さが特徴です。

皮はやや丸みのある紡錘形で濃い紅色、中の肉色は加熱すると黄色~黄橙色になります。

食感は鳴門金時や紅あずまのホクホクとも、紅はるかのねっとりとも一線を画すしっとりなめらかな中間食感で、「ホクホクとねっとりのいいとこ取り」と評されることもあります。

甘さそのものは紅はるかほど極端ではなく自然で程よい甘みですが、十分に熟成させてから加熱すれば蜜がにじむほど甘くなります。

しかも紅はるかより収穫後早い時期から甘みを感じやすいため、新芋の時期から美味しくいただけるのも利点です。

シルクスイートは焼き芋はもちろん、ポタージュやスイートポテトなどクリーミーさを活かした料理にも向いており、デザート感覚で楽しめる新感覚のさつまいもとして人気が急上昇しています。

鳴門金時のホクホク感とは対照的な食感ですが、上品でくせのない甘さという点では通じるものがあり、食べ比べると面白いでしょう。

(※シルクスイートに関しましては『シルクスイートの特徴とは?紅はるかとの違いや選び方・保存方法まで徹底解説』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

紅あずま – 長年愛された定番ホクホク品種

紅あずま

紅あずま(ベニアズマ)は農業研究センターで育成され、1984年に出願、1985年に品種登録(登録番号892)された品種です。

名前の「あずま」は東日本(関東)での普及を期待して付けられており、その名の通り茨城県や千葉県を中心に広く栽培されてきました。

皮はムラのない濃い赤紫色、果肉は鮮やかな黄色で、いもの形は細長い紡錘形に揃いやすいという栽培上の特徴があります。

蒸したり茹でたりすると粉質のホクホク食感になり、甘さは上品で控えめながら食味は良好と評価されています。

紅あずま最大の長所は、安定した収量と扱いやすさです。

栽培適応性が広く貯蔵性も高いため、生産者からも家庭からも長く信頼されてきました。

その甘さは近年の紅はるかほど強烈ではありませんが、素朴で自然な甘みで飽きがこず、料理の引き立て役にもなります。

天ぷら大学芋、スープやコロッケなど、紅あずまは加熱しても形が崩れにくいので調理用途が幅広いのも魅力です。

鳴門金時と比べると甘味は控えめですが、その分料理全体の味を調和させやすく、まさに「家庭の定番いも」として親しまれてきた品種と言えます。

(※紅あずまに関しましては『「紅あずま」の特徴と魅力|ホクホク食感が自慢の定番さつまいも』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

まとめ

まとめ

鳴門金時は、徳島の恵まれた環境と生産者の情熱が生んだホクホク系さつまいもの最高峰です。

鮮やかな紅色の皮と黄金色の実、栗のような食感と上品な甘さという独自の特徴で、多くの人々を魅了してきました。

その一方で、紅はるかやシルクスイートといった新しい品種が登場し、さつまいもの世界はますます多様で奥深いものになっています。

鳴門金時の魅力は決して色あせることはなく、地域ブランドとして守られながら進化を続けていると言えるでしょう。

ホクホク派もねっとり派も、それぞれの好みに合ったさつまいもを選ぶことで、料理やおやつの満足感がぐっと高まります。

ぜひ旬の時期には鳴門金時を手に取って、その上品な甘みとほくほく感を味わってみてください。

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