全国のさつまいも郷土菓子

はじめに

はじめに

さつまいもは日本各地で古くから親しまれ、多くの郷土菓子の主役となっています。

さつまいもは、江戸時代初期に中国から琉球へ伝わった(通説では1605年)とされ、その後、江戸時代中期に薩摩へ伝来した(通説では1705年)とされています。※伝来年代やルートには諸説あります。

江戸時代後期には江戸の町で焼き芋が大流行し、飢饉対策の保存食から嗜好品へと役割を変えていきました

農林水産省の作物統計(令和5年産)によると、かんしょ収穫量は鹿児島県が全国1位で、次いで茨城県、千葉県が続きます。(※さつまいもに関しましては『さつまいもとは?日本への伝来・普及の歴史と主な品種・産地を解説』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

こうした背景から各地でさつまいもの豊かな甘みを活かした郷土菓子が生まれ、地域の人々に愛されてきました。

さつまいもを使った郷土菓子の多くは、手に入りやすい食材で工夫して作られた素朴なおやつです。

例えば、戦時中や戦後の食糧難の時代には米の代用品としてさつまいもや小麦粉で作られた菓子が考案され、腹持ちの良いおやつとして人々の空腹を満たしました

また、農村では収穫したさつまいもを保存食として活用する知恵から生まれた菓子も多くあります。

以下では、日本各地の代表的なさつまいも郷土菓子を種類ごとにまとめ、その特徴や歴史をわかりやすくご説明したいと思います。

主なさつまいも郷土菓子一覧

主なさつまいも郷土菓子一覧

まずは、日本各地の主なさつまいも郷土菓子を一覧表で紹介します。

それぞれの菓子の地域と特徴を簡潔にまとめました。

郷土菓子名(地域)概要・特徴
干しいも(茨城県ほか)蒸したさつまいもを薄切りにして乾燥させた保存食。発祥は静岡県御前崎で1824年に栗林庄蔵が考案され、全国に広まった。現在では国内生産の約9割を茨城県が占める伝統食品。
きんこ(三重県志摩地方)さつまいも(隼人芋)を茹でて天日乾燥させた干し芋。海女や漁師の保存食として各家庭で作られ、「きんこ」という名は干しナマコ(海参)の地方名「金ん子」に由来するとされる。しっとりと羊羹のような食感が特徴。
いもべら(芋べら)小豆(高知県)丸ごと茹でて乾燥させたさつまいも(「ゆでべら」「煮べら」)を使用した高知県いの町の郷土菓子。輪切り乾燥したさつまいもに甘く煮た小豆を添えて食べる素朴なお菓子で、ねっとりホクホクした自然の甘さが楽しめます。
鬼まんじゅう(愛知県)角切りさつまいもを小麦粉生地に混ぜて蒸した素朴な蒸し菓子。戦時中~戦後の食糧難に、米の代用主食として広まった経緯を持ち、ゴロゴロ見える芋の角が鬼のツノのように見えることが名前の由来。地域により「芋まん」「芋ういろ」などとも呼ばれる。
いきなり団子(熊本県)輪切りのさつまいもと餡(現在は小豆あんが主流)を小麦粉生地で包んで蒸した郷土菓子。農作業の合間に食べるおやつとして作られ、「いきなり(=すぐに)」作れる手軽さが名前の由来となっています。熊本県を代表する郷土菓子で急な来客へのもてなしにも重宝されました。
からいもねったぼ(鹿児島県)つきたての餅に蒸したさつまいもを練り込んだ餅菓子。鹿児島ではサツマイモのことを「からいも」と呼び、正月の餅つきで餅米が貴重だった時代にさつまいもを混ぜて量を増やす知恵から生まれたとされます。きな粉と砂糖をまぶして食べる素朴な甘味です。
かんころ餅(長崎県五島列島)薄切りにして日干ししたさつまいも(=かんころ)と餅を搗き合わせて作る長崎五島の代表的郷土菓子。もち米が貴重な時代に芋を混ぜて餅を増量した先人の知恵で、冬の保存食として各家庭で作られました。今も故郷の味として愛される素朴なお餅です。
こっぱ餅(熊本県天草地方)天草地方伝統の餅菓子で、煮干したさつまいもと餅米、上白糖を練り上げたもの。各家庭で作られた保存食で、添加物不使用の昔ながらの味わい。さつまいもの自然な甘みともっちり食感が特徴で、懐かしい故郷の味として親しまれています。
石垣もち(大分県)角切りさつまいもを小麦粉生地に混ぜて蒸した農家のおやつ。【名前に「もち」と付くが餅米不使用】で、生地の中にゴツゴツと芋が見える様子が石垣のように見えることから名付けられました。噛み応えのある素朴な甘さで、農作業の合間に冬春によく食べられていた伝統菓子です。
しんちょき餅(大分県津久見市ほか)津久見市や県南地域に伝わるおやつ。蒸して潰したさつまいもに小麦粉・塩を混ぜて丸く成形し蒸した餅菓子で、中に小豆餡を包むこともあります。昔は米が少なく、昼食代わりに食べて腹持ちを良くしたと言われ、ミカン収穫時の小腹満たしにも作られました。当初は餡もさつまいも餡でしたが、後に小豆餡が一般的になりました。
芋けんぴ(高知県)細長く切ったさつまいもを油で揚げ、砂糖蜜を絡めたシンプルなお菓子。高知県発祥の代表的郷土菓子で、ポリポリとした歯ごたえと芋本来の風味が楽しめるのが特徴です。素材は土佐紅や紫芋など様々な品種が使われ、現在ではゴマまぶしや塩味、チョコがけなど多彩なアレンジ商品も開発されています。
いもあげ(秋田県)輪切りのさつまいもに衣を付けて揚げたお菓子。【さつまいもの素朴な甘みと衣の香ばしさ】が合わさった、祭りの露店などでも人気の一品です。(※北海道の名物「揚げいも」とは別ものです。)
いももち天ぷら(鹿児島県奄美大島)奄美大島に古くから伝わる行事菓子。蒸したさつまいもを潰し、団子粉・砂糖・塩と混ぜて丸め、油で揚げた素朴な揚げ菓子です。お祭りや正月などには必ず振る舞われ、外はカリッと中はほくほくで、鹿児島本土や宮崎南部にも似たお菓子があります。

※上記の郷土菓子は一例です。地域によって名称やレシピが少しずつ異なる場合がありますが、基本的な材料や作り方には共通点が多いのも特徴です。

それでは、これらさつまいも郷土菓子を種類別にもう少し詳しく見ていきましょう

干し芋・乾燥さつまいもの郷土菓子

干し芋・乾燥さつまいもの郷土菓子

まずは、さつまいもを乾燥させたタイプの郷土菓子です。

干し芋

【選び方2】形状で選ぶ

干し芋(乾燥芋)はシンプルながら栄養価が高く、保存が利くことから全国各地で作られてきました。

代表的なものが「干しいも」で、現在は日本の干しいもの生産量の約9割を茨城県が占めるといわれます。(参考:茨城をたべよう『ほしいも』)

干しいもは蒸したさつまいもを薄く切って天日干ししたもので、別名「甘藷蒸切干(かんしょむしきりぼし)」とも呼ばれます。

発祥は静岡県遠州地方とされ、1824年に静岡・御前崎の栗林庄蔵が考案した「煮切り干し」製法が始まりでした。

その後、明治期に茨城などで蒸して乾燥させる製法が普及し、現在の主流になりました。

干しいもはほんのりとした甘さとねっとりした食感が特徴で、お茶請けや子供のおやつとして今も親しまれています。

(※「干し芋」に関しましては『干し芋とは|歴史から栄養、美味しい食べ方まで徹底解説!』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

きんこ

干し芋の一種に、三重県志摩地方の「きんこ」があります。

隼人芋(はやといも)という品種のさつまいもを茹でてから乾燥させるのが特徴で、静岡・茨城の一般的な干しいも(蒸して乾燥)とは製法が異なります

かつて志摩地域では各家庭で作られ、海女さんや漁師さんがミネラル補給に食べていた保存食でした。

名前の「きんこ」は、干しナマコの地方名「金ん子」に由来し、見た目が干しナマコに似ていることからこう呼ばれたと言われます。

水分を飛ばした芋とは思えないほどしっとり柔らかく、羊羹のような食感で、素材の甘みが凝縮されています。

芋べら

また、高知県いの町には「芋べら」と呼ばれる干し芋菓子が伝わります。

さつまいもを丸ごと茹でて少し干し、半乾きになったところで輪切りにし、さらに天日で干したものが「ゆでべら」や「煮べら」と呼ばれる干し芋です。

これをそのまま食べたり、炙って食べたりしますが、いの町では茹でべらと小豆を甘く煮合わせた「いもべら小豆」というおやつも作られています。

ねっとりと濃厚な芋の甘さに小豆の風味が加わり、素朴ながら奥深い味わいです。

芋べら自体は保存が利くため農閑期のおやつとして重宝され、必要な分だけ炙って柔らかくして食べるなど工夫されてきました。


このように、干し芋系の郷土菓子はさつまいもの保存食という側面から発展しました。

現代では栄養豊富なヘルシースナックとして見直されており、茨城県ひたちなか市には干し芋にちなんだ神社(ほしいも神社)まで創建されています。

干し芋を使った洋風のお菓子や新商品も登場するなど、伝統の干し芋文化が新たな形で盛り上がっています。

蒸し菓子・蒸し饅頭系の郷土菓子

蒸し菓子・蒸し饅頭系の郷土菓子

次に、蒸し器で蒸して作るタイプの郷土菓子を見てみましょう。さつまいもと粉を練って蒸し上げる菓子は各地にあり、素朴な甘さとふかふかの食感が楽しめます。

鬼まんじゅう

鬼まんじゅうの基本

代表的なのが愛知県の「鬼まんじゅう」です。

角切りにしたさつまいもを、小麦粉を練った生地に混ぜて蒸したお菓子で、名古屋を中心に親しまれてきました。

蒸した際に表面にゴツゴツとさつまいもの角が突き出る見た目が鬼の金棒やツノを連想させることが名前の由来です。

鬼まんじゅうは戦時中から戦後まもなくの頃、手に入りやすいさつまいもと少量の小麦粉で作れる腹持ちの良いおやつとして広まりました。

当時は芋自体の美味しさより量を確保することが重視され、収量の多い品種(護国芋など)が使われていたようですが、現在ではより甘い品種(紅あずま・紅はるか・安納芋など)で作られることが多いです。

生地はもっちり重めで非常に食べ応えがありますが、最近では蒸しパンのようにふんわりした生地の鬼まんじゅうや、さつまいもの代わりに角切りリンゴを入れた変わり種も登場しています。

地域によって「芋ういろ」「芋まん」など別名もありますが、素朴でやさしい甘さは共通です。

(※「鬼まんじゅう」に関しましては『「鬼まんじゅう」とは?名古屋を中心に東海地方で親しまれる郷土菓子』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

いきなり団子

「いきなり団子」とは

熊本県の「いきなり団子」も蒸し菓子の代表例です。

厚めに輪切りにした生のさつまいもと、小豆餡を小麦粉やもち粉の生地で包んで蒸したお菓子で、熊本では昔から日常的に食べられてきました。

農家ではさつまいもの収穫期の秋、農作業の合間にすぐ作って食べられるおやつとして定番で、その手軽さから「いきなり(=すぐに)団子」と名付けられたと言われます。

実際に熊本の方言で「いきなり」は「簡単に、すぐに」という意味があり、急な来客でもすぐ作って出せることにも由来するそうです。

なお、「いきなり団子」は、農林水産省が公表した「農山漁村の郷土料理百選」の資料でも、熊本県の郷土料理として「いきなりだご」の表記で掲載されています。(参考:農林水産省ホームページ『農山漁村の郷土料理百選について』)

昔は具がさつまいもだけの非常にシンプルなものでしたが、数十年前から小豆あんを一緒に包むのが主流となり、ホクホクの芋と甘い餡、そしてほんのり塩味の生地の組み合わせが人気です。

最近では生地にヨモギを練り込んだり、きな粉をまぶしたり、紫芋餡・栗餡・くるみ入りなどバリエーションも増えています。

出来立ての温かいものが格別ですが、冷凍したものを半解凍でひんやりいただく「冷やしいきなり団子」が登場するなど、新しい楽しみ方も生まれています。

(※「いきなり団子」に関しましては『「いきなり団子」とは?熊本の愛され郷土菓子』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)

石垣もち

石垣もち

大分県の「石垣もち」も蒸し菓子の一種ですが、前述の通り餅米を使わないユニークな郷土菓子です。

小麦粉と水でこねた生地に小さく切ったさつまいもを混ぜ、丸めて蒸すだけという非常にシンプルな材料・製法。

地域によっては「切り込み餅(芋を切り込むから)」「こね込み餅(芋をこね込むから)」など異なる名前で呼ばれ、多少レシピも異なりますが、本質は同じおやつです。

ふかしたさつまいもの自然な甘みと、小麦粉だけとは思えないもっちりした食感で、噛むほどに味わい深い素朴な甘さが楽しめます。

「石垣もち」は冬から春にかけて農作業の合間に食べられ、疲れた身体を癒やしていたとも伝わります。

なお名前に「もち」と付いていますが繰り返しになりますとおり餅米不使用で、見た目以外はお餅というより蒸しパンに近い存在です。

現在でも大分県内の道の駅や和菓子店などで売られており、郷愁を誘う味わいとして幅広い世代に親しまれています。

(※「石垣もち」に関しましては『「石垣もち」とは?大分の素朴な郷土菓子』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)


以上のように、蒸し菓子系の郷土菓子は素材の風味を生かした素朴さが魅力です。

さつまいものホクホク感と程よい甘さが引き立ち、ほっとするような優しい味わいが多いです。

いずれも家庭のおやつから生まれ、時代とともに改良されながら受け継がれてきた伝統の一品と言えるでしょう。

餅菓子系の郷土菓子

餅菓子系の郷土菓子

次は、さつまいもとお餅を組み合わせた郷土菓子を見ていきましょう。

さつまいもは餅米や上新粉と相性が良く、餅に混ぜたり餡にしたりして様々な餅菓子が考案されています。

からいもねったぼ

鹿児島県や宮崎県南部で親しまれる「からいもねったぼ」(地域により「ねったぼ」「ねりくり」「いも餅」とも)は、その代表格です。

つきたてのお餅に茹でたさつまいもを練り込んで作る餅菓子で、お正月の餅つきの際に最後の一臼にさつまいもを混ぜて作ったのが始まりとも言われます。

薩摩藩のある鹿児島県では特産のさつまいもを使った郷土料理が数多くあり、その一つがこのねったぼです。

「ねったぼ」という名前は諸説ありますが、「練ったぼたもち」を略したとの説や、餅を「ねった(練った)」ことから来ている説があります。

できたてを千切ってきな粉(砂糖とひとつまみの塩を混ぜる)にまぶして食べると格別で、芋の甘さと餅の腹持ちの良さで昔から農作業の合間の間食や子供のおやつに楽しまれてきました。

現在でも道の駅や直売所でパック詰めが売られており、家庭の味として受け継がれています

かんころ餅

長崎県五島列島には「かんころ餅」があります。

こちらは薄切りにして天日干ししたさつまいも(=かんころ)ともち米を一緒に蒸して搗いた餅で、五島の冬の風物詩です。

「かんころ」とは五島の方言で干し芋のことで、その芋を餅に混ぜ込んで作るかんころ餅は、もち米の節約と保存性向上のために生まれた知恵でした。

昔はもち米が大変貴重だったため、さつまいもを混ぜることで量を増やし、みんなでたくさん食べられるよう工夫したと言われます。

出来上がったかんころ餅はそのままスライスして食べても優しい甘みがありますが、固くなったものを薄く切ってフライパンや網で軽く炙ると香ばしさが増し、また違った美味しさになります。

五島の人々にとっては冬になると台所で作るおばあちゃんの味であり、島を離れた人にとっても懐かしいふるさとの味です。

最近では五島産のさつまいも「ごと芋」を使った商品化も進み、専門店のかんころ餅はお土産としても人気があります。

こっぱ餅

こっぱ餅・しんちょき餅・いももち

熊本県天草地方の「こっぱ餅」も忘れてはなりません。

「こっぱ」とは熊本の方言で干し芋のことで、その名の通り干したさつまいも(煮切干し芋)と餅米を合わせて搗き、上白糖でほんのり甘みを付けた餅菓子です。

かつて天草では各家庭でこっぱ餅が作られており、農繁期の保存食や親類・知人への手土産として親しまれていました。

添加物を一切使わず芋と米だけで作るため日持ちはそれほどしませんが、素材の甘みが素朴で飽きのこない味わいです。

焼くとトロっと柔らかくなるので、食べる前に軽く炙ってからいただくのも美味しい食べ方です。

現在では天草の和菓子店「宝餅本舗」さんなどが伝統製法で作り続けており、ネット通販やふるさと納税の返礼品として取り寄せることもできます。

戦後は一時家庭で作る習慣が減りましたが、最近になって郷土の味を見直す動きから注目され、イベント等で振る舞われる機会もあるようです。

しんちょき餅

大分県南部の津久見市・佐伯市には「しんちょき餅」という餅菓子があります。

前述の通り蒸したさつまいもを潰して小麦粉と塩を混ぜて作る団子で、現在は中に小豆あんを入れるのが一般的です。

「しんちょき」とは地方の方言で諸説ありますが、「しんちょる(=蒸し煮する)」が訛ったとも言われます。

津久見では昔、米のご飯を節約するために昼前にこの餅を食べて腹を満たしたと伝えられ、またミカン収穫の共同作業時にもみんなで食べたそうです。

当初は皮も餡もさつまいもだけというシンプルなものでしたが、時代とともに餡は甘い小豆餡になり、皮にも白玉粉を加えて冷めても柔らかい工夫がされたりと改良されています。

現在では道の駅や直売所で地元の加工グループが製造・販売しており、「懐かしい味」として中高年層に人気があります。

さつまいもの優しい甘みと餅の食べ応えで、素朴ながら満足感のある郷土菓子です。

いももち

東北や関東にも餅系のさつまいも菓子があります。

例えば岩手・宮城に伝わる「いももち」はジャガイモ餅のことですが、和歌山県南部にも「いももち」があります。

こちらは餅米とさつまいもを一緒に蒸して搗いたもので、かつて稲作に適した平地が少なかった熊野地方では主食代わりに食べられていたそうです。

現在は餡こを入れたりおやつとして食べられることもあります。

和歌山のいももちは、江戸時代にさつまいもの苗の持ち出しが禁止されていた中、密かに苗を持ち帰って栽培を広めた人物(植松弥助)の努力で根付いたさつまいも文化の産物でもあります。

徳島県にも「いも餅」がありますが、こちらは南九州のねったぼ(練りくり)に似たさつまいも餅で、徳島特産の鳴門金時芋を使ったおやつです。

名前は同じ「いももち」でも地域によって材料(餅米か小麦粉か)や食感は少し異なりますが、さつまいもの甘さを活かして腹持ちを良くする知恵という点では共通しており、どれも農家の暮らしから生まれた郷土菓子と言えます。

揚げ菓子系の郷土菓子

最後に、油で揚げるタイプのさつまいも郷土菓子を見てみましょう。

揚げることで甘みと香ばしさが増し、おやつやおつまみにもなる菓子が各地にあります。

芋けんぴ

高知県の「芋けんぴ」は、今や全国的なお土産菓子としても有名です。

細長く切ったさつまいもをカラッと揚げて砂糖蜜を絡めたお菓子で、材料はさつまいも・砂糖・油のみというシンプルさ。

しかし一度食べると止まらないほど素朴なおいしさがあり、ポリポリとした歯ごたえと口いっぱいに広がるさつまいもの風味が魅力です。

高知では江戸時代から小麦粉を棒状に焼き固めた干菓子を「けんぴ」と呼んでいましたが、見た目が似ていることからさつまいもの揚げ菓子を「芋けんぴ」と呼ぶようになったと言われます。

昔ながらの芋けんぴはコガネセンガンなど白芋にグラニュー糖をまぶす素朴なものでしたが、現在では紅葉芋や紫芋など品種も増え、黒ごまをまぶしたものや塩味、チョコがけ、期間限定フレーバーなど各メーカーで工夫を凝らした商品が作られています。

高知県内の道の駅などでは芋けんぴの大袋が山積みされている光景も見られ、地元の人にも観光客にも愛されている様子がうかがえます。

いももち天ぷら

いももち天ぷら

鹿児島県奄美大島の「いももち天ぷら」は、行事の席に欠かせない伝統菓子です。

名前に「もち」とありますが、こちらは餅米ではなくさつまいもを主原料にした揚げ菓子です。

蒸したさつまいもを潰して団子粉(上新粉)・砂糖・塩・水を混ぜ、丸めて油で揚げると出来上がります。

外側はカリッと香ばしく、中はホクホク&もっちりとした食感で、素朴ながら満足感のある甘みです。

奄美では冠婚葬祭や祭りなどのハレの日に必ず振る舞われるほど親しまれており、家庭でも子供のおやつとしてよく作られてきました。

鹿児島本土や宮崎南部にも似たようなお菓子(ねったぼを丸めて揚げたようなもの)があり、揚げることで日持ちを良くし大人数にふるまう知恵でもあったようです。

「からいも団子」「いも天」などとも呼ばれ、素朴な郷土の味として今も大切にされています。

いもあげ(いも揚げ)

その他、さつまいも自体を揚げて作る郷土菓子もあります。

秋田県南部などでは、輪切りのさつまいもに甘めの衣をつけて揚げる「いもあげ(いも揚げ)」が親しまれています。(※北海道の名物「あげいも(じゃがいも)」とは別物です。)

ホクホクの芋にほんのり甘い衣がマッチして、祭りの露店や観光地の売店で子供から大人まで人気があります。

シンプルながら芋そのもののおいしさを再発見できる素朴なお菓子です。


揚げ菓子系はこのように食感の良さと香ばしさ、そして素材の甘みの凝縮が魅力です。

油で揚げることで保存性も高まり、農作業のお供のおやつや、お祭りの振る舞い菓子として重宝されてきました。

現代でもスナック菓子に負けない素朴なおいしさが支持されており、芋けんぴなどは進化系フレーバーの商品が若い世代にもヒットしています。

おわりに

全国のさつまいも郷土菓子

日本全国のさつまいも郷土菓子を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

これらのお菓子は、それぞれの土地の気候風土や歴史、そして人々の知恵が詰まった食文化の遺産です。

共通しているのは、身近な素材であるさつまいもの持ち味を最大限に活かし、家族の健康と満足を考えて工夫された点でしょう。

例えば、さつまいも郷土菓子には「お腹を満たすため」「保存食として活用するため」といった目的で生まれたものが多く見られます。

鬼まんじゅうやいきなり団子、しんちょき餅などには、米が不足した時代に代用品や間食としてさつまいもを活用した先人の知恵が色濃く反映されています。

一方で、干しいもやかんころ餅、こっぱ餅のように収穫した芋を長く美味しく食べる工夫から生まれたものもあります。

どれも暮らしの中で培われ、受け継がれてきた伝統の味です。

現在ではこれら郷土菓子は観光土産や地域おこしの一環としてスポットが当たることも増えました。

地元の素材にこだわった商品開発や、SNSでの発信によって若い世代にもその良さが見直されています。

さつまいも郷土菓子は決して派手ではないですが、一口頬張ればどこか懐かしくほっとする優しい味がします。

それは先人たちが家族を思いやり、知恵と工夫で作り上げてきた愛情の味でもあります。

ぜひ皆さんも旅行やお取り寄せの機会があれば、各地のさつまいも郷土菓子に触れてみてください

そこには、その土地ならではの物語と、作り手の想いが詰まっています。

さつまいもの郷土菓子が持つ魅力を味わいながら、日本の食文化の豊かさを再発見していただければ幸いです。

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