
近年、さつまいも界では「紅はるか」や「シルクスイート」といった新品種が大人気ですが、その中でもひときわ異彩を放つ品種に「紅きらら」があります。
紅きららは市場にほとんど出回らない希少なさつまいもで、皮は白っぽく中身は鮮やかなオレンジ色をした珍しい品種です。
本記事では、紅きららの基本的な特徴や美味しさの秘密をわかりやすくご説明したいと思います。
さらに人気品種の紅はるか・シルクスイート・紅あずまと比較しながら、それぞれの違いをご紹介します。
紅きららとはどんなさつまいも?

紅きららは、一般的なさつまいもとは見た目も中身も異なる個性的な品種です。
別名で「七福人参」や「こがね人参」、「人参芋」とも呼ばれており、その名前のとおり果肉が人参のように鮮やかなオレンジ色をしています。
外皮は薄いクリーム色〜淡いオレンジがかった色合いで、スーパーでよく見る紅あずま等の赤紫色の皮とは明らかに違うため、見分けは容易でしょう。
紅きららの来歴(品種の由来)ははっきり分かっていませんが、その外観や肉質は昔から鹿児島などで作られていた隼人いもという人参芋に近いと言われています。
いわゆる人参芋・かぼちゃ芋系統に分類されるさつまいもで、βカロテン(プロビタミンA)を非常に多く含むのが大きな特徴です。
紅きららの味わいと食感

紅きららは見た目だけでなく味や食感も魅力的です。
果肉にはデンプン質が多く含まれ、収穫後に貯蔵することでそのデンプンが糖に変わり甘みが増していきます。
焼き芋にして食べると、ねっとりしっとりとした舌触りで滑らかな口当たりになり、繊維質が少ないため舌にざらつきが残りません。
ホクホク系の粉質ではなく水分の多いしっとり系で、加熱後も一部にホクホク感が残る紅あずまなどとは明確に食感が異なります。
甘さもしっかり感じられ、実際に食べてみると紅あずまよりも甘いと感じたとの声もあります。
さらに、カロテン由来と思われる独特の芳香があり、紅あずまや鳴門金時とは違った風味が楽しめます。

紅きららの鮮やかなオレンジ色はβ-カロテン(プロビタミンA)によるもので、含有量が多いことが特徴です。(紅きららのβ-カロテン量は、栽培条件・分析条件で変動します。)
βカロテンには抗酸化作用があり、体内でビタミンAに変わって皮膚や粘膜の健康維持を助けます。
また、サツマイモはビタミンCが加熱で失われにくい形で含まれるため、栄養面でも美容や健康に嬉しい食材と言えるでしょう。(参考:農林水産省ホームページ『サツマイモの栄養の特徴(とくちょう)について教えてください。』)
こうした高い栄養価と優しい甘みから、紅きららは離乳食やお子様のおやつにもぴったりの品種です。
紅きららの旬と出回り時期
紅きららは秋に収穫され、貯蔵によって熟成させることで甘みが増す品種です。
収穫時期は9月下旬〜10月頃ですが、食べ頃は1か月ほど貯蔵して糖化が進む11月〜2月頃とされています。
なお、追熟(長期貯蔵)を行う場合は温度・湿度管理が重要で、サツマイモの貯蔵に適した温度は13〜14℃、湿度は90%前後とされます(9℃以下は低温障害、15℃以上は発芽や品質低下のリスク)。
このような条件が確保できる場合、春先まで貯蔵・出荷されるケースもあります。
収穫直後は若干粉質だった紅きららも、冬を越す頃にはしっとりとした肉質に変わり、甘さがぐっと増します。
流通量が少ない希少品種のため、スーパーで見かける機会は多くありませんが、直売所やネット通販、ふるさと納税の返礼品などで出会えることがあります。
見かけた際はぜひ手に取って、その旬の美味しさを味わってみてください。
紅きららの美味しい食べ方

紅きららは幅広い調理法で楽しめます。
ねっとり系で甘みが強いことから、まずはシンプルに焼き芋にするのがおすすめです。
180℃のオーブンで90分程度じっくり焼くと、内部から蜜が染み出すような濃厚な焼き芋が出来上がります(※収穫後すぐより、追熟したもののほうがより蜜感が増します)。
実際に紅きららを焼き芋にして食べてみると、「ホクホク系ではなく部分的にしっとり滑らかな食感で、甘さは十分。紅あずまより甘く感じ、カロテン由来の独特の香りも楽しめた」との報告があります。
焼いた断面はかぼちゃのような明るいオレンジ色になり、見た目にも華やかです。
また、紅きららは干し芋(乾燥芋)にも適した品種です。
水分が多く柔らかな食感なので、乾燥させても硬くなりすぎずソフトに仕上がります。
実際に有機栽培で育てられた紅きららを冬まで熟成させて干し芋に加工したところ、人参芋らしい自然な甘さでしっとり柔らかい干し芋ができたとのことです。
同じ人参芋系統の「兼六」という品種ほど糖度は高くないものの、加工のしやすさでは紅きららに軍配が上がるという評価もありました。
そのほか、色味を活かしてスイートポテトやプリンなど洋菓子の材料に使うのも良いでしょう。
βカロテンが豊富で甘みもしっかりあるため、砂糖を控えめにしてもコクのあるスイーツに仕上がります。皮ごと蒸して裏ごしすれば鮮やかなオレンジ色のペーストになり、パンや離乳食に練り込むなどアイデア次第で活躍してくれます。
紅きららは見ても食べても楽しめる魅力的なさつまいもと言えます。
「紅きらら」と他品種の比較

それでは、紅きららを代表的な他の人気品種と比べてみましょう。甘さや食感、見た目にどんな違いがあるのか、表にまとめました。
- 紅はるか:近年最も人気の高い新品種。圧倒的な甘さとねっとり食感で焼き芋に最適。
- シルクスイート:その名の通り絹のような滑らかさが特徴の新品種。上品な甘さでスイーツ向き。
- 紅あずま:昔から親しまれる定番品種。ホクホク食感で素朴な甘さがあり、万能に使いやすい。
以下の表で、紅きららと各品種の主な特徴を比較してみます。
| 品種名(読み) | 外皮の色 | 果肉の色 | 甘さの特徴(加熱後) | 食感・その他の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 紅きらら (べにきらら) | 薄い肌色(クリームがかった橙色) ※皮は白っぽくツヤ控えめ | 濃いオレンジ色 | 甘い(紅あずまより甘み強い) | しっとり滑らかで繊維少ない βカロテン豊富で香り独特 |
| 紅はるか (べにはるか) | 明るい赤紫色でツヤがある | 黄白色(加熱で黄金色) | 極めて甘い(50〜60度※) 蜜のような濃厚甘さ | ねっとり系だが後味すっきり 新品種(2010年登録) |
| シルクスイート (しるくすいーと) | 濃い赤紫色(やや短い紡錘形) | クリーム色 | 甘さ控えめ(30度前後※) 上品で優しい甘み | しっとり&なめらかで繊維少 女性に人気・2018年に品種登録 |
| 紅あずま (べにあずま) | 濃い赤紫色(標準的な外観) | 淡い黄色 | 甘みは中程度(32度前後※) 素朴で程よい甘さ | ホクホク系で粉質、繊維少 昭和からある定番品種 |
※糖度(Brix)は屈折計で測定する「抽出液(搾汁や蒸し芋をすり潰して得た上清など)」の指標で、試料の作り方(加水・希釈の有無)、測定部位、加熱による水分の飛び方(蜜の凝縮具合)によって数値が大きく変動します。通販等で「糖度50〜60」と表現されることもありますが、条件差が大きいため、本記事では数値は目安として扱い、品種間比較は味・食感などの特徴と合わせて判断してください。
上の比較表からも分かるように、紅きらら・紅はるか・シルクスイート・紅あずまはそれぞれ色合いも甘さも食感も大きく異なる品種です。
次に、紅きららと各品種との違いをもう少し詳しく見てみましょう。
「紅きらら」と「紅はるか」の違い

甘さを求めるなら紅はるか、とにかく人気ですよね。
紅はるかは2010年に品種登録された比較的新しいサツマイモで、その糖度の高さが最大の特徴です。
収穫後に十分熟成させた紅はるかを焼くと糖度が50〜60度にも達し、蜜のように濃厚でスイーツのような甘さになります。
さらに糖質の中の麦芽糖(マルトース)比率が高いため、強い甘みでありながら後味は意外とすっきり感じられる上品さもあります。
実際に焼き芋にすると口の中いっぱいに蜜のコクが広がるほどで、焼き芋ブームの立役者とも言われています。(※紅はるかに関しましては『紅はるか(べにはるか)の特徴|焼き芋好きに人気の秘密と他品種との違い』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
一方の紅きららも甘みは十分ですが、
紅はるかほど飛び抜けた甘さではありません。
紅きららは紅はるかに比べると甘さよりも風味や色を楽しむタイプと言えるでしょう。
カロテン由来のほんのりカボチャや人参を思わせる風味があり、優しい自然な甘さが持ち味です。食感面では、両者ともしっとり系ではありますが、紅はるかの方がねっとり感が強く粘質です。
紅きららは滑らかではあるものの、焼き加減によってはホクホク感が少し残る場合もあり、紅はるかほどのねっとり濃厚クリーミーさとはまた異なります。
外観の違いも明確です。
紅はるかの皮は鮮やかな赤紫色でツヤがあり、細長い紡錘形(ラグビーボール形)の芋ですが、紅きららは薄いベージュ〜淡橙色の皮で丸みのある形をしています。
切ってみると、紅はるかの果肉は加熱すると鮮やかな黄金色ですが、紅きららは生の時から濃いオレンジ色です。
したがって、調理後の見た目も紅きららはまるでかぼちゃのような橙色の仕上がりになります。
この色の違いは栄養価の違いでもあり、紅きららにはβカロテンが豊富ですが、紅はるかのβカロテン含有量は紅きららほど高くありません(一般的な黄肉さつまいもの範囲です)。
総じて、紅はるかは「蜜芋」と称されるほど甘さ重視の品種、紅きららは色や栄養価も楽しめるヘルシー志向の品種と言えるでしょう。
それぞれ良さが違いますので、甘みのインパクトを求めるなら紅はるか、自然で優しい甘さや彩りを求めるなら紅きらら、と使い分けてみてください。
「紅きらら」と「シルクスイート」の違い

シルクスイート(登録名:HE306)は、2005年の交配から選抜・育成され、2018年に品種登録された比較的新しいさつまいもです。
名前に「シルク(絹)」とある通り、その舌触りの滑らかさが最大の特徴で、女性を中心に人気が高まっています。
紅はるかなど従来の「蜜芋」系ほど糖度は高くありませんが、繊維質が少なくクリーミーな口当たりのため、上品な甘さを感じやすい品種です。
焼き芋にするとほくほく感はほぼ無く、しっとりなめらかで口どけが良いので、「絹のスイートポテト」の名に偽りなしという評価を得ています。
実際、シルクスイートの焼き芋は冷めても美味しいと評判です。(※シルクスイートに関しましては『シルクスイートの特徴とは?紅はるかとの違いや選び方・保存方法まで徹底解説』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
こうした特徴だけ見ると、紅きららとシルクスイートは似たタイプ(しっとり滑らか系)のさつまいもに思えます。
確かに両者とも焼いたときの食感はなめらかで、スイートポテトなどお菓子作りにも向く点は共通しています。
しかし、甘さと風味、そして見た目に明確な違いがあります。
シルクスイートの糖度は加熱後で約30度前後とされ、紅きらら(甘い方とはいえ糖度はせいぜい30数度程度)と大きく変わりません。
ただしシルクスイートはクセのない上品な甘さで後味もすっきりしているのに対し、紅きららは人参芋特有の風味がある分、シルクスイートにはないコクや香りを感じることができます。
言い換えれば、シルクスイートは食感重視で癖のない万人受けする味、紅きららは風味重視で個性的な味わいと言えるでしょう。
また、見た目の違いもはっきりしています。
シルクスイートの皮は紅はるかと同じく濃い赤紫色で、果肉は黄白色〜クリーム色です。
一方の紅きららは皮が白っぽく果肉がオレンジなので、両者を切り比べれば一目瞭然です。
調理後も、シルクスイートの焼き芋は中身が薄い黄色ですが、紅きららは鮮やかな橙色になります。
この橙色のおかげで、紅きららは料理に彩りを与えてくれる利点があります。
例えばシルクスイートで作ったスイートポテトはクリーム色ですが、紅きららで作ればパンプキンスイーツのようなオレンジ色になり見栄えがします。
まとめると、シルクスイートは食べ心地のなめらかさと扱いやすさが魅力の現代的なさつまいも、紅きららは色と風味で楽しませてくれる希少なさつまいもです。
甘さ自体はどちらも程よく、砂糖代わりに使えるほど強烈に甘いわけではありませんが、その分素材の味を活かした料理に向いています。
シルクスイートがお好きな方は、ぜひ紅きららも一度試してみて、その違いを楽しんでみてください。
「紅きらら」と「紅あずま」の違い

最後に、紅あずまとの比較です。
紅あずま(紅東とも書く)は昭和59年(1984年)に命名登録された品種で、関東を中心に長らく主力として親しまれてきた定番のさつまいもです。
外皮は深い赤紫色、果肉は淡い黄色で、形は紡錘形~やや太めの円筒形をしています。
紅あずま最大の特徴はホクホクとした食感で、加熱すると粉っぽくなる典型的な和風さつまいもです。(貯蔵によりしっとり感や甘みが増すこともあります。)
繊維質が少なく舌触りは比較的なめらかですが、紅はるかやシルクスイートのような粘質さはなく、口の中でホロホロと崩れるような食感があります。
甘さも上品で素朴な甘みと表現されることが多く、焼き芋にしても砂糖を焦がしたような蜜はあまり出ません。
貯蔵性や春先の流通量は産地・条件によって差があり、旬を過ぎると出回りが減りやすいとも言われます。
程よい甘さゆえに天ぷらや大学芋などにも向いており、オールマイティに使えるのが紅あずまの強みです。(※紅あずまに関しましては『「紅あずま」の特徴と魅力|ホクホク食感が自慢の定番さつまいも』のページで詳しくご説明していますので、ご参照ください。)
対する紅きららは前述の通りしっとり系で甘みも強い品種です。紅あずまのホクホクした食感とは真逆と言っていいほど質感が異なります。
紅きららを焼き芋にすると、紅あずまでは得られないねっとり感と滑らかさがあり、同じさつまいもでもここまで違うのかと驚くでしょう。
甘さも紅あずまより紅きららの方が明確に強く感じられます。
実際、紅あずまの焼き芋の糖度はせいぜい30度台前半(32度前後)ですが、紅きららはそれを上回る糖度と独特の風味を持っています。
ただし、紅あずまにはホクホク系ならではの素朴で飽きのこない甘さがありますので、どちらが美味しいかは好みによります。
ねっとり濃厚な紅きららの甘さも魅力的ですが、「やっぱり焼き芋はほくほく派」という方には紅あずまのほうが口に合うかもしれません。
また、調理用途にも違いが出ます。
紅あずまは水分が少なく崩れやすいので、焼き芋やふかし芋以外にもスイートポテトや芋きんとん、大学芋など幅広い料理に使えます。
一方紅きららは水分が多く柔らかいため、天ぷらなど高温の揚げ物にするとホクホク系ほどホクホク感が出ません。
その代わり、グラッセやポタージュなどしっとりさを活かす料理には適していますし、ペースト状にしてしまえばお菓子作りにも向きます。
色の鮮やかさも紅きららの武器なので、見た目を華やかにしたい料理では紅きららに軍配が上がります。

総合すると、紅あずまは昔ながらのオーソドックスなさつまいも、紅きららは新しい個性派のさつまいもです。
紅あずまが好きな方に紅きららは少し変わり種に映るかもしれませんが、逆に紅あずまにはない濃厚さや色彩が紅きららにはあります。
それぞれの良さを理解し、料理や気分によって使い分けると良いでしょう。
「昔ながらのホクホク甘い焼き芋が好き」という方には紅あずまが、「しっとりねっとり濃厚な焼き芋を食べたい」という方には紅きららが向いています。
ぜひ両方試して、お気に入りの味を見つけてみてください。
まとめ

紅きららは、その鮮やかなオレンジ色と高い栄養価、しっとり滑らかな食感が魅力の希少なさつまいもです。
他の人気品種である紅はるか・シルクスイート・紅あずまと比べても、甘さや風味、食感において紅きららならではの個性が光ります。
とりわけβカロテンを豊富に含む点は紅きららの大きな強みで、見た目の鮮やかさだけでなく健康面でのメリットも期待できます。
紅きららは市場流通量こそ多くありませんが、「人参芋」の仲間らしい自然な甘さとしっとり感で、一度食べれば記憶に残る美味しさです。
焼き芋にすれば蜜芋にも負けない甘みがあり、干し芋にしても綺麗な色と柔らかな食感で楽しませてくれます。
紅はるかのような圧倒的な甘さ、紅あずまのようなほくほく感、シルクスイートのような滑らかさ。
各品種それぞれ魅力がありますが、紅きららは「甘さ・食感・色彩・栄養」のバランスに優れたユニークな存在と言えるでしょう。
もし運よく店頭やお取り寄せで紅きららを見かけたら、ぜひ一度味わってみてください。
他のさつまいもとの違いにきっと驚き、「紅きららファン」になってしまうかもしれません。
この記事が紅きららへの理解を深め、皆さんのさつまいも選びの参考になれば幸いです。
秋冬のさつまいもシーズンには、紅きららをはじめ様々な品種を食べ比べて、それぞれの個性豊かな美味しさを存分に楽しんでください。
皆さんの食卓に、紅きららの明るい彩りと優しい甘みが加わりますように。
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