
はじめに

焼き芋やさつまいもが大好きな皆さんは、秋になるのを待って甘い焼き芋を楽しんでいませんか?
近年は「べにはるか」や「安納芋」といったねっとり甘い系統のさつまいもがブームですが、これらは収穫してすぐには甘さが十分でないため、通常は収穫後しばらく貯蔵してから出荷されます。
そのため、早くても出回るのは9月下旬以降になり、焼き方にも工夫が必要でした。
そんな中、収穫直後の夏でも甘い焼き芋が楽しめると注目されているのが新品種「あまはづき」です。
今回は、この「あまはづき」の特徴をわかりやすくご説明したいと思います。
あまはづきとは?焼き芋ブームを早める新しいさつまいも

「あまはづき」は、国の研究機関である農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)が育成したサツマイモ品種で、2021年4月20日に品種登録出願、2021年8月5日に出願公表されました。
研究成果としては2021年10月20日にプレスリリースで紹介され、2024年6月3日に品種登録(登録番号30266)されています。
名前の由来は、通常のさつまいもの収穫最盛期よりもかなり早い8月(葉月)に収穫できることにちなみ、「甘くておいしい」という特徴を込めて「あまはづき」と命名されたものです。
その名の通り、収穫直後の早い時期から甘みが強くねっとりとした焼き芋が作れることが最大の特徴で、焼き芋の旬を一足早く楽しめる品種として期待されています。
開発の背景には、近年のねっとり系焼き芋ブームがあります。
従来の高糖度品種(べにはるかや安納芋など)は品質が良く人気ですが、掘りたてでは甘みが弱く粉っぽい食感であるため、糖化のために収穫後一定期間の低温貯蔵が必要でした。
その結果、秋の終わり頃にならないと十分に甘い焼き芋を提供できず、生産者・消費者ともに「もっと早くおいしい焼き芋を味わいたい」という声が高まっていたのです。
「あまはづき」はこの課題を解決すべく育成された品種で、8月頃から甘い焼き芋が楽しめることから“焼き芋シーズンを早める救世主”として注目されています。
あまはづきの特徴
では、あまはづきには具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
主要なポイントをまとめます。
【特徴1】収穫時期が早い

早掘り栽培(通常より早く植え付け・収穫する栽培)によって8月頃からの収穫が可能とされています(※収穫時期は産地・植付時期・気象条件で前後します)。
さつまいもの流通量が少ない夏場(8月)から出荷できるため、秋を待たずに新芋の季節を迎えられます。
(参考:農研機構ホームページ『8月の収穫直後から甘いサツマイモ新品種「あまはづき」』)
【特徴2】収穫直後から甘い

最大の特長はここです。
貯蔵しなくても収穫直後から糖度が非常に高いので、掘ってすぐでも強い甘みを感じられます。
通常、さつまいものデンプンが糖に変わるには時間が必要ですが、あまはづきは「低温糊化性でん粉」という特殊なデンプンを持ち、加熱調理中により低い温度から糖化が進むため、普通に焼くだけでも甘く仕上がるのです。(※貯蔵熟成に関しましては『さつまいもの甘さの秘密|「熟成」「糊化」「糖化」とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
実際、蒸しいもにした場合の糖度は標準栽培で平均Brix(ブリックス)33.3%にも達し、同条件の「べにはるか」(27.8%)や従来品種「紅あずま」(19.1%)より高いというデータもあります。
なお、早掘り栽培(8月収穫を想定)でも平均Brix(ブリックス)「あまはづき」25.8%、「べにはるか」21.9%、「紅あずま」20.2%となっています。(参考:一般財団法人いも類振興会ホームページ『あまはづき(青果用)8月収穫直後からねっとり甘い焼き芋がつくれる新品種』)
(※さつまいもの糖度に関しましては『さつまいもの糖度(Brix値)とは?甘さの指標「糖度」の秘密』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)
【特徴3】ねっとりとした食感

肉質は非常になめらかで粘質(ねっとり)です。
他品種で感じがちな粉っぽさはなく、しっとり濃厚な舌触りを楽しめます。
「べにはるか」も貯蔵後はねっとり系になりますが、あまはづきは収穫直後から粘質なのがポイントです。
【特徴4】見た目(皮・肉の色)
皮の色は赤紫色系、果肉は明るい濃黄色(黄金色)をしています。
従来のべにはるかよりもさらに色味が濃く鮮やかで、美しい見た目も特徴です。
焼き上がった焼き芋の断面は黄金色に輝き、まるでスイートポテトのようだとも評されています。
【特徴5】育てやすさ

生産者にとってもメリットの多い品種です。
収量は通常栽培でべにはるかよりやや多収です。
「あまはづき」はサツマイモネコブセンチュウ抵抗性が強く、つる割病・黒斑病にもやや強いとされる複合抵抗性品種です。
ただし、基腐病に対する抵抗性は不明とされているため、他品種と同様に防除対策の徹底が推奨されています。
病害に強く収穫量も多いため作りやすく、産地では作期分散の新たな選択肢として期待されています。
貯蔵性は資料上「難」とされ、長期貯蔵には向きません。
貯蔵する場合も、低温や乾燥を避け、収穫・調整時に芋を傷つけないよう丁寧に扱うことが推奨されています。
こうした特徴により、あまはづきは「掘ってすぐ食べておいしい焼き芋品種」として際立っています。
掘り上げ後まもない段階でも甘みやねっとり感が得られた一方、十分に長期貯蔵した「べにはるか」と比べると甘みは控えめ、という感想も見られます(※個人の試食結果であり、条件により差があります)。
しかし果肉の黄色が非常に濃くて綺麗なためスイーツの素材にも向くなど、新たな魅力も評価されています。
総じて、収穫直後から高い甘み・ねっとり感・鮮やかな見た目を兼ね備えたあまはづきは、焼き芋ファンなら一度は味わってみたい注目の新品種と言えるでしょう。
人気品種との比較
では、あまはづきと従来の人気品種では具体的に何が異なるのでしょうか?
ここでは代表的な「べにはるか」や「安納芋」といくつかの項目で比較してみます。

| 特徴項目 | あまはづき | べにはるか | 安納芋 |
|---|---|---|---|
| 収穫・出荷時期 | 8月上旬~収穫可能。 夏(8月)から新芋を出荷 | 収穫直後は甘み弱いため9月下旬以降に出荷(収穫後1ヶ月以上低温熟成) | 主に秋(10月)収穫。 熟成して冬にかけ出荷されることが多い |
| 甘さ(糖度) | 収穫直後から非常に甘い。 蒸しいもの糖度は30%以上と突出。 熟成不要で甘蜜のような味わい。 | 貯蔵後に非常に甘くなる人気品種。 収穫直後は甘み控えめで、熟成を経て糖度が大幅向上。 | 甘みが極めて強いブランド芋(「蜜芋」)。 収穫直後から甘いが、熟成でさらに蜜のような甘さが引き出される。 |
| 食感 | 粘質(ねっとり系)。しっとり滑らかで口溶けが良い。粉質感はなし。 | ホクホク→ねっとり。 収穫直後は粉質でホクホクだが、熟成によりねっとりとした食感に変化。 | 粘質。 加熱するととろけるように柔らかい食感で、濃厚な舌触り。 |
| 果肉の色 | 濃い黄色(黄金色)。焼くと非常に鮮やか。 | やや薄い黄色~橙色。 焼くと淡い黄金色。 | 橙黄色~濃黄色。 品種(安納紅・安納こがね等)により異なるが加熱後は鮮やかな黄色。 |
| 保存性 | 低い(長期保存不可。掘りたての美味しさを早めに) | 中程度(常温でも比較的保存可能。熟成期間の保管にも耐える) | 中程度(高温多湿に弱く長期保存はやや難。 必要に応じ低温貯蔵) |
※収穫・出荷時期は、産地・作型・貯蔵(熟成)の有無で前後します。ここでは一般的な目安として記載しています。
上記のように、あまはづき最大の違いは「収穫直後でも甘い」点にあります。
べにはるかは現在もっとも普及している高糖度品種で、貯蔵後の糖度とねっとり食感が魅力ですが、甘い焼き芋を味わえるのは毎年秋以降でした。
一方、安納芋(安納紅・安納こがね等の総称)は鹿児島県・種子島発祥の在来系品種で、加熱すると蜜が滲むような強い甘さから「蜜芋」ブームを生み出した存在です。
ただ安納芋も旬は秋〜冬で、主に収穫後じっくり熟成させてから出荷されます。
このように従来は「秋~冬=ねっとり焼き芋の季節」でしたが、あまはづきの登場によって夏場(初秋)でも同様の甘い焼き芋を楽しめるようになる点が画期的です。

しかも色味の鮮やかさも際立つため、焼き芋としてだけでなくスイーツ材料としても新たな可能性を秘めています。
従来品種それぞれの良さを生かしつつ、あまはづきが焼き芋の楽しみ方を広げる新星として活躍していくことが期待されています。
あまはづきを楽しむには(入手方法・食べ方)

「ぜひ一度あまはづきを食べてみたい!」と思った方もいるでしょう。
あまはづきはまだ登場して間もない新品種ですが、少しずつ市場に出回り始めています。
農研機構によると苗の本格的な供給は2022年春から開始され、まずは関東地方(茨城県など)を中心に栽培が広がりました。
2022年夏以降、農家や直売所レベルで試験的な出荷が行われ、2024年には千葉県のJAちばみどり管内で8月下旬に初出荷が達成されています。(参考:JAちばみどりホームページ『新顔サツマイモ「あまはづき」初出荷へ』)
初出荷時点では5kg箱×39ケース程度と少量でしたが、形も太りも良好な出来だったと報告されています。
JA担当者も「今後は食味の良い『あまはづき』を当JAのブランド品目として取り組んでいきます」と述べており、産地ブランド化に向けた動きも始まっています。
とはいえ、現時点(2025年12月)では流通量はまだ限られているため、スーパーで気軽に買える状況には至っていません。
あまはづきの入手方法

入手するには、産地直送の通販や農産物直売所を利用するのがおすすめです。
特に茨城県や千葉県など早期栽培に取り組む生産地から、収穫シーズンの8~9月頃にネット販売や直売所で新物のあまはづきが出品されることがあります。
また、収穫時期に合わせて芋掘り体験イベントを開催する農家もあるかもしれません。
そうしたイベントでは掘りたてをその場で焼いて味わえる場合もあり、あまはづき本来の「掘ってすぐ甘い」醍醐味を楽しむ絶好の機会となるでしょう。
あまはづきの食べ方

調理法については、基本的に他のさつまいもと同じです。
焼き芋にする場合はアルミホイルに包んでじっくり加熱、あるいはオーブントースターやオーブンレンジの焼きいもモードを使うと手軽です。
あまはづきは前述の通りデンプンの糖化が起きやすい品種なので、特別な長時間熟成や低温調理をしなくても甘くねっとり仕上がりやすいのが利点です。
焼き上がりの目安は、串がスッと通るようになるまでじっくり加熱すること。
ホクホク系の芋と違い、水分が多く焦げにくいですが、糖度が高いため表面が少し茶色くカラメル状になるくらいが香ばしく美味しいです。
焼き芋以外でも、蒸してスイートポテトやペーストにしてスイーツ作りに使うのもおすすめです。
鮮やかな黄金色と上品な甘さを生かして、モンブランや大学芋、スープなど様々な料理・菓子で活躍するでしょう。
まとめ

新品種「あまはづき」は、焼き芋ファン待望の「収穫直後から甘いさつまいも」です。
秋まで待たなくても夏の終わり頃からねっとり甘い焼き芋が楽しめるという革新的な特徴を持ち、今後ますます注目度が高まると考えられます。
実際に初年度から高い糖度と食味が確認されており、生産面でも作りやすいことから全国への普及も期待されています。
まだ市場で見かける機会は限られますが、焼き芋好き・さつまいも好きの方はぜひ情報をチェックして、この新しい味覚をいち早く体験してみてください。
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